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逆噴射小説大賞2019投稿作品まとめ

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2019年10月8日から10月31日まで募集が行われた「逆噴射小説大賞2019」に投稿した作品群を纏めたものです。 Photo by Paweł Czerwiński on U… もっと読む
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逆噴射小説大賞2019自作振り返り

逆噴射小説大賞2019自作振り返り

 今年もまた参加しました。

 去年は、やけにテンション高く色々10作程ブッ込んでましたけど、今年は800字に増えた分、5作に絞る、というレギュレーションです。それもあって、色々考えながら落ち着いて文章を練々してました。

 今年は文体は書き易いものに統一して、一人称が2つ、三人称が3つとなりました。ただ、ジャンルは比較的バラけさせてるような気がします。正直、パルプかどうか、とは深く考えずに作って

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ゲート・ブレイカー 第一話「破門」

ゲート・ブレイカー 第一話「破門」

「ハチコ、戻ったぞ」

門関連犯罪対策特別捜査隊と書かれた扉を開き、小柄な女性が入ってくる。黒髪のポニーテール。勝ち気な瞳。

「ナナミ先輩、平気なんスか。さっきの現場で派手にフッ飛ばされてましたケド」

長身の男が立ち上がり、心配そうな視線と声を寄越しながらバタバタと駆け寄ってくる。不潔な訳ではないが、ボサボサとまとまりのない栗毛。眠そうに下がったタレ目。対照的な二人組である。

「アタシは軽い

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蒼穹と雲海の間で

蒼穹と雲海の間で

『この雲の下にはね、きっと楽園が広がっているんだよ』

 都市搭載型超弩級飛行艦《NOA36》艦長アレハンドロ・グラーデが、八つほど年の離れた姉の言葉を思い出す時。それは常に難しい決断を迫られた時である。

 その姉は、彼が15の年に実際に雲の下へと挑み、かつての、そして、それ以降の挑戦者達と同じく行方知れずとなった。五十路に差し掛かったアレハンドロは、職務の重責に圧し潰されそうな時、その楽観的な

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城は傾けど姫は在り

城は傾けど姫は在り

 城田 姫路。

 俺は、この自分の名前があまり好きではない。

 母が俺のことを今でも「ヒメちゃん」と呼ぶから、というのが一つ。

 それでも、俺が白皙の中性的な美男子であれば、まあ我慢できた、かもしれない。しかし、俺の容姿はといえば、野太い眉の下には腫れぼったい目、丸みを帯びた鼻に口唇も分厚い。体型に至っては、子供の時分から立派なあんこ型であり、あまりの落差に良くからかわれたものだ。

 そし

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アイ・レコメンドー新人研修、承ります!ー

アイ・レコメンドー新人研修、承ります!ー

「ちょっと、貴女、どういうことかしら?昨日はワタクシが教官と過ごすはずでしたわよね?そも当番制を言い出したのも貴女ではなくって!?」

「そうだぞぅ、抜け駆けだー」

「抜け駆け、よくない、よ?」

「うぅ、だってーーー」

かしましい。格納庫内にオレが好んでプレイする恋愛ゲームのキャラにそっくりの声音が響く。ヤツらの言う教官とはオレの事に他ならず。声音通りの、美少女達からの”奪い合い”の対象とな

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ゴブリン無宿

ゴブリン無宿

「オウ、ジイさんよう、金を出しゃそれで良いんだ。俺達は、何も楽しくってアンタみてえなジジイを苛めている訳じゃないんだぜ」

薄汚い革製の胸当てを着けた髭男が、半ば錆びた幅広の剣を手に凄む。野盗であろう男の後ろには、これもまた似た風体の男達が、二人と三人。総勢六人がニヤニヤ笑いを口元に浮かべながら、貧相な風体の枯れた老爺を取り囲んでいた。

「こんな辺鄙な田舎村には、旦那様方を満足させられるような蓄

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