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2,『アイオライトから』石と交わる肉

アイオライトの深みをもった水のなかにきんいろのひかりがさしこんでいた。
めをさました、ような気がする。
重みをもったものに全身が浸されていて、重たくて、かなしくて、いらいらする。
起き上がらなくてはならない、気がした。けれど、なにか重たいものに引っ張られてしまう。ような気がする。
重たいものの正体はなにかはわからない、けれど、パホイホイの溶岩のようにこころと身体にへばりついてくるのはたしかだ。
パホイホイのようなそれを必死にふりきる。身体をよじり、かなしみといらいらから逃れ、なんとかそれをふりきった。

アイオライトはどこまでもつづいているようにみえる。したに広がるほたるいしの海岸にも似たようなマフィックなカラーの砂はしずかで、わたしにもにているような気がした。(すがたもみたことがないのにどうして?でもわかる気がする)
砂の上になにかがころがっている。それがなにかはわからないけれど、とても親近感がわく。砂のように静かで、重たくて、かなしい。わたしにぴったりな気がした。でも、それに触れることはゆるされないような気もした。

アイオライトの中をかきわけてすすむ。ころがっているなにかはあちこちにあって、かなしいきもちになる。(どうして?どうして?)きんいろのひかりはこうこうとさしこんでいるはずで、とてもあたたかいはずなのに、それをみるとよけいにかなしくなる。ふたたび、わたしの目から月長石がこぼれおちた。こぼれおちたそれは泡になる。泡になったあとはアイオライトときんいろに交わってとけていった。
ぽろぽろと月長石をこぼす。どうしてこぼれるの?わからなくていらいらしてもっとこぼれる。こぼれる理由がわからない。でも、かなしいということだけは胸に(そんなものほんとうにあるの?)つうっと穴があくように理解できた。これをどうにかできるのはきんいろのひかりだけかもしれないということもなんとなくわかった、ような気がする。
わたしはきんいろのひかりの方に向かった。見れば見るほどうつくしい水晶のようでもあり、金の結晶のようでもあった。でも、わたしとはなにかがちがった。すがたもみたことがないくせにどうして分かるのかはわからないけれど。わたしはここではないどこかへ行きたかった。わたしではないものをわたしにしたかった。

アイオライトがアクアマリンに近づいてゆく。きんいろのひかりがぎんいろになり、月長石がかたちをたもちはじめている。んぱっ。流れだす月長石はいつの間にかとまっていた。わたしは、アクアマリンの海の上にいた。

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