野菜ぎらい
「うちの子は、野菜ぎらいでこまるよ。」
以前、我が家へ一杯飲りにきた友人がぼやいた。
よく聞く話だ。
そして、その話は大抵こうつづく。
「それに比べて、オマエの子どもはどうして」云々。
この、野菜ぎらいといわれた子ども。
実は、「野菜ぎらいになってしまったわけではない」ことが少なくない。
むしろ正常な反応である場合が多いと云ったら、驚くだろうか。
今、普通に手に入る野菜は、化学肥料だらけの土で、欧米では禁止された劇毒農薬を散布し、無理やり形だけ整えた「F1種」といわれる、命を生まない(種を植えても発芽しない)ものがほとんど。
僕たちは、何も知らされず相当エグい野菜を買わされているわけだ。
だから、それを「まずい」と言って食べないのは、むしろ人間の正常な反応なのだ。
ミミズが行き交い、モグラが顔をだし、雑草が山ほど生える生命に満ちた肥沃な土に育った野菜は、いやというほどの命を受け取り、僕たちの前に顔をだす。そういう野菜は当然昆虫たちも大好物だから、葉っぱは穴だらけだ。「はらぺこあおむし」がたくさん暮らす本物の野菜は、味が濃く香りもたっていて、そのままでうまい。
今の僕たちは、相当意識をしないと「生命を生む野菜」である在来種野菜、自然農法野菜を手に入れられない。このままでは、本当の野菜を食べられなくなる可能性も大きい。種子法の改悪に続き、種苗法改正案が国会に提出されるなど、知らないところで「F1種」を産んだ多国籍企業による「種」の寡占化がすすんでいるからだ。
自給率がたったの37%のくせに、世界有数のフードロス大国、日本。
コロナ禍が浮き彫りにした国際的な食糧危機の可能性を前にして、僕たちはあまりにも無知、無頓着、無関心だ。
後日、親子で我が家を訪れた「野菜ぎらい」のその子は、我が子と散々遊んだのち、野菜ばかりの我が家の夕飯をペロリとたいらげ、
「おいしい!」
とにっこり笑った。
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