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とあるバイヤーの恋憧れ

 一人、自宅で仕事をしているとどんどん気分が落ち込んでいく。俺はバイヤーの仕事をしているのだけど、今の時代は外に出歩くのも危険で、人に会うこともなく、ただパソコンで世界中の品物を探してはそれを取り寄せて、依頼を受けた通販サイトのラインナップに商品を並べていくだけの日々だ。SNS上では友人や取引先と言葉のやり取りは行っているけれど、やはりそれだけでは満たされない。やはり人間は目と目で表情を見ながら心

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新しい反抗期

 それは登校している時だった。私はちょっと私生活でストレスを感じていて、気分重たく通学路を歩いていたんだけど、その途中にある鈴村商店の軒下にスマホを見ながら立っているみかの姿を発見した。みかは根っからのギャルで、明るい茶髪と黒い肌が遠目からでもよくわかる。みかは視線を感じたのか、ハッと顔をあげ、私と目が合うと人懐っこい笑みを浮かべて手を振ってきた。

「さやか。おはよう」

「おはよう。どうしたの

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最後の海岸線

 運転するオープンカーのハンドルを切ると、そこは見渡す限りに広がる大海原が見える。走る国道の上は雲一つない晴天で、海の上は荒波で白波がたっていた。海上の風はとても強いようで、屋根を開け放った運転席にもその風が強く吹き付けてくる。頬をなでる風が心地よく、オープンカーのだいご味を感じながら海を横目にアクセルを踏む。
 うねる白波の海には数多くのサーファーが躍るように波の上に立っていた。地元民が集まるこ

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防波堤の景色

防波堤の景色

 夕陽が空を赤く染めながら、彼方の水平線の向こうへと向かっていく。もう少しで太陽が水平線と重なり、ダイヤモンドのように光り輝く瞬間が訪れるだろう。
 私はそれを見るために、スカートが汚れるのも気にしないで防波堤のコンクリートにお尻をつけて眺めていた。手持ち無沙汰に自販機で買ったサイダーを飲みながら。サイダーを口にするとシュワッとした甘い発泡がはじけて気分を晴らしてくれた。でも、どんよりとした気分は

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