見出し画像

会計が動かす世界の歴史―なぜ文字より先に簿記が生まれたのか―

会計という視点から見た世界史の本です。読んだからといって簿記や会計に詳しくなるわけではないです。けど、いろんなお金にまつわることの経緯を噛み砕いて説明してくれているのでとても読み易い本です。

ぼく、いろんな人の歴史の本を読むのが好きなんですね。本書の中でも触れられていることですが、昔、偉い人が、

「歴史の大半は推測であり、残りは偏見だ」自分の属する国、民族、宗教、階級に肩入れするようなことはしないと考えている歴史家でさえ、本当はひいき目に見ていることが、資料の選択や形容詞のニュアンスからうかがえる。「歴史家はいつも歴史を単純にとらえすぎる。多数の人物や出来事をとりあげると話が複雑になるので気乗りせず、理解もできそうにない。そこで、持て余さない程度の数の事実と人物をさっさと選びだしてしまう」

と言っていて、つまりは、その人によって、歴史の解釈や見方が異なるということですね。映像な文章などの資料が残っている現代でも、ぼくたちがメディアを通して知れるのは物事の一側面でしかないわけですね。

つまりは、いろんな歴史家の書く歴史の本を読むことで、違った視点で歴史を眺めることによって、多面的に理解できるというか、自分なりの解釈がうまれてきたりだとか、「あ、なるほど、そんな視点があったのか」という知的興奮があったりするわけです。

前置きが長くなりましたが、本書、ちょっと友達に話したくなるようなトリビア満載で非常に読み易くて良いです。

ちょうどアメリカの政権交代のタイミングでフランス革命の章を読んでいたからか、なかなか思うところがありました。フランス革命前夜、三部会というものが開かれていたんですが、これは新たな税金を徴収しようとする場合の、聖職者、貴族、その他民衆の3つの身分の人たちの代表者が集まる会議のことなんですね。第一身分と第二身分の聖職者と貴族は納税を免れてたんですね。

…結果は散々でした。第三身分は人口の9割を占めるにもかかわらず、議席数にはそれがまったく反映されていなかったのです。そんな状況で議決をだせるはずがありません。第三身分の人々は、自分たちが経済的にも政治的にもどれほど不公平な立場に置かれているのかは、はっきりと自覚しました。

これが、絵画にもなってるテニスコートの誓いへつながり、バスティーユ監獄の襲撃…と革命へ突き進んでいくわけですが、アメリカ議会占拠事件と重なってみえたんですよね。

バイデンが選挙で勝ったけれど、正当な手続きを経て大統領となったけれど、選挙ってお金いっぱいかかるわけで、当然お金持ちの方が有利なわけで、それって既得権維持するのに優位に動くわけで、それは果たして持たざる者から見てもフェアなシステムなのか?と。

世間はトランプが煽ったから、トランプが諸悪の根源、で終わらせようとしているけれど、本質は別なところにあるのでは?と思わないでもないんですね。

再び話は逸れましたが、メインはタイトル通り会計というかお金、信用、取引記録に着目しているので、昔の人はどうやって取引の真正を担保したんだとか、正確な記録を残そうとしたんだという試行錯誤を知れるのはとても良いです。

以下、引用めもめも

貨幣とは鋳造された自由である ―ドストエフスキー―
お金の本質は、譲渡可能な信用です
技術革新のせいで短期的に失業者が生まれても、長期的には新しい産業に吸収されて、失業は解消されます。しかし、ここに問題がひとつあります。技術革新のせいで失業した人が新たな産業で働くためには、新しい知識や技能を身につけなければなりません。当然、学習には時間がかかります
技術革新は、人々が利益を得られる水準でしか進みません
資本の調達コストが高い地域では資本の利用を増やすことができません。また、たとえ安価な燃料と資本市場が存在しても、労働者の賃金水準が低ければ技術革新は進みません。労働を機械に置き換えるインセンティブが生じないからです。

有給消化が必須になったり、育休制度が整備されるのはもちろん良いことなんですが、一方でそれがトリガーとなって長らく日本では人件費が安かったからイノベーション起きなかったのに、働き方改革のおかげで進むのかもなと思ったりします。

まだ明確に起こっていないことの良し悪しを評価はできませんが、「日本人を雇う人件費とその他コスト高いから、雇用条件や労働環境に文句言わない外国人雇うか、安いし」とはならないように願うばかりです。(農業分野や工場ではそうなってますが)

この記事が参加している募集

読書感想文

最近の学び

サポートはいつでもだれでも大歓迎です! もっと勉強して、得た知識をどんどんシェアしたいと思います。