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今月読んだ本/2020.10

このシリーズも6か月目で、半年継続で定番化してきた。誰が興味あるねんと思っていたりするんだけれど、少なくない人たちにはブックガイドとして、ある人は別に連絡を取り合うわけではないけれど勉強仲間として意識してくれているらしい。

だからといって、ぼくの選書が意識高いものになる、なんてことはないのだけど。

あと、ちょっと長めに語りたかったり紹介したかったりする本もあるので、それは別で単体でnoteに書こうかとも思っている。1つの記事に3,000字を超えてくると読む方もしんどいだろうし…。


・ゲーム理論入門の入門

新進気鋭の経済学者として最近話題の著者の本。ゲーム理論とは囚人のジレンマに代表されるアレ。

AとBの2人の監獄に捕まってて、尋問で2人とも黙ってれば懲役2年、Aが喋ってBが黙秘だと、Aは無罪放免でBは懲役10年。同様にA黙秘でB自供ならAは10年でBは無罪放免。ABどっちも自供すれば2人そろって懲役3年。

さあ、AとBはそれぞれ喋った方が得なのか喋らない方が得なのか、という意思決定とかいろんなプレイヤーが相互に影響し合うような状況を数学モデルで解明しようとする学問。

AもBも黙っていれば1年の実刑だけで済むんだけど、もし裏切りが成功して片方が喋れば裏切った者は無罪放免で、信じてたのに裏切られた方は10年も実刑をくらってしまう。どうする?信用できるか?と互いに疑心暗鬼になって、ジレンマに陥るというやつ。

結局どうするのが正解なのかは本書を読んで確認してみてほしい。

入門の入門というだけあって、ゲーム理論のアレコレが非常に分かりやすくコンパクトにまとまっていると思う。良書。

実は、フォン・ノイマンの囚人のジレンマとかいくつかゲーム理論の本を学生時代に読んでいて、細かい内容は覚えていないもののそのエッセンスは覚えていたので、ぼくにとっては復習に過ぎなくてちょっと物足りない感があったんだけど、これは本書が悪いわけではない。

とはいえ、最近はこういう研究分野が、日本でもビジネスに応用されてますよという例がメディアでよく見るようになったので本書の内容は知っておいて損はないし、良い頭の体操にもなると思う。


・職業としての小説家

ご存知、村上春樹のエッセイ。小説家という職業にどうやってなったのか、小説家とはどんなものなのか、どうやって作品を書くのかというのを、ヘンに飾ったり取り繕ったりせずに語ってくれている。身も蓋もないというか、ヘンに夢をみせないところに好感が持てる。

アイザック・ディネーセンは「私は希望もなく、絶望もなく、毎日ちょっとずつ書きます」と言っています。それと同じように、僕は毎日10枚の原稿を書きます。とても淡々と。「希望もなく、絶望もなく」というのは実に言い得て妙です。
小説を書くというのは― とくに長い小説を書いている場合には― 実際にずいぶん孤独な作業です。ときどき深い井戸の底に1人で座っているような気持ちになります。誰も助けてはくれませんし、誰も「今日はよくやったね」と肩を叩いて褒めてもくれません。その結果として生み出された作品が誰かに褒められるということは(もちろんうまくいけばですが)ありますが、それを書いている作業そのものについて、人はとくに評価してくれません。それは作家が1人で黙って背負わなくてはならない荷物です。

ぼくは残念ながら村上春樹の小説はまだ読んだことがないのだけどー 翻訳とエッセイはよく読むー、それは村上春樹の世界を知りたいというよりも、売れている人、すごいと言われている人は何を考えているのか、物事をどうとらえているのか、どう表現しているのかに興味があるから。その残り香に与りたいという邪な思いがあるから。

その観点から読んでるので、すごく参考になるしとても面白い。

そして、有名だったり天才だと世間で言われている人も、ぼくら普通の人と同じようなことを味わっているんだ、感じているんだとある種の安心も与えてくれる。

個人的には下記のインタビュー集がベスト。オールタイムベスト。沁みる。

ノルウェイの森は外国人の友達も何人か読んでて、それくらい読まないとなーと思いながら5年くらい経ってしまってる。


・世界一楽しい決算書の読み方

会社で営業職なんかをやってると決算書を読む機会というのが日常的にある。期末の自社や取引先の決算説明や新たに取引を始める会社の与信を見たりするのに。そうでなくても、個人で投資をするときや、この会社はいったいどこで儲けてるんだ??と思ったりしたときに決算書類をみる。

財務3表。貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/S)の3つだ。これらを読み解けるのがビジネスマンとしての必須項目になっている。それはもうEメールでも電話でも「お世話になっております。○○社の▲です」という挨拶の決まり文句くらいできて当たり前のこと。

けど悲しいかな、多くの人は読めない。ぼくも含めて。ここの数字がデカいのヤバいくらいの理解だった。それは半分冗談だとしてもちゃんと読み方を勉強したわけではないので自分の読み方が正しいのか大いに疑念があったり、決算書を見るポイントっていうのがよくわかっていなかったので復習がてら読んだんだけど、非常に良い。わかりやすい。財務3表の概略を理解できると思う。

もうちょっと深く理解したいなら、

累計60万部突破の財務3表一体理解法が抜群にわかりやすい。デキる若手ビジネスマンに大人気!けど、これは実務というか総務や営業職の経験がないとイメージしにくいんじゃないかとも思う(ぼく1回挫折したことあるし…)。

その点、上記の会計クイズは文字少なくてクイズ形式で図が多くて眠たくならなくて決算書を読むエッセンスを理解するのにはもってこい。良い。非常に良い。


・真面目にマリファナの話をしよう

最初に言っておくと、ぼくはマリファナを吸いたいわけでも、日本も合法化すればよいのにと思っているわけではない。かと言って、マリファナ=悪いモノと決めつけているわけでもない。

ただ、単純にマリファナを取り巻く人々やこの各国が合法化へ向かう現象に、もっというとマリファナに関わる人間の欲望に興味がある。

本書によるとマリファナが世界的に禁止になったのはアメリカのせいということになる。マリファナが悪いわけではない。本書では医療目的での必要性を主に説いている。

医療目的というのが今までいまいち理解できないでいたのだけど、本書には「医療へのアクセスが難しくなりつつあるアメリカでは ”希望の薬” としての側面だった。それが医療関係のトークで、マリファナが ”同情の問題” として語られる所以だった。末期がん患者やエイズ発症者の痛み止め、MSやてんかん、緑内障の治療薬として…」とあって、なるほどと。

あと、アメリカでオピオイド中毒問題が深刻化してるらしく、その中毒から脱するためにマリファナを使用するケースが注目されているらしい。

オピオイドとはケシの実からとれるもので、これはアヘン(ヘロイン)の麻薬や鎮痛・麻酔作用のあるモルヒネと同じアルカロイドの一種だ。

これは交通事故や手術後の痛め止めを処方されたあと、痛み止めの量が増え、痛め止め漬けからヘロインに移行してしまう人が多いのだそうだ。で、マリファナを使うことで徐々に依存度を下げていく、というわけだ。

マリファナがより深刻なドラッグにつながる「ゲイトウェイ・ドラッグ」ではなく、危険ドラッグ依存から脱却するためのリハビリの一助になるという。

かといって、マリファナの中に含まれるTHCはハイになる向精神性があるし、場合によっては脳の神経回路を破壊して記憶を消失させたりするとも言われている。良く効く薬は扱いが難しいのだ。

日本でも医療用途での解禁は時間の問題だろう。

ただ、嗜好目的はどうだろうなと思う。アメリカでは酒と同じような扱い・認識の気がする。合法州でも公共の場での使用はやめてくれ、喫ったら車の運転はするなよ州外への持ち出しは禁止、などルールがある。もちろん年齢制限も。

酒やタバコが今の時代に発明されていたら合法になるかは議論がある、と言われるように酒と同じようなものだから禁止にしなくて良いだろうというのは別の話だ。

カリブで ” クオリティの良い ”マリファナを喫ったぼくの友達が ―いま思うとTHCが多く含まれていたんだろうと思う― 「おい、俺は今正気に見えるか?時間の流れがすごくゆっくりに見えるんだ」と言って、数秒前の記憶も怪しいと短期記憶にも障害がでているようだったし、同行したもう1人も床や壁をノックして「良い木だ」とにこやかに語りかける奇行にでているのも見ている。(※セントビンセントでは嗜好目的は禁止なのでどこの国の人かも含めて伏せておきます)

危険性のあるものをわざわざ合法にして増やす合理的な理由が、今の日本にあるかと言われると疑問がでる。諸外国と異なり麻薬汚染が深刻な問題になっているわけではないからだ。

ただなんとなく、たばこの健康被害がアレになっていく中で、それに代わるものとしてマリファナというのは日本でも十分ありえる未来だなと思ったりする。THCがゼロならハイにはならないだろうし。THC込みでもアルコールに代わる嗜好品になるのかもなと。

マリファナの中のTHCではなくCBDはダウナー系でハイにならず、落ち着かせる効果があり、寝る前に摂取すればよく寝ることができる等の効果があって、これは日本でも合法でいくらか商品があるんだけど、これがどれだけ日本で受入れられるかが、マリファナ理解もそうだし、嗜好用解禁に向けての必要なステップなんじゃないかと思ったりする。

じゃあ、それを踏まえてぼくの見解は?CBDオイルとか試してみる?

答えはNo。
実はマリファナの成分であるTHCやCBDは分離してしまうと効果が減ってしまうというのが通説になっている。いっしょに摂取することでマリファナの効能を得られるというわけだ。CBD単体の摂取は、今のところコラーゲンの摂取と似たようなものだという印象がある。



・売国機関

戦争が終わった国の戦後と国を守るための諜報機関のマンガ。ぼくはインテリジェンスが好きなので最高。

強国に挟まれた小国が資源少ない中でなんとか独立を維持しようとするんだけど、経済力の弱い国の常で腐敗や民衆のデモや革命運動があって、それら国内問題を抑えないといけないし、隣国の強国に付け入る隙を出さないようにしないしという

いま4巻まで出てるんだけど、最新巻でようやく本領発揮というか単純に正解がでなくなってさらにおもしろくなってきた。1対1だったら単純に作戦の成功失敗が評価できていたのに3国三つ巴のような状況になると、1国に対するオペレーションとしては失敗でも、オペレーションを展開していない国に対して期せずしてプレッシャー与えるようなこともできてしまう。いろんな要素が相互に影響し合うインテリジェンスの腹の探り合いと状況が目まぐるしく変わる展開は非常に良い。

言葉が過激で脳汁がドクドクでるヤヴァイやつですね。

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