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土日の夜中まで働いていたってのはウソじゃなかったんだ

アルマジロハントに失敗してから数日後、ファン(台湾人)が「そういえば、A氏の話はウソじゃなかったんだ」と言い始めた。

A氏の話とはなんのことだろう。実はハンターの里で待っていたとかそういう話だったのかと思ったけれどそうではないらしい。

あの時、やっとのことでぼくたちの電話にでたA氏は「昨日遅くまで仕事だった(≒昼夜逆転してる)。夜中までドライバーの仕事をしていたんだ。だから今起きた」と言った。

ぼくたちはそれを酒を飲み過ぎてすっぽかした言い訳をしていると判断した。二日酔いのような声だったからだ。

その言い訳が実はほんとのことだったらしいと言う。ウソじゃなかったんだと。

どういうことなのか詳しい説明を求めると、A氏は昨日今日とシックリーブ(年次の有給とは別に休みがもらえる制度)を取ってる。その理由が、最近週末の夜中に血液を運ぶ仕事をしてるからだと。

そういえば、ぼくらが最初に里を訪れた日もA氏は「俺は夜もドライバーの仕事があるから参加はできないが…」と言っていた。

ぼくはそれをパーティー終わりの誰かを家まで送らないといけないとかそういう話だと思って聴き流していた。

血液を運んでいる。夜中に。

病院から空港まで運んでいるのだそうだ。

コロナだ。間違いなく。

この国に、検査ができる設備はない。

コロナの血液検査は隣国トリニダード・トバゴのラボで行われているらしい。

つまり、夜な夜なすべてのフライトが終わった後、セントビンセントからトリニダード・トバゴに血液サンプルを送り検査しているということになる。

それはつまり、それほどコロナの疑いのある患者が病院にやってきているということでもある。

現状、陽性患者が1人、感染の疑いのある人が1人、が公式発表だ。

しかし、この国では公式発表があるより前に、非公式に友人知人間でニュースが出回ったりする。

殺人事件などもニュースではモザイクのある写真でも、ワッツアップで流れてくるものならモザイクなしの写真だったりする。

だから、急にこの国でも急に手洗いやハンドサニタイザーを使う人が増えたのも、握手をやめて肘通しを合わせたりする挨拶をする人がでてきたのか。

そこまでリテラシー高い人たちじゃないはずなのに、どうしてそういう情報感度が高く、素直に手洗いをするようになったのか、場合によってはマスクをしていたりと不思議に思っていたのだけど、コロナ疑いの人が病院に次々と来てるという情報が出回っているのかもしれない。

コロナの感染者は1人だけれど、だから公式発表もニュースもそれ以上は何も言えないけれど、コロナ疑いの人たちがたくさんいるという情報が水面下で出回っているのであれば、自分も感染するかもしれないと、他人事から自分事になる。手洗いやハンドサニタイザーを使うようになる。

そういう構造なんじゃないかと、自分の中で腹落ちした。

検査にどれだけの時間がかかるのかわからないけれど、いまのところ感染者数は増えていないから、いくらかは検査が終わっていると考えれば陰性ばかりということになるんだろう。

推測でしかないけれど。

そして今日、3月上旬に寄港したクルーズ船の観光客の中に1人コロナ感染者がいたことが発覚した。当人はカナダ帰国後に発症したよだけど、体調を崩し始めたとき、セントビンセントにも上陸していたという。

つまり市街にウイルスをまき散らした可能性があるということだ。

いよいよセントビンセントでもアウトブレイクの可能性がでてきた。

先週はちょくちょく街中でマスク姿の人を見かけたのに、今週はゼロになっているのも気になる。早くも予防を辞める人がでてきてしまったんじゃないかと。

セントビンセントへのコロナの脅威はこれからが本番っぽい雰囲気になってきた。

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