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B/Sっぽいものはでてきたけれど、記帳したりしなかったりするってどういうこと?#DAY31

さて、今日は約束の日だ。B/S(貸借対照表)を見るのだ。財務状況をチェックするのだ。

…正確に言うと、約束はしていない。水曜日に会おうねとスタンリーは言っただけだ。女性が来るからたぶん見れると言ったのだ。女性が必要な時に記帳していると言った。

朝、念のためにちょっと遅めにオフィスに行って中を覗くと、スタンリーとダニーとアズランがいた。前に訪問したときと同じ面々だ。そして窓際に、紫のトロピカルなワンピースを着てアフロヘア-を頭の後ろでまとめた30歳前後のきれいな女性がいた。絶対にあの人だ。あの人が会計の人に違いない。

やった!なんだ言えば時間かかってもちゃんとしてくれるんじゃん。セントルシアで散々カリブの人の腰は重いよー日本基準で考えるとやる気がまったく見られないと言われていたから、かなり気にしていたけど、セントビンセントはそうでもないらしい。

なんて思いながら、スタンリーに「おーい!来たよーYukiだよー」とアピールし、みんなにも挨拶し、その女性を紹介してもらった。女性はファビーナと言った。柔らかい、聞き取り易い訛りの少ない英語を話す人だ。そういう風にぼくに合わせてくれているらしい。

あなたが会計なんだね、とぼくが言うとファビーナはちょっと困った顔をした。

ふふ、ううん違うわ。ただの秘書よ

え?

どうやらぼくはスタンリーとの会話から早とちりをしてしまっていたらしい。俺のアルゴリズムはあの会話からほぼ間違いなく女性は会計だったんだが?と思いながら「その女性が会計なのか?」と確認の質問をしなかったことを悔いた。「女性が必要な時に記帳している」と言えば、その人が会計係なんだなと思うから、多少野暮でもわざわざ「その人が会計係なんだね?」なんて聞く発想がなかった。くそぉ、失敗した。やたら会いたがったのはぼくをファビーナに紹介したかっただけかー

なんてことを考えていると、スタンリーはぼそぼそ何かをファビーナにいってカバンをごそごそし、大量のカギのひとつをファビーナに渡した。

おや?この流れは…

そしてファビーナは事務室の片隅のロッカーをそのカギで開け、古びたノートブックを何冊かを机にひろげた。

B/Sだ。B/Sに違いない。でも、ノートブックかー、データじゃなかったかー。っていうか事務所にあるんなら、前に見せてと言ったときも出すことができたのでは?スタンリー?どういうこと?なんて思ったのだけど、気にしないことにした。

それで、出してくれたものを見ると、モップビジネスというタイトルがついてる。中身は入ってきた分と出て行った分のお金を簡単に書いているだけだった。

ぼくはそんなに会計に詳しいわけではないけれど、これはB/Sというよりもキャッシュフロー計算書だなと思った。ひとつひとつ管理しているのかもしれない。

竹細工の修理ビジネスのノートブックはあるの?

ーあれは個人で請け負っているものだから、チェックはしてないのよ

高齢の視覚障害者に食料を配ってるよね?そのお金はどこからくるの?

ーあれは政府からの寄付ね、たまに他の寄付金も入ったりするけど。たしか四半期ごとに2000(東カリブ)ドルくらいくれるの

これはたぶん補助金のことだろう。ジョセフはUSドルで年間4,000ドルといったからそれを東カリブドルに換算すると、10,600ECドルほど。だから、たぶん政府からの補助金は四半期ごとに2,500ECドルということなんだろうと思う。

資産状況を知りたいんだけど、ファビーナは知ってる?

ー あー、それはミスタードルギシュに聞かないとわからないと思う。彼が管理してるから。ジョセフに言って、紹介してもらえばよいと思う。わたしは毎週金曜日に請求書とかを渡しに彼のオフィスに行ってるけど親しいわけじゃないから

でたよ、新キャラ。そしてようやく会計係だと思われる人にたどり着いた。長かった。ドラクエでもやってる気分だった。そして、おいジョセフ…。会計係はファビーナじゃないの知ってたはずじゃん。なぜ初日に教えてくれなかった。ぼくは3日ほど無駄にしたぞ。せめて「それはおいおいね」とでも言ってくれればよかったのに。まあ、終わってしまったものは仕方ない。いろいろそれぞれに誤解があるのかもしれないし。

それに、ジョセフの中ではぼくのメインは広報PRで当面はウェブサイトをつくることだからそれに集中させたかったのかもしれない。

ぼくとしては、ドメイン代とサーバー代が負担できるかどうかを知るために資産状況を把握して、それらを払って独自ドメインでいくかどうか議論をしたかったんだけど。ウェブサイト上で募金を募るボタンやマンスリーサポーターのサブスクのシステムを作るつもりでいるから、早晩それらの代金は回収できるはずだと言いたかったけれど、今思うと、ドメインにそこまでこだわる必要はないのかもしれない。しっかりお金が集まってから独自ドメインに切り替えても良いじゃないか、なんの問題があるんだ?と思ってるのかもしれない。たしかにその通りだ。だって思ったよりお金なさそうに見えるから。

そんなことを思いながら、ぼくが読めない筆記体で書かれたノートブックを眺めていた。

待てよ、じゃあこのノートブックはなんなんだと思ったけれど、深くは聞かないことにした。疲れてしまったのだ。現状を把握するのに。今日は、キャッシュフロー計算書っぽいものがでてきた。会計係の存在が確認できた、それで十分じゃないか。

食料配給分のキャッシュフロー計算書をペラペラ眺めてると、ちょくちょく抜けてるのがある。聞けば、書いたり書かなかったりしてるのよと言う。

なるほどね、大きな問題ではない。毎月の出費があるものだし、数字は大きく変動しないだろうから他の月と均して推定すればよいのだから。

いや、書いたり書かなかったりするのか…。モップはちゃんと書いてくれてるんだろうな…

まじかーと思う気持ちと、まあこんなもんだろうなという気持ちが交じり合う中、もうひとつ写真はあるか聞いてみた。ウェブサイトを作る上でいくつか欲しかったのだ。

画像はなかった。

いちばん新しいので10年前のものがいくつか束になったのがでてきた。

解像度が低かったり、色褪せてしまっていたりしたけれど仕方ない。もともとそんなものは存在しないと思っていたのだ。

キャッシュフロー計算書が2つと写真、上出来じゃないか。





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