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【起業戦略】第10講 先行サービスの重要性を知る事例
前回は、新規事業を考える上で非常に効率的な、3つのステップを紹介した。
https://note.com/todomadogiwa/n/nab1847bf0a4c
今回は、まさにそれを体現したような面白い事例を見つけたので紹介したい。米国のPEファンドKKRが4,300万ドル(50億円超)をあるベンチャー企業に投資したという事例。
詳細を見ていこう。
ステップ1 先行サービスの発見
投資先のベンチャーは、ピザ屋専門のオンラインオーダーサービス、Sliceだ。
想定している利用者は、全米に12,000店舗ある独立系のピザ屋。ビッグ4と呼ばれる大手ピザチェーン以外のピザ屋だ。彼らはビッグ4のような、オンラインオーダーシステムを持っていない。
そこで、Sliceが登場!
普通に考えると
「Uber Eatsでよくない?!」
だよね。先行するUber Eatsは、すでにジャイアントだ。真正面から戦ったら勝てるわけがない。
先行するサービス(Uber Eats)が存在している。そして、それにお金を払っている企業(ピザ屋)がある。
状況は不利に見える。
じゃあ、なんでそんな成功している先行サービスがあるところに突っ込んでいくのか。
これまでこの一連の記事を読んでくれてきた人は分かってるよね。
むしろ、先行サービスがあるところにこそ、突っ込んでいくべきなんだ。だって、そこに予算があり、マーケットがあるんだから。
マーケット(具体的な予算)があること以上に重要なことなんて、実はほとんどない。先行サービスがあるからこそ、スタートアップ、ベンチャーが戦えるともいえるんだ。
ステップ2 先行サービスのMUSTを発見
フードデリバリーの主なMUSTは、こんな感じになるはず。
デリバリーまでにかかる時間が表示できる
オンラインでオーダーできる
オンラインで決済できる
オーダーがデリバリーされる
ユーザー登録が出来る
配達人を管理できる
さらに細かくいえば、店舗側の受注管理画面みたいなのも必要だろうし、オーダー番号を振る機能も必要だろう。サポートセンターも必要だ。
一方で、オーダー傾向の分析ツールやキャンペーンクーポンなんかは、絶対に必要とはいえないかもしれない。
いずれにしても、絶対に必要な機能、要件、つまりMUSTを確認することで、このマーケットで戦うために開発しなければならない機能が明らかになってくるんだ。
ステップ3 先行サービス利用のペイン、WANTの発見
ピザ屋にとって、Uber Eatsを利用するペイン(痛み)ってなんだろう。
それは、カスタマイズされた注文が受けられないってことだ。
Uber Eatsは、定番メニューを扱うことは出来ても、カスタマイズにははなはだ不向きなUI/UX(操作画面、使い勝手)をしている。
ピザ屋では、ごく当たり前にある好きなピザを組み合わせるハーフアンドハーフも出来ないし、トッピングを自由に選ぶことも出来ない。
だから、ピザ屋にとって、Uber Eatsを通した注文は店の真価を発揮しづらい注文システムといえる。
MUSTではないけれど、ペインの解消は強いWANTだと言える。
だから、Sliceはこのペインを解消するサービスを開発したんだ。
このサービスが企画として優れているのが、対象をピザ屋に限定したところ。
あえて先行サービスよりマーケットを限定することで、先行サービスに対する共通のペインを浮かび上がらせたんだ。
別の見方をすると、マーケットを限定するからこそ小さなリソースで戦えるともいえる。
ピザチェーンBig4のように、注文のカスタマイズができる自前のオンラインオーダーシステムを持たないピザ屋は、きっとこのサービスを聞いた瞬間「乗り換えたい!」となるだろう。
これは、ピザオーダーシステムを民主化した事例ともいえる。画期的だよね。
でも、もしUber Eatsがない時代だったら、どうだろう。「他社と共通で、デリバリーも一般人のオンラインオーダーサービス」を検討することは、たとえカスタマイズされた注文が出来る機能がついていたとしてもウケなかったはず。
これが、先行するサービスがあるところに突っ込んでいくメリットだ。
ちなみに、Uber EatsはUber Eatsで、先行するサービスに突っ込んでいってる。だから、ここで言っているのは、いきなり2段飛ばし(デリバリーサービスの構築、ピザ屋用カスタマイズオーダーサービスの構築)は無理だってことだね。
Big4以外のピザ屋は全米に12,000店舗あるそうだ。そして、そのほとんどは同じMUSTとWANTを持っている。市場性は十分にある。
まさに、絵に描いたような「3ステップ」だ。先行するサービスがあるから、イノベーティブじゃないなんてことはないよね。
目のつけ所、マーケットの切り出しかた、サービスの設計。イノベーションの塊だよ。
さらに12,000店舗で注文されるピザの特徴や、注文の時間帯などのデータが全て集められるんだから、そこから広がるビジネスの可能性はとてつもなくでかい。
サービスも、ピザ屋以外にも展開できるかもしれない。
限られたリソースで、先行サービスのペインを解消するマーケットを限定したサービスを展開する。
こういうのこそ、イノベーションの王道、スタートアップの王道だ。
でも、のんびりやっていたら、Uber Eatsも対抗してくるはず。
そこで、KKRの50億円が生きてくる。
スピードが買えるからだ。
というわけで、今回は、3ステップに一致したサービスのご紹介でした。
次回からは、一旦、2Bから離れて、 個人消費者を対象としたビジネスの企画について、お話していきます。法人向けの方にも参考になる点がたくさんあるはずなので、是非、お楽しみにしてください。
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