【起業戦略】第14講 差別化
前回は、競合について話をした。
https://note.com/todomadogiwa/n/nd29c2668c63f
競合という話になると必ず「差別化」「競争/競合優位性」「参入障壁」「モート(moat, 堀)」が話題にのぼる。
というより、必ず訊かれるよね。だから、今回は競合について話そうと思う。
まず、そもそも競合ってなんだ、ってことなんだけど、競合とは、顧客の同じMUSTを満たす存在だ。
だからこそ、競合とは同じ顧客の同じ財布を奪い合うことになる。
逆に、自社に似た企業や製品、サービスがあっても、そもそも自社と満たせるMust条件が違えば、競合とはいえない。
となると差別化という話になるんだけど、単に他と違うだけでは差別化にはならないんだ。
たとえば、「頭を動かすたびに音が出る枕」があったとしよう。
他の枕とは違うところがあるだろうけど、この違いは誰のWANTも満たさない。
だから、これは差別化にはなってないということなんだ。
差別化する上で重要なのは、MUSTは満たした上で、競合が満たしていない何かのWANTを満たしているということ。もちろん、そのWANTをもつ潜在顧客が多ければ多いほど、あるいはそのWANTに対するニーズが強ければ強いほど販売は有利にはなる。
と、ここまでが基本的な話なんだけど、でも、実は差別化なんてそんなに気にしなくてもいいんだよ。
そもそも数年に渡って、競合が満たしていないWANTを満たし続けるなんて不可能でしょ。特にそれがインパクトのある機能やサービスメニューだったら、競合も当たり前のようにそれを真似してくる。
特許を取っていても、特許の対象になるのは具体的な実現手段だから、少しでも異なる実現手段でその機能が作られていたら、特許侵害で訴えることは難しい。訴えたところで、ほとんどの場合、望むような結果を得られる可能性はかなり低いのが現実だ。
なにより、自分達だって競合の機能やサービスを参考に、新しい機能やサービスを作ることもあるよね。
要するに、製品やサービス自体を差別すれば、上手くいくというほどビジネスは甘くないということなんだ。
よい差別化機能やサービスメニューは、営業時のフック程度にしかならないよ。
「差別化出来てるの?」と訊いてくるVCやCVC、新規事業部(の所属する企業)自体、別に競合他社に対して圧倒的有利を築くような差別化なんて出来てないでしょ。違いはあるだろうけど。
むしろ製品上の差別化要因がなにもなかったとしても、MUST条件さえしっかり満たせていれば、マーケティングやブランディング、立地や営業なんかで十分勝負になる。製品には差別化できるところがなくても、アフターサービスみたいなところで差別化できるかもしれない。
要するに、ビジネスは、提供している顧客体験が9割で、差別化なんて1割にはるかに満たない話なんだよ。
「どうやって差別化するの?」
「うちがやるからには、他では出来ないものじゃないと意味ないじゃないか」
「どうやって差別化を維持するの?」
みたいな質問やコメントは、新規事業を企画すると山のように降ってくる。
でもね、「差別化できないものには投資しない」みたいな発想は、ほんとうに無意味だと思いますよ。
むしろ差別化出来てる製品なんてある?製品ごと、サービスこと違いはみんなあるんだけどね。
身近なところで考えてみて欲しい。スマホ、通信キャリア、自動車、テニスラケット、靴、服、ラグジュアリーブランド、キッチン用品、コンビニ、、、ある一社が差別化によって市場独占出来てるものなんて何一つないでしょ。
逆に消費者の観点で見たら、差別化出来てるものしか購入しないなんてこともないよね。
差別化だなんだと四の五の言ってる暇があったら、1日も早くモノを作って、売りはじめる。その中で得たフィードバックをもとに、より顧客満足度を上げられる施策をとっていく。
これしかないのですよ。やっぱり。
さて、この2回の話題は、競合、差別化と来たので、次回は「大企業が参入してきたらどうする」ついてお話します。
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