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エネルギー価格の引き下げ寄与が急縮小~2024年2月の消費者物価

本日(22日)、2024年2月の消費者物価が公表されました。消費者物価の前年同月比上昇率は1月の2.2%から2月は2.8%と0.6ポイントも拡大しましたが、日本経済新聞夕刊も報じている通り、政府の電気・ガス代の抑制策が影響しており、インフレ率が実勢として高まったとはいえないようです。


エネルギー価格のマイナス寄与が1.0ポイント縮小

 総合指数の前年同月比上昇率を寄与度分解した下図をご覧ください。2024年1月から2月にかけて灰色の棒グラフで示したエネルギーの寄与度が1.0ポイント縮小していることが確認できます。前述したように総合指数の前年同月比上昇率は0.6ポイントしか上昇していませんので、その他の品目は上昇率が鈍化していることがわかります。実際、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数の前年同月比上昇率は1月の3.5%から2月の3.2%へと縮小しています。昨年には上昇率が4.3%まで高まった月があったことを踏まえると、エネルギーを除けば徐々にインフレ率は低下しています。
 エネルギーの前年同月比上昇率の変化の原因は、日経夕刊にもある通り、政府による電気・ガス代の抑制策が1年経ったことです。前年同月も今月も抑制策があったため、前年同月比の上昇率が急縮小したように見えるわけです。総務省統計局の資料を見ると、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による押し下げ効果(寄与度)は1月の0.48%に対して2月は0.49%とほぼ変わりません。

サービスの上昇率に変化は無かったが…

 エネルギーは財に分類されますので、1月から2月にかけて財の上昇率が高まっています。財の寄与度は1月の1.13%から2月は1.77%となりました。その一方で変化が無かったのがサービスの上昇率です。内訳をみても、公共サービスは前月と同じ0.0%、一般サービスも前月と同じ2.9%でした。

2024年2月の消費者物価(カッコ内は2024年1月)
総合   2.8%(2.2%)
財    3.3%(2.1%)
サービス 2.2%(2.2%)

 ただ、一般サービスの前年同月比上昇率をより細かく見ると、それまでけん引役となっていた外食の上昇率が1月の4.0%から2月は3.5%へ縮小し、総合指数への寄与度も0.02ポイント縮小しています。代わりに押し上げ役になっているのが宿泊料です。宿泊料の上昇率は1月にいったん縮小しました。先月のnoteにも書いたように、政府の観光振興策「全国旅行支援」の割引額が縮小したため、前年同月の2023年1月から宿泊料上昇が始まっていたためです。見方を変えれば、2023年12月まで観光振興策が「宿泊料」の伸びをかさ上げしていました。その1月に比べて2月の宿泊料の上昇率が高まっているわけで、今後どこまで上昇率が高まっていくか注目したいと思います。
 一方、特殊要因(詳しくは先月のnoteを参照ください)で1月から押し上げ要因に加わった外国パック旅行費は2月も引き続き押し上げ役になっています。この押し上げは年内は続き、来年1月には剥落します。その間に、宿泊料以外のサービス価格の押し上げ幅が高まっていくのか注目していきたいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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