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外国パック旅行費がかく乱要因に~2024年1月の消費者物価

本日(27日)、2024年1月の消費者物価が公表されました。日経電子版は消費者物価(生鮮食品を除く総合)の上昇率が3ヵ月連続で縮小したことを報じています。本稿では、いつものように総合指数と財、サービスに分けてみていきます。


財の物価上昇率縮小が大きく寄与

 2024年1月の消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.2%。2023年12月の2.6%から0.4ポイント縮小しました。財の寄与度は、2023年12月の1.51%から1.13%へ0.37ポイント縮小しており、財の物価上昇率が鈍化したことが今月の物価上昇率縮小の主因と言えそうです。
 消費者物価(総合)の上昇率は1年前の2023年1月には4.3%で、財の寄与度は3.74ポイントでした。1年間で2.61ポイントも縮小しており、財が物価上昇をけん引する時期は終わろうとしているように思えます。2023年1月には消費者物価(総合)に対してプラス1.06%の寄与度であった「電気・都市ガス・水道」が、2024年1月にはマイナス1.17%の寄与になっており、この間の財の物価上昇率の鈍化がエネルギー価格中心であったことが確認できます。

2024年1月の消費者物価(カッコ内は2023年12月)
総合   2.2%(2.6%)
財    2.1%(2.8%)
サービス 2.2%(2.3%)

サービス価格の動きは複雑

 サービスの物価上昇率は前月の2.3%から今月は2.2%とわずかな低下にとどまっていますが、中身を見ると複雑です。
 まず、サービスの内訳をみると、前月はマイナス0.3%であった公共サービスの上昇率が今月は0.0%になりました。一方で、一般サービスの上昇率が前月の3.1%から今月は2.9%へ縮小しています。2ヵ月連続の縮小です。
 ただし、中身をみると特殊要因が伸び率の縮小と拡大に寄与しています。
 まず、先月まで一般サービスの価格上昇のけん引役であった「宿泊料」の伸びが縮小しました。ただし、これは日経の記事にもあるように、政府の観光振興策「全国旅行支援」の割引額が縮小したため、前年同月の2023年1月から宿泊料上昇が始まっていたことによります。見方を変えれば、2023年12月まで観光振興策が「宿泊料」の伸びをかさ上げしていたわけです。
 一方、伸び率の拡大に寄与したのが「外国パック旅行費」です。このところ前年同月比上昇率0%が続いていたのが、2024年1月は62.9%の上昇となったのです。これは、第一生命経済研究所経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミストの新家義貴さんのレポートにあるよつに、「新型コロナの影響で外国旅行がほぼ消滅するなか外国パック旅行の価格取集が困難になったことで、2021 年1月以降の外国パック旅行は前年比ゼロ%で横置きとする取り扱いとなっていたが、今回の 24 年1月の全国CPIより価格の反映が再開されることになった」ためです(新家さんのレポートは、いつも勉強になります)。
 下の図に支援したように、外国パック旅行費は2024年1月の一般サービス物価上昇率を0.4%押し上げている。消費者物価(総合)の上昇率への寄与度はプラス0.15%だ。

来月以降には電気・ガス代の負担軽減策がかく乱要因に

 このように2023年12月から2024年1月にかけての消費者物価(総合)上昇率の変化には、様々な特殊要因が含まれています。来月(2月)にかけての動きを注視、と言いたいところですが、来月にもかく乱要因が待っています。2024年1月の消費者物価(総合)上昇率を0.48%押し下げている電気・ガス代の負担軽減策が1年経過するため、消費者物価がいったん上昇することが見込まれるためです。私のnoteでも引き続き丁寧にウオッチしていきたいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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