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季節調整値で見ると経常黒字は直近のピークに近づく~2024年1月の国際収支

本日(3/8)、2024年1月の国際収支統計が発表されました。日経は、資源高が一服して貿易収支赤字が縮小したこと、旅行収支が過去最大の黒字となったことなどに注目しています。いつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら中身を確認していきたいと思います。


第1次所得収支の黒字拡大が寄与

 1月の経常黒字は季節調整値でみると2.7兆円。直近のピーク(2023年7月:2.8兆円)に近づきました。2023年12月(1.8兆円)からの増加に最も寄与したのは第一次所得収支(12月:2.8兆円→1月:3.6兆円)。貿易収支の赤字が縮小した(12月:▲0.4兆円→1月:▲215億円)ことも貢献しています。サービス収支は0.3兆円の赤字で横ばいでした。
 一方、原数値の前年同月差をみると2.5兆円のプラス。2023年10月(前年同月差2.7兆円)以来の増加になりました。2023年12月からの変化を見ると、第一次所得収支の前年同月差がプラスに転じた(12月:▲0.4兆円→1月:0.7兆円)ほか、サービス収支も前年同月差がプラスに転じ(12月:▲0.1兆円→1月:0.2兆円)、貿易収支は前年同月差のプラスが拡大しました(12月:1.4兆円→1月:1.7兆円)。

直接投資、証券投資とも受取が前年同月より増加

 第1次所得収支の前年同月差のプラス転化に貢献したのは直接投資収益(再投資収益を除く)と証券投資収益。直接投資収益(再投資収益を除く)は12月の前年同月差が▲0.6兆円だったのが、1月は0.3兆円のプラスになりました。配当金・配分済支店収益の受取が前年同月より増えたことが主因です。証券投資収益は、債券利子の受取が増えていました。

なお、再投資収益は毎年11月の国際収支統計公表時に、企業の決算データをもとに実績値を反映させることになっています(その際、年データを12等分して各月に割り振ります)。
このため、現時点では2022年4月以降は同じ値となっており、2023年1月以降は前年同月差ゼロですが、これはまだ実績値がわからないためで、再投資収益が変化していないことを意味するわけではないことに注意が必要です。言い方を変えれば、直近の国際収支の変化を見るうえで、再投資収益の変化に注目することは意味がない(変化がわからないので(汗))ことになりますね。

サービス収支は知的財産権収支が押し上げ

 サービス収支の前年同月差のプラス転化の主因は、知的財産権収支です。12月は▲0.04兆円だったのが1月は0.12兆円のプラスとなりました。前年同月と比べると受取の増加と支払の減少が、ともに収支の増加につながりました。日経記事に書かれているように、旅行収支の前年同月差のプラスも拡大(12月:0.13兆円→1月:0.2兆円)しましたが、その他サービス収支(知的財産権等使用料を除く)の前年同月差のマイナス幅が縮小(12月:▲0.21兆円→1月:▲0.12兆円)したことも貢献しています。
 その他サービス収支(知的財産権等使用料を除く)の前年同月差のマイナス幅縮小に寄与したのは、委託加工サービス、建設など。近年、サービス赤字の拡大の主因とされる「その他業務サービス」は前年同月差のマイナス幅を拡大(赤字が拡大)しました。

#日経COMEMO #NIKKEI

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