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所定内給与は下がってないの?~共通事業所ベースをお忘れで?

 本日、2020年5月の「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の速報値が公表されました。日経夕刊は1面で、所定外給与が25%も減ったことを報じています。緊急事態宣言発令の影響などで残業時間が減り、それが所定外給与の減少につながったためで、想定内の動きともいえます。

 それでは、所定内給与は下がっていないのでしょうか?

 記事には書かれていませんが、厚生労働省の公表資料によれば、所定内給与は前年同月に比べて0.2%増加とのこと。給与全体(現金給与総額)は、所定外給与の減少を主因に、前年同月に比べて2.1%減少したわけです。残業が減ったのが緊急事態宣言などの影響だとすれば、これから正常化?するなかでマイナス幅は縮小することが期待できるかもしれませんので、所定内給与が減っていないのは嬉しいニュースともいえます。

 でも、本当でしょうか?すっかり忘れ去られていますが、毎月勤労統計調査では「共通事業所ベース」という実績値も存在します。2019年初に世の中を騒がせたのいわゆる統計不正問題において、野党の皆さんが「こっちこそ賃金の実勢だ」と主張していたものです。前年同月にも調査された事業所だけのサンプルで算出された雇用、賃金、労働時間の変化がとらえられます。

 しかし、この共通事業所ベースのデータは、2019年春過ぎになると話題にされなくなります。私も下記のnoteで書かせていただきましたが、共通事業所ベースの賃金上昇率が、調査対象全体の賃金上昇率を上回るようになったためではないかと思われます。

 実は、下のグラフで示したように、この共通事業所ベースの賃金上昇率が足元で調査全体の値を下回りつつあります。とりわけ、共通事業所ベースの所定内給与は2020年4月から前年同月に比べて減少に転じています。

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 共通事業所ベースの実績値はサンプル数が限られているため、ブレが大きいという批判もあります。しかし、所定内給与の動きを見ると、2019年までは安定的に緩やかに伸びていたのが、コロナ禍の影響が深刻化し始めた2020年3月から伸びが鈍化、減少に転じており、経済動向に整合的な気もいたします。所定外だけでなく、所定内を含めた賃金全体に下押し圧力が強まり始めているのではないでしょうか?先行きが心配です。

#COMEMO #NIKKEI

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