季節調整値でみると貿易収支の赤字は拡大~2023年11月の国際収支
本日(1/12)、11月の国際収支統計が発表されました。日経は、資源高が一服して貿易収支赤字が縮小したと報じていますが、季節調整値でみると貿易収支赤字はむしろ拡大しています。サービス収支も再び赤字になりました。いつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら中身を確認してていきたいと思います。
サービス収支も再び赤字に
11月の経常黒字は季節調整値でみると1.9兆円。直近のピークに並んだ10月(2.6兆円)から0.7兆円減りました。貿易収支は赤字幅を拡大(10月:▲0.3兆円→11月:▲0.6兆円)、10月は黒字になったサービス収支も赤字になりました(10月:0.6兆円→11月:▲0.2兆円)。第一次所得収支は黒字幅を若干拡大(10月:2.6兆円→11月:2.9兆円)したものの、経常収支は黒字幅を縮小(10月:2.6兆円→11月:1.9兆円)させました。
一方、原数値の前年同月差をみると0.2兆円のプラス。2023年4月以降の前年同期差プラスは続けているものの、10月は2.7兆円もあったのが一気にプラス幅を大幅に縮小させました。貿易収支、サービス収支のプラス幅が縮小したほか、第一次所得収支は前年同月差がマイナスになりました。
特殊要因が剥落し、サービス収支の前年同月差のプラス幅縮小
10月には最近見ないレベルのプラス幅となったサービス収支の前年同月差は、11月はいつもの水準に戻りました。知的財産権等使用料収支の前年同月差が大きく縮小したためです(10月:0.84兆円→10月:0.10兆円)。
先月の私の国際収支に関するnoteにも書きましたが、10月の急増は「製薬セクターにおいて、大口の産業財産権等使用料の受取が発生したことが主な要因」(日本銀行)でした。この特殊要因が剥落した形です。
円安傾向の中で期待されている旅行収支の前年同月差も2023年7月からプラス幅を徐々に縮小させています。旅行収支は受取(訪日外国人の日本での消費)が減っても、支払(日本人の外国での消費)が増えても、減少します。詳細なデータを見ると受取の前年同月差が縮小、言い換えればインバウンド消費の伸び鈍化が、旅行収支の前年同月差の縮小の主因のようです。
季節調整値でみると輸出減>輸入減
季節調整値でみた11月の貿易収支の赤字幅が拡大したのは、輸出が前月に比べて5650億円減ったのに対し、輸入が2436億円しか減らなかったためです。貿易統計の季節調整値では輸入金額の方が減少幅が大きかったのですが、この要因は、貿易統計と国際収支統計の輸出、輸入の概念の違いが影響しているかもしれません。いずれにしても、輸出の拡大が待たれますね(汗)
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