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ものがたり

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あることないこと。ありえないこと。あったかもしれないこと。
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2015年7月の記事一覧

星の日

星の日

 嵐の夜も、海の底は静かです。
 海の上のほうは、雨風に打ちつけられて荒れた波が踊りくるっているので、魚たちはいつもより下に潜って休んでいます。

 マンボウはなんだか眠れずに、夜の散歩に出かけてみました。夜の魚たちが、いつもは見かけないマンボウをめずらしそうに横目で眺めて行き過ぎますが、真っ暗な水の中、マンボウにはよく見えません。
 晴れた日には波の上で日なたぼっこするマンボウですが、夜は初めて

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はんぶんの夜

時計の針すら なりをひそめる夜更けには
黒服の男がやってきた
血の色をしたタイを着け
闇にかくれて顔はみえない
わたしははんぶん眠りにつき 醒めた片目で男をみとめる

奴は語るでもなく 手をくだすでもなく
ただ存在するそのことだけで わたしのこころを削りとる
感情はすべて眠りこけて わたしは抗うちからもない
少しずつ すこしずつ わたしのこころは崩れて失われ
暗闇のなかで奴がわらう

そうして溜め

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