見栄を張らないデザイン
デザイナー大家の戸田江美です。これを書くのはデザイナーとして恥ずかしいので、何度も消したり下書きの隅に追いやったりしていたのですが...
自分の学びとして、そしてどなたかのご参考になればと思って公開します。
私が大家をしている「トダビューハイツ」がある荒川区は、歩いていると思わず笑ってしまったり「おいおい」とツッこんでしまう風景に出会います。
見栄なんて一切ない自然体のデザインがそこらじゅうにあって、人情味がある景色。肩の力が抜けるし、歩いていると毎日のように発見があって、とても楽しいです。
細い路地、赤提灯、路面電車、商店街が活き活きとしていて、レトロな香り残る下町。そんな町に馴染んでいるトダビューハイツ。
だから、トダビューハイツのwebサイトのテイストは「見栄を張らないデザイン」にしました。ゆるくて、下町のほっこりした感じを出そうとしています。
コンテンツとしては、
👆「町紹介」コーナーや、
👆「ご近所さん紹介」コーナーがあります。
トダビューハイツのコンセプトは「顔の見える暮らし」。
だけど密接なコミュニティではなく、「強制的でない関わりしろ」を作ろうと思って大家をしています。
そのため、サイトではあえて「住人さん紹介」をせず、町やご近所と言った周辺情報を掲載しました。「賃貸住宅の居心地の良さ」を考えたら、このくらいの近すぎずゆるい距離感がちょうど良いのかなって思っています。
祖母から継いだこのトダビューハイツは築42年。RC造で強固に作られ、昭和の雰囲気を残す様子はまるで、がっしりしたおっちゃんみたい。だからサイトにはこんな風に書きました。
築40年のおっちゃん物件
・筋肉質の中背
(鉄筋コンクリートの4階建12部屋)
・不器用ですから
(エレベーターなし)
・意外と寛容
(自転車、バイクの駐車可能)
・綺麗好き
(リフォームをこまめにおこなっています)
「ありのままのトダビューハイツを気に入ってくれる人に住んでほしい」と思ってデザインしています。
このサイトを見てご内見を申し込んでくださったり、webメディアからの取材ご連絡をくださる方々がいて本当にありがたい限りです。
実はこのサイト、リニューアル前の2016年はこんな感じでした。
ターゲットを自分と同じ「可愛いものが好きなクリエイター女子」にして、おしゃれさと下町の雰囲気が同居している感じを出そうとしていました。
メディアで紹介して頂き、ご内見のお申し込みはかなり来たのですが、なかなかご入居には至らず...。
どうしよう、と思っているうちに気が付いたことがあります。
それは「トダビューハイツに実際に来た方が感じていることと、私がサイトに打ち出していることが違う」ということ。
来てくださった方が
「地方から出て来た新婚さんがしっぽりとコタツで鍋を囲んでる様子が目に浮かぶ」
「昏れなずむ風景とトダビューハイツが似合う」
などと言ってくださいました。
だったら、このままの良さを改めて発信してみよう。
そう思うようになってから、入居者さんが決まりました。しかも、その入居者さんたちがまた熱量高い方ばかり。
洗濯機置き場が外なのは洗濯したらすぐ干せる!と思うと逆にいいのかも、と思い、総合的に考えるとそこよりもお気に入りポイントの容量が大きい
なんて言ってくださったり。
「見栄を張らないデザイン」を念頭に、サイトを作ったり文章を書いたりしていたら、難なく素敵な住人さんとマッチングできました。もっと早くありのままの良さを受け入れておけば良かった。
トダビューハイツの部屋の明かりが全て灯った日の喜びは今でも忘れません。
普段webデザインの仕事では、商品やサービスの世界観が伝わるようにデザインします。
「このサービスを利用される方は健康的になりたいだろうから、スタイリッシュに」
「このお店に来られる方は安心と癒しを求めているだろうから、あたたかなトンマナで」
などなど、商品やサービスの良さとお客さんのニーズを思い浮かべながらデザインします。
仕事であんなに気をつけていたのに、自分の物件となるとまるで客観視できていませんでした。自分のプロジェクトに関してはより慎重に客観視して分析しよう、と身にしみた体験でした。
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Twitter→https://twitter.com/530E
👴 おっちゃん物件トダビューハイツ(入居者募集中!)→https://todaviewheights.com
🏡 21年完成予定「町を楽しめる賃貸」→https://souzou-kenchiku.com
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