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『マダム ・ イン ・ ニューヨーク』と『世界のことばあそびえほん』 シネマと戸田デザイン研究室 Vol.6

映画大好き!な、戸田デザイン研究室 広報・大澤がテーマを設け、素敵な映画作品と戸田デザイン研究室の作品をご紹介する【シネマと戸田デザイン研究室】。

第6回目のテーマは外国語。【言葉は私の世界を広げるツール】をテーマにご紹介します。

マダム ・ イン ・ ニューヨーク 監督:ガウリー・シンデー

数々の名作を世界に放つインド映画。特に映画産業の盛んなムンバイの映画は「ボリウッド映画(インド版ハリウッド)」とも呼ばれ、多くのヒット作を生み出しています。この『マダム・イン・ニューヨーク』もそのひとつ。

インドでなに不自由のない暮らしを営む専業主婦のシャシ。夫と子どもたちのために献身的に尽くす彼女はまさに 良妻賢母。インドの伝統的なお菓子作りの腕前もかなりのものです。

誰が見ても幸せな妻・母に見える心穏やかなシャシですが、実は「英語を話せない」と言う大きなコンプレックスを抱いていました。

ビジネスや教育など インド都市部では、英語はもはや欠かすことができない言語。バリバリと働く夫も思春期の娘も英語を使いこなし、喋れないシャシを明からさまに馬鹿にする始末。家族の冷たい態度に、シャシはとても心を痛め 自分を恥じていました。

そんな中、ニューヨークに住む姪が結婚式を挙げることに。可愛い姪のためにシャシは決意をし、単身NYに前乗り!様々な挫折も味わいながら、家族に内緒で英会話学校に通い始めます。

アジア、ヨーロッパ、アフリカ。様々な人種が通う英会話学校のクラス。熱心な先生と気さくな仲間たちに囲まれ、シャシは英語力だけでなく広い世界に自分を晒し、自分を肯定する強さ、自分を表現すると言う大切な力も身につけていきます。

インドに根付く女性の地位の問題、世代間による教育の差なども この映画は訴えかけていると思いますが…私の心に何より強く心に響いたのは【外国語を学ぶことの意義】についてでした。


実際、私たちの身の回りでも「英語を話せるとかっこいい、話せないから恥ずかしい」。もしくはその逆に「英語が話せるから、なんだよ!」と言うような空気を感じることもありますよね…。これはとても悲しいことだと思います。

言葉はコミュニケーションの道具です。いくら多くの言語を使いこなせたとしても、他者への理解や思いやりを持てなくては 宝の持ち腐れになるでしょう。(実際、劇中のシャシの家族はその様に写りました。)

同時に言語には、その国の文化が織り込まれているものです。懸命に話していく内に、互いの持つ「興味深い違い」も見えてきます。それは同時に自分のアイデンティティや、大切にしてきたものに触れることでもあります。

劇中のシャシもコンプレックスであった英語の習得を通じて、強さを得ました。同時に今まで彼女が母国で大切に育んできた母性や優しさも、より強い輝きを帯びていきました。

まさに これこそが外国語を学ぶことの素晴らしい側面であり、外国語を学ぶことで初めて開ける景色なのだと思います。

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『世界のことばあそびえほん』 企画・編集:戸田やすし 絵:とだこうしろう

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シャシは外国語へのコンプレックスから見事に新しい世界を開きましたが、子どもたちと外国語の関係はどうでしょうか?近年では小学校での英語の早期教育も始まり、子どもたちと外国語の距離はどんどん縮まっているようです。

外国語に触れる時期も大切なことですが、戸田デザイン研究室では【外国語とどう出会うか】がとても大切だと考えています。

その考えを強く反映したのが、こちらの『世界のことばあそびえほん』。世界6ヶ国(スペイン語・フランス語・中国語・ロシア語・スワヒリ語・英語)のことばが一堂に展開する作品です。

挨拶ことばや日常的な動詞、名詞。さらには動物の鳴き声まで6ヶ国の言葉で紹介され、これには大人も驚きがいっぱい!

「犬の鳴き声って、世界でこんなに違うの?」「ネズミの鳴き声って!!」かわいいイラストを見ながら喜ぶ子どもたちの姿は、世界にはたくさんの言葉、表現方法があるというコトに出会った喜びそのものとも言えます。

そしてこの感覚をきちんと通過することが、外国語に向き合うための大切なポイントだと思うのです。

そもそもこの作品は、企画・編集をした  戸田やすしが南の島に滞在した思い出から生まれました。カタコトの現地のことばで挨拶をしたら、島の人々はとても喜び、互いにことばが通じなくても 懸命にコミュニケーションができた。その温かい体験が、この絵本を作らせました。

世界にはたくさんの言葉がある。その言葉を使い、暮らす人々がいる。そして互いの言葉を知ることで、豊かなコミュニケーションが生まれる。

正しい文法、正しい発音も大事なことですが、人とのコミュニケーションの道具である以上 それだけでも足りないのも事実です。

今後、益々多様化していく世界を生きる子どもたちに、正解を超えた【外国語がもたらす喜び】をたっぷりと味わって欲しいと願っています。

『世界のことばあそびえほん』についてコチラ