見出し画像

イスラエル旅日記3 ベツレヘム

エルサレムのゲートで大きなパンを売っていたおじちゃんは、運転慣れしていて私が借りてきていたレンタカーをスイスイ運転して立体駐車場から出し、町並みがまだ全然見えてるエルサレムのごく近所で何やら灰色の大きな門のところに入っていきました。車が列を作って門から入っていこうとしています。その最後尾に並び、「パスポートを見せて」と自動小銃を肩から下げた軍服姿の門番?の人に言われるままハイハイとパスポートを見せ、門をくぐると、同じような白い石でできた住宅街が続き、だんだん建物が多くなってなんだか隣の町のメインストリートに突入したような感じでした。道の両脇には落ち着いた雰囲気のお洒落なレストランが立ち並び、豊かそうな街です。中央分離帯には街路樹や花が綺麗に植えられています。まるで砂漠のおとぎの国に連れてきてもらったようでした。レンタカーはメインストリートをするすると進み、一度だけ左に曲がったなと思ったら「ここだよ」目的地に到着のようです。(写真)

「ここはどこ?」と聞くと「ベツレヘムへようこそ」手を広げてそう言うとおじちゃんはニコニコしながらレンタカーを降りてお店に入っていきました。そこはお土産屋さんで、どうやらおじちゃんは「お客さんを連れてきたらいくら」というお小遣い稼ぎをしかったようでした。しごく全うで普通に仕事をしているな、という印象でした。

店主さん曰く「このお店の前の坂を登ると教会があるよ」と。「何の教会ですか?」という私の質問は意外だったようで一瞬間が空いたあと「イエス・キリストが生まれた場所だよ!君、知らないできたの?」と。うん、何も知らない(笑)。そういえばベツレヘムって世界史の教科書で見たことある気がしていたのはそういうことか、とよくわからない納得をして、お店にある色とりどりの美しい宗教グッズを眺めて楽しみました。
聞けば、店主さんはイスラム教徒なんだけど「神様を信じる心に垣根はないでしょう」と構わずキリスト教グッズも売っていて、店の奥には宝石類のガラスケースの隣にイスラム教グッズもたくさん品揃えがあり、どれも品質がそこそこ良く、懐が深いし商売上手なんだなぁと妙に感動したりしていました。

お店の場所をマップに記録して一人でもまた来れるようにして、この日はこれでお店を出ることにしました。教会に行きたかったですが、その間猫ちゃんを預ける場所がなかったからです。車に慣れていない猫ちゃんをレンタカーの中で1人留守番…は少しかわいそうな気がしてこの日はやめました。

ベツレヘムを出て来た道を戻り、エルサレムで帰り際、おじちゃんがサンド屋さん?的な、ローカルなレストランに連れて行ってくれました。サ◯ウェイの、もっとイスラエルローカルなイメージです。お店の外では夜22時だというのに8歳くらいの子どもたちが歓声を上げて楽しそうに走り回り、治安はいいんだなあということと、夜は早く寝なさいとか酸っぱいこという親御さんあまりいないようだと思い、生きやすい国なのかもなとふと思ったりしました。

私は高校時代に不登校だった時期があり、日本の窮屈な習慣とパターン化され過ぎた思考のクセにほとほとうんざりしていましたが、江戸時代までのエピソードを読んだ時おそらく本来の日本人もかなりおおらかだったはずなんだよな、と思ったのでした。

後日、イエス・キリスト誕生の教会に行きたかったので1人と1匹でバスを乗り継いで再びベツレヘムへ。
ベツレヘムとエルサレムを隔てる灰色の門と高くて長い壁は、実はベツレヘムを含む国を丸ごと覆うものだったと知ったのはこのすぐ後のことでした。そしてそのずっと後になってから、古代にもこの地では殺戮と戦争、奴隷や捕囚といった重たいエネルギーによる行いが繰り広げられていたと知ることになりました。
エルサレム側から灰色の壁を通ってベツレヘムへと入っていくバスは、エルサレムの城壁のすぐ外にあるバスプールに行くと教えてもらえました。中でも、ベツレヘムの街の真ん中まで直通で行ってくれる大変便利な路線があり、乗ろうとした時に「でもその路線は、よく自爆テロで爆発してるやつだよ」とも教えてくれ、国際ニュースをろくに知らない私は「そんなことよくあるんだねぇ、教えてくれてありがとう!」とテキトーな反応を返し、どーしようかなーと一瞬考えましたが、ヤバい時は直感でわかるだろうから、乗れるなら乗る、ことにしました。その後もその爆発しやすい路線には何回かお世話になることになり、私が滞在している間はその路線は何事もなかったのですが、代わりに?Beer Shevaベールシェーバという街にミサイルが着弾し、それを現地のみなさんとお茶をすすりながらテレビ越しに眺めるという体験をすることになりました。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?