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《自分をあきらめない彼のすごさ》

極端な運動オンチの彼。当時はまだ5歳。どのくらい運動神経が低いかと言うと…年長だった彼が遠足に行き年下の子の手を引くつもりがついて行けず、顔面から転び血だらけで帰宅すること一度や二度ではない。プール脇ですっ転び後頭部を強打し救急車で運ばれ生死をさまよったり。小学校に行くなり、下校中にずっこけ泣き崩れているところを保護され学校に届けられたり。教室で足をかけられて、おでこから床に激突してまたまた入院したり。とにかく転ぶ、よく転ぶ。親からしても彼には体幹というものがほぼ備わっていないのだと思っていた。

自転車に乗りたい

そんな彼が自転車に乗りたいと言い出した。年頃かな?と思い自転車を買いに行きしばらくは補助輪付きでいいと思いそれを購入した。だがしかし補助輪付きでもダイナミックに転んでしまう。逆に補助輪があることであらぬ方向に転がってしまうのでこりゃ危ない。それが怖いのかしばらくすると自転車も乗らなくなってしまった。

友達と遊びたい

一年くらい経ってからまた自転車に乗りたいと思いはじめた様子。うちは学区の外れなので仲のいい友達の集合場所が遠い。自転車が無いと遊びに行きずらい距離だ。本人の気持ちも分かる。「自転車練習する?」と聞いたら一応やるとの返事。久しぶりに自転車に跨った彼の姿を見て驚愕することに…以前にも増して絶望的な乗り方をしている。補助輪に任せてお尻が半分落ちている。これまた転ぶぞ(汗)しかも時間かかるぞー。さて、親としても決断だ。運動能力に難ありの彼を自転車から遠ざけるか?危険を承知で特訓するか?※危険とは特訓を示していない。もし、奇跡的に乗れるようになったとしても彼の転び遍歴からすると自転車での転倒は致命傷になりかねない。そんな事故を起こしてしまうのではないかと想像してしまう。迷ったが、いったんマンションの中庭をつかって練習することにした。

あっという間に半年が過ぎた

補助輪付きでも彼の乗り方だとどちらかに傾くと転ぶ。何度も何度も転ぶ。助言はお腹いっぱいに浴びせているが、転ぶ。毎週末に練習をしに行きようやくなんとかスロープを使って降りるところまできた。GWから初めて赤いダウンを着る頃になんとかスロープは降りれるようになる。

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なんとかスロープの往復ができるようになったのが更に半年後。補助輪付きで乗れるまで1年が経った。ただし友達のところにはまだ歩いてしか行けない。

中庭を見守るギャラリー

四方を囲まれたマンションの中庭で、1年間毎週末にスロープを自転車で行ったり来たりする子供とコーチ(親)は目立つ笑。補助輪の「シャーー」という音も響くし。でも、その時間に必ず洗濯を干すおばちゃんやベランダで煙草を吸うおっちゃんの視線もいつしか気にならなくなっていた。練習を終わる時には「ようがんばってんな!」と声もかけられるようになっていた。

補助輪外し

いよいよだ。補助輪は慣れてきた。でもお尻は相変わらず落ちたままだ。もう一年経つ。そろそろ補助輪を外すそう。本人はなんのことだかあまりわかっていない。親の独断で決めた。補助輪なし第一走目!もうゼロかマイナスくらいに乗れなくなる。手もフラフラ。バランスが取れない。跨ったまま足をずりながらスロープを降りるので精一杯。サドルに座れないまま半年が過ぎた。あまり進歩のないまま月日がどんどん過ぎていく。

もうやめる?

練習を始めてから一年半。よくがんばっている。でも乗れるようにはならない。この時間を他の遊びや自分のやりたいことな費やすことも可能なはずだ。時間も資源。自転車乗れなくてもこれからの人生に大きな障壁となることは、ほぼない。ここは私が責任を持ってあきらめさせようと決心。まだ6歳の彼を言葉巧みに誘導することは容易い。そこで声をかける「自転車よくやってるね。たまには他の遊びもしてみようよ、釣りとかやってみない?」興味を示すものの首を縦には振らない。むむ、なかなか頑固なやつ、誰に似たんだ汗。

続ける理由

上達しないのにつまらなくならないのだろうか?彼がやる、続けるというのだからもちろん付き合う。全力で応援する。ずっと側で見守るしかない。でも何が原動力なのか不思議になり、ふと彼に聞いてみた。「なんで自転車続けたいの?」そしたらぽそりとつぷやく「新潟のじいちゃんに会いに行く」!!!なるほど。ここからは640キロはあるな。遠いのは彼も車でなんども帰ってるのでなんとなくは理解しているはず。そうか、それが目的なら自転車に乗れるまで何年経ってもあきらめないはずだ。

ここからはスパルタ🚲

彼の目的がわかった。こちらも覚悟を持って全力、全身全霊で地面から足を離せるために色々とコツやアイデアを考える。そこから更に数ヶ月…ペダルに数秒足をのせることができた!チャンス到来。次の週には右はずっとのせられるようになり、その次の週は一瞬左足もペダルにのせることできた。いよいよか…。

中庭の拍手喝采

二年が経った。ほぼ両足をペダルにのせられるようになったので、彼にスロープから広場へ進むように説得すること数時間。なんとか平らなところに出れた。あとは漕ぐだけ。ここは辛抱強く、焦らず来週に持ち越し。そして次の週。遂にきた!この瞬間は一生忘れられない。ペダルを踏み出して前に進む。二年間待ちに待った時が来たのだ、思わず大きな声で「うっしゃー!やった!乗れたぞ!」と拍手〜。あら?拍手が大きく響くので見上げると洗濯のおばちゃんと煙草のおっちゃんも「ほんま、ようやった!」と労いの言葉もいただきました。

彼の背中に見えたもの

自転車に乗れるまで。どなたにもある出来事のひとつをここまで綴ってしまい恐縮です。ここから我々親子の何事もあきらめないそうすれば必ず達成する。という強い気持ちが根ざしたんだと思います。その後も相も変わらず運動オンチは継続し、プールは居残り学校いち泳げない子。運動会もマイペースでいつもビリ。鉄棒はできないし、高いところから飛び降りれない。でも「やる」と彼が決めたことはやり通す。どんなに時間かかっても遅くても、親から散々キツい言葉を浴びせられてもやり切る。そのおかげもあり、彼に連れていってもらった受賞は一度や二度ではない。運動以外の絵や習字や作文などではあるが笑笑。自転車を漕ぎ出した彼は確実に新潟に向かっていた。その背中を見ながら、徒歩から一気に世界が広がり手元から離れていくなぁと、なんとも言えない気持ちになったのを覚えている。

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自分をあきらめない

これから色々な事にチャレンジする君へ。我々親子の血の鉄則というか、彼がコレをした時だけ本気で叱ることがあります。それは「自分をあきらめた時」これは全力で正します。可能性でしかない自分をあきらめることは絶対に許しません。それは君自身から私が教えられたもの。二年かければ乗れるようになる自転車。シンプルに自転車で新潟のじいちゃんへ会いに行く。と強く思う。あとはひたむきに時間を気にせず取り組むのみ。そんな君を応援し続けます。




そんな彼も中学生。初めての部活を選んできてビックリ❗️テニス🎾ですと。土日も休まずテニス漬け…運動やれんだ。いいやん。可能性は無限大やね。文系どこいった笑??

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