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詩|光と闇

光を見ることは
泣くべきことだった

光が明るいことに気づいたのではなく
闇が暗いことに気づいたからだった

光を灯せ灯せという大人たちは実は
闇の存在を教えていた
光は消すことができるが
闇は消しにくかった
光、と口にするたびに
闇が生まれた

光を追うには 途中までは
先人にならえば良かった
しかし 途中からは
追うと次々に闇が生まれた
光に似た闇が 笑顔に似た泣き顔が

そして 光の通路だと思っていたものには
先人の罠があった
行き止まりの断崖で

その先には闇しかなく
一歩ごとに先人も知恵も消えた
ついに自分一人になった

闇を追い払うのは
自分の力でしかできなかった
唇を噛もうと 涙を流そうと

闇には周到な対処が必要で
そのやり方を知るのに
長い時間がかかるようだった

途方もなく 長い時間が――
あの光が生き生きて 伸び
欲にまかせてどこまでも膨張し
そしてそれが闇に溶け死ぬほどの


(月刊詩誌『詩人会議』 掲載)



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