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20230226 Tobokegao 対談インタビュー

リード文

English version → https://note.com/tobokegao/n/n4126c95511e6

サード・アルバム『TOBOX』をリリースし〈TOBOX Release Party〉を開催したタイミングで、とぼけがおのこれまでの活動を振り返るべくインタビューを行った。〈TOBOX Release Party〉札幌編に出演したhally、赤帯、ライターの佐藤がインタビュアーとして参加。hally、赤帯はチップチューンやその周辺まで含めた専門的な視点から、佐藤はより一般的な音楽活動についての視点からとぼけがおに話を訊いた。


インタビューが行われた場所は、かつてとぼけがおがバンド活動をしていた頃に使用していたスタジオの上にあるレンタルスペース。思い出深い場所でのインタビューは3時間以上に及んだ。「サード・アルバム『TOBOX』の振り返り」、「ゲームボーイを再度手にして」、「メディアとしての『とぼけがお』」の3章に分けて、とぼけがおのこれまでの活動とチップチューンを取り巻く現状についてお届けします。

(取材/hally、赤帯、佐藤遥 文/佐藤遥)


インタビュー参加者の紹介

とぼけがお

現在のチップチューンを牽引するアーティストの一人。《TBKgao》を主宰。2022年10月にサード・アルバム『TOBOX』をリリース。2023年2月には〈TOBOX Release Party〉を開催。7月27日には〈Tobokegao 30th Birthday Party〉を行う予定。

Twitter https://twitter.com/to6okegao

IG https://www.instagram.com/tobokegao/


田中 “hally” 治久

ゲーム音楽史/ゲーム史研究家。2001年にライター活動を開始し、《VORC》を立ち上げチップチューンという言葉と概念を日本に広めた。著書に『チップチューンのすべて』、『ゲーム音楽ディスクガイド』など。チップアーティストとしても活動し、ゲーム音楽のリミックスやサウンドトラック制作にも数多く携わっている。

Twitter https://twitter.com/hallyvorc


赤帯

1982年に発売された8-bitホームコンピュータ、コモドール64に搭載された音楽チップSIDを用いて制作された楽曲をはじめとして、チップミュージック、トラッカー・ミュージック、デモシーンに明るい。関連記事の翻訳も行う。《New Masterpiece》より出版された『蒸気波要点ガイド』に寄稿。

Twitter https://twitter.com/aka_obi


佐藤遥

ライター。TURN、ANTENNAなどで執筆。

Twitter https://twitter.com/FqqrD

IG https://www.instagram.com/ha___ruuu/


サード・アルバム『TOBOX』の振り返り

2022年10月にリリースされたとぼけがおのサード・アルバム『TOBOX』を振り返りながら、バンドアレンジの背景や歌を取り入れるようになったきっかけ、活動名の由来など、活動の基礎となっている事柄について訊いた。


とぼけがお前史

赤帯 とぼけがおさんの作品はバンドアレンジが特徴の一つだと思います。『TOBOX』でもその特徴が存分に表れていると感じました。実際にバンドをやっていたとお聞きしたのですが、どのような活動をしていたのでしょうか?

とぼけがお バンドもしていたのですが、実はその前にニコニコ動画の歌い手をしていました。それが音楽活動の始まりですね。15、16年前くらいのニコニコ組曲が流行った時期に歌い手って面白そうだなと思い、一人でオーディオ・インターフェースと録音機材を買って、カラオケ音源に合わせて歌って投稿していました。それをオタク的なコミュニティの気の許せる人に紹介して楽しんでいたんですけど、突然、歌い手として活動していることをコミュニティの外にバラされたんです。 

hally、赤帯、佐藤 ! 

とぼけがお その頃はまだ微妙にオタクが世間に受け入れられていなかったので、その出来事がきっかけで仲が悪くなる人もいて音楽が嫌いになりました。 

hally いきなり人間不信に。 

とぼけがお そうなんです。その後、高校2年生のときに、ニコニコ動画事件を知っていた中学の同級生が自分なら音楽的なことができると思ったようで、「バンドのボーカルをやってくれ! お前しかいないんだよ!」と声をかけてきたんです。それでしょうがなく入ったものの、メンバーのパートもちゃんと決まっていないし、作曲も誰もうまくできない状態で。だからみんなでパートを割り振って、作曲も仕方なくやることになりました。ちなみに自分のパートは余ったギターと高音ボーカルでした。

佐藤 バンドはデビューを目指して本格的に活動していたんですか?

とぼけがお そうですね。でも閃光ライオットの一次は通るけど二次には行けない経験を何度か繰り返して、商業寄りにしないとじゃないの?とか、ドラムがうまくないからだめなんだ!とか、不安や不満で関係がもつれていきました。そもそも低音ボーカルはコブクロが好き、ベースはBUMP OF CHICKENが好き、ドラムはX JAPANが好きで、それをどうにかまとめないといけなくて。

赤帯 難しすぎる……!

とぼけがお それでJ-ROCK的な音楽をやっていたんですけど、大学1年生の頃には他人に合わせて曲をつくらないといけない状況が深刻になってきて、しんどくてもう嫌になっていました。


声や歌との距離感

佐藤 そうやって歌い手から始まり、バンドのボーカルを経て、サード・アルバム『TOBOX』で声や歌がフィーチャーされているのは円環が閉じたように感じます。

赤帯 僕は〈TOBOX Release Party〉札幌編の出演オファーを受けたとき、とぼけがおさんと出会うきっかけがコモドール64の音楽だったことや、『TOBOX』の声と歌にフィーチャーした側面が頭にあったので、なんとなく合成音声をキーワードにセットリストを考えていました。それが結果的には東京編に出演されたVOCALOIDを使うヤギシロさんをはじめとして、出演者の方たちのアプローチとシナジーを起こせたのかなと思います。

とぼけがお そうですね。意識はしていなかったのですが東京編は声がフィーチャーされるような出演陣になっていた気がします。葛飾出身さんはグループサウンズ的なバンドサウンドに、とたけけっぽいどうぶつの森系のボーカルを入れたり、メキシコからお呼びしたkonamiscc(元々の名前はmemowave)さんは最後に生声で歌ったりもしていました。

赤帯 2020年にリリースされた「Being Rusty」から『TOBOX』に至るまでの過程で、歌詞とボーカルがとぼけがおさんの作品の不可欠な要素になってきた印象があるんです。それまでのバンドアレンジでは旋律として潜在的に留まっていたものが、歌詞やボーカルとして一気に顕在化したように感じます。とぼけがおさんの歌への意識が高まったのはどんなタイミングだったのでしょうか?

とぼけがお 少し前の話からすると、2016、7年の千葉に住んでいた頃の仕事で精神的にきついことが多かったんです。なので次の年には退職して調子が戻るまで休んでいたのですが、その間にコロナ禍になりました。それで社会的なことをしばらく考えなくてもよくなったので暇になっちゃったんです。

hally 期せずして延長期間を少しもらったんですね。

とぼけがお そうですね。暇になったことと、なんだかんだ歌ものが好きなので聴いているうちに、いま歌ものをつくったらどうなんだろうと思ったことや、M8 Trackerを使うようになって音の幅が広がったのでボーカルを入れたら面白そうだと思ったこともあって、歌うか!という気持ちになりました。それでコロナを意識して引きこもる意味合いを持たせたインスト楽曲を自己治療的につくって、セカンドアルバム『Room To Room』(2020年)としてリリースしてから歌い始めました。

赤帯 とぼけがおさんは自身の歌声のピッチを上げていますよね。たとえば自分の曲に他の人のボーカルを乗せて、自分の名義でリリースする方もいるじゃないですか。そうしないのはあくまでも自分の声で歌うことが重要だと考えているからでしょうか?

とぼけがお ピッチを上げただけで自分の声であることに変わりないので、自分の意思をそのまま歌えると思っています。もし他の人に歌ってもらうとしたら歌詞は全く変わると思いますね。 

佐藤 加工された高い声はハイパーポップ的と形容される楽曲でよく聴かれます。実際にわたしは『TOBOX』をハイパーポップから派生した音楽として聴いていたのですが、そういった意図はあったのでしょうか?

とぼけがお 自分の声が恥ずかしいのでただの照れ隠しですね。キーを4つ上げたらGUITAR VADERのMIKIさんみたいな声になると気づいてからそうしています。たしかにアルバムの中でテンションが高い曲はハイパーポップと親和性があるのかもしれないです。

佐藤 インスト楽曲を自己治療的につくってから歌い始めたと言っていましたが、歌うことが自己治療になるとは考えなかったのでしょうか?

とぼけがお あまりそういう発想にはならなかったですね。実は精神的にきついときはノイズしかつくれなくなるんです。ノイズは難しいことを考えずともつくれるのと、ノイズを出すこと自体がストレス発散になるからですね。ノイズはちょっとした操作で劇的に音が変わるので歌うことよりも感情の変化が表現しやすいですし。でも自分を応援するような歌をつくることが多いので、言われてみれば歌うことは自己カウンセリング的な行為なのかもしれません。

赤帯 2019年にリリースされたBendelic Freaks名義の『Circuit Bending GB』は、現在までのカタログを振り返ってみてもバンドアレンジや歌とは別ベクトルの追究がまとまって提示された作品だと思うのですが、このときのとぼけがおさんはノイズをつくるフェーズだったということでしょうか?

とぼけがお そうですね。初期のゲームボーイをサーキット・ベンディングした、ボタンを押したらビーというノイズが鳴ったり、ノブを回すと音がスローモーションになったりする改造を施した機器をつくる方がいるのですが、そのゲームボーイをいただいたので、使ってちょっとストレス発散したいと思ってできたのが『Circuit Bending GB』です。

佐藤 ほかにもノイズの作品を制作していた時期はありましたか?

とぼけがお 『Circuit Bending GB』よりも前に、精神的に落ち込んで〈PROJECT MAGIC CANVAS!〉のライブ出演ができなくなってしまったことがあって、そのときはゲームボーイのノイズを変化させて45分間垂れ流す作品をつくりました。会場にいたsdhizumiさんに自分のアイコンの仮面をかぶってもらい、僕に代わって操作してもらうという演出をしてもらいました。そのときの自分ができる唯一のライブの演出はもうこれしかないと思ってやってもらいましたね。


ぐちをちょっと歌に合わせて聞いてほしい

赤帯 とぼけがおさんの歌、特に歌詞のついた曲のベースとなるムードは、疲労や退屈、アンニュイ、諦めといったものだと思います。 僕自身はそれを単純にネガティヴなものとは思っていないのですが、一般的にはネガティヴだとみなされやすいものです。とぼけがおさんはそういった感情とどのように向き合ってきたのでしょうか?

とぼけがお そのときに思ってることをそのままストレートに言っているだけなので、向き合うというより、ぐちみたいになっちゃっているんですよね。ただただ退屈だなとか。ぐちをこぼす延長で、申し訳ないけどちょっと歌に合わせて聞いてほしいなという気持ちです。

hally 強烈に伝えたいメッセージがあるわけではない?

とぼけがお ないですね。ぽろっと出てくる言葉をメロディに合わせてちょっと聞いてほしいといいますか。強烈なメッセージを聞き手に与えたい気持ちはもうなくて、自分で自分に問いかけるような歌詞ばかりです。

赤帯 メッセージに関してなのですが、「Yomi De Ashibumi」という曲は最初にインスト版がリリースされ、後からボーカル版がリリースされました。つまり歌詞をつける前に「黄泉で足踏み」というタイトルは付いているわけですよね。このような場合、題名と曲がどのように結びついて言葉が出てくるのでしょうか?

とぼけがお あの曲の歌詞ができたきっかけは、結構重い話になってしまうのですが、自分の曲をよく聴いてくれていたファンの方が自殺してしまったことなんです。仲が悪かったわけではないし、その人に向けたツイートではないんですけど、気分が沈んでしまうような内容をつぶやいてしまうこともあったと思うので、もしかしたら自分の言葉がその人に影響を与えてしまったのかもしれないと思って。そういうことを反省しつつ、死んじゃう前にやっぱりもっと言えることがあったんじゃないかと思って、死ぬ間際のアディショナル・タイムみたいな、少し時間がもらえるような歌をつくりたくて「黄泉で足踏み」という題名を先につくりました。でもなかなか歌詞ができないまま1年くらい経ってしまって。最終的に歌詞を思いついたのはまた別の別れがあったからです。もともと自分のアイコンを描いてくれていた人にTシャツ用のアイコンをつくってもらったのですが、使用していい範囲の認識に行き違いがあったみたいで関係性が切れてしまったんです。別のイベントでも同じようなことがあったのに自分もやってしまったと気づいて、その後悔をきっかけに歌詞が一気にできました。


音楽をやりとりしてコラボする

佐藤 今回のアルバムでコラボしてる方たちとはどういった経緯で出会ったのでしょうか?

とぼけがお まずhey, ily!さんは、hey, ily!さんのほうから『Psychokinetic Love Songs』(2022年)で冒頭の語りをやってほしいというオファーをもらって自分の地声で語りを入れました。そのあとにギャラはいらないからコラボしてほしい旨を伝えて、今回「To Quit」に参加してもらいました。PROJECT V/R Convertersさんも同じような経緯です。PROJECT V/R Convertersさんはアルバムの特典にオーディオコメンタリーを付けるという面白い試みをしていていて、そちらに自分が参加しました。それで同じようにギャラはいらないのでコラボさせてくださいと伝えて「Dot Matrix Clock」のアレンジ、編曲をやってもらいました。ギャラを支払えばそれで終わりになってしまうのは名残惜しいので、こういう感じでお互いに感化された部分を活かして音楽を通したやりとりをしていますね。

佐藤 海外のアーティストとコラボすることも多いですか?

とぼけがお そうですね。まず日本と海外だとコミュニティでの接し方が違うと思っています。日本のほうが音楽よりもコミュニケーションでの繋がりが多い気がしているのですが、海外だと音楽でのやり取りや繋がりが多い気がします。自分の言葉が流暢ではないのもあってそう感じているのかもしれないですけど。 

佐藤 もう少し詳しく聞きたいです。

とぼけがお 日本だとアーティスト本人と交流したい気持ちが中心にあって、そのためのツールとして音楽が使われている印象を持つことが多いんです。それが海外だと音楽をつくることが中心にあり、音楽に付随してアーティスト本人へ興味が出てくる印象があります。

赤帯 日本だとまず共通項目が前提にあって、それから一緒に何かをやりたいというモチベーションを持つ人が多いのかなと思いますね。

とぼけがお そうだと思います。そういうのもあって自分の交友関係がどちらかというと海外のほうに多くなってきていますね。日本のコミュニティからは少し離れつつあるのかもしれないです。

佐藤 海外のアーティストと一緒に曲をつくることが増えていきそうですね。

とぼけがお そうですね。コラボ作品をつくる相手やレーベルで支援するアーティストは、いまのところ日本と海外で半々くらいです。


「とぼけがお」の由来

佐藤 『TOBOX』のアートワークは、とぼけがおさんを象徴する顔になっています。アートワークやTwitterのアイコンについてお聞きしたいのですが、その前になぜ「とぼけがお」という名前で活動しているのか教えていただきたいです。

とぼけがお バンドの練習でスタジオに入るときに名前を登録する必要があって、毎回ひらがな五文字で適当に決めていたうちの一つが「とぼけがお」だったんです。そのときスタジオの受付の方が「とぼけがおっていい名前だね」と言ってくれたので、一人で活動するときは「とぼけがお」にしようと思っていました。

赤帯 そうだったんですね。名前に「かお」が含まれる通り、活動初期から現在に至るまで、とぼけがおさんの顔のアイコンはミーム化されてきたと思います。それはどこまで意図していたのでしょうか?

とぼけがお 自分でミーム化していますね(笑)。たとえば磁石が3つ並んで自分のアイコンの顔っぽく見えたら、概念って言ったりする。 こういうことをひたすら繰り返していたらミーム化していました。ひたすら繰り返すことが好きなんです。だからパソコン音楽クラブの柴田さんがTwitterで同じことを繰り返し言っていたのも好きでした。繰り返すことは一定の期間を超えると急激に面白くなる気がしています。なので曲をつくるときに取り入れることもありますね。

赤帯 ご自身でもデザインをされていますが、CASTPIXELさんやえびですさん、migmintさん、toyoyaさん、Froyo Tamさんなど、これまでに関わりのあったデザイナーやイラストレーターのみなさんとはどのようにして出会ったのでしょうか?

とぼけがお まず根本的な部分では子どもの絵のようなデザインが好きで、変に社会に揉まれてしがらみを背負ったものが苦手なんですよね。好みのデザイナーさんやイラストレーターさんと出会うには、そういったデザインを集めている人をTwitterで探します。

佐藤 既にまとまっている情報を起点に探していくんですね。

赤帯 とぼけがおさんのアイコンに加えて、2020年の「Being Rusty」あたりから『TOBOX』まで色彩が青と黄に統一されています。その色の統一が最近の作品の統一感をそのまま表しているような印象があるのですが、この色彩に決定するまでにどのようなプロセスを経たのでしょうか?

とぼけがお 単に自分に色彩センスがあまりないと思ったのと、チップチューンと同じように変にごちゃごちゃ増やすよりも、極限まで減らすほうが美しくなるということで色の数を減らしました。

佐藤 アイコンも同じ理由で青と黄色を使っているんですか?

とぼけがお アイコンのオリジナルはビオレママのアイコン作成ツールでつくったキャラクターです。ビオレママの色が青と黄色だったのでそのまま使っています。幼い頃のツインテールの妹の写真を元につくったアイコンが進化して現在のアイコンになりました。 

赤帯 ツインテールのキャラクターに名称はあるんですか?

とぼけがお 一応ローマ字で 「Tobokegao-chan」としています。kfaradayさんにTobokegao-chanいいねと言われて。当初はユニットでやろうと思ってたんですよ、女性ボーカルとゲームボーイの。他人に歌ってもらって自分はゲームボーイをいじるだけにしようと思っていた頃があったと、いま思い出しました。最初期はとぼけがお2号という名前でしたから。でもすぐにその設定はなかったことにして、とぼけがおという名前に変わりました。


ゲームボーイを再度手にして

ゲームボーイとLSDjという手段で音楽活動を再開してから、M8 Trackerを用いた制作に至るまでの経緯を振り返りながら、楽曲制作で大事にしていることや音楽性のルーツなど、制作の軸となっている事柄について訊いた。


楽しかったのはあの頃

赤帯 2014年からゲームボーイを使用してのソロ活動が本格的に始まるわけですが、どういった経緯でゲームボーイとLSDjという作曲の手段に出会ったのでしょうか?

とぼけがお バンドをやっているうちに病んできて、もう昔に戻りたい……!という気持ちになっていたんです。ゲームボーイをやっていた頃がいちばん楽しかった記憶があったので、ゲームボーイで曲をつくるしかないんじゃないかという発想に至ったんですよね。

佐藤 好きなデザインやイラストについて「社会に揉まれてしがらみを背負ったものが苦手」と言っていましたが、現実逃避的にゲームボーイで音楽をつくり始めたお話を聞いて納得しました。

とぼけがお まさにそうですね。 趣味は全部、現実逃避です。

hally その時点までにゲームボーイで作曲ができると知ってはいたということですよね。

とぼけがお そうですね。ポケットカメラが好きだったのですが、ポケットカメラに曲をつくるミニゲームがあったので曲はつくれるだろうなと思っていました。 それで「ゲームボーイ 作曲 ツール」というような検索をしたらLSDjが出てきて、ポケットカメラが元になっているという情報も載っていたから、きっと自分も使えるだろうと思い導入方法から調べて曲をつくり始めました。

佐藤 技術的なことはインターネットで調べて独学で身に付けたのでしょうか?

とぼけがお そうですね。意外とインターネットに載っているんです。情報を調べたあとは自分で手を動かしたり耳で合わせながらやっていました。自分は鳴ってる音を思っている音に近づける微調整ができたので少し運がよかったです。

佐藤 そこで挫折してしまう人は多いんですか?

hally そこにすら辿り着けなくて、ソフトの導入から難しかったり、ソフトを立ち上げて間もなく心が折れてしまう人もいますね。

赤帯 とぼけがおさんが独学で楽曲制作を始めて、その後の活動も基本的に一人で完結できていたように、LSDjミュージシャンの大きな共通項は大半がソロであることですよね。一人一台で作曲と演奏が完結するという特徴によって、LSDjはユーザーであるソロ・ミュージシャンが音楽的に名声を得たり経済的に徐々に自立していった背景を持つ特異なソフトだと思っています。とぼけがおさんがバンド活動からLSDjに移行した転換期には、インストゥルメンタルの制作者になろうと思ったのか、それともシンガーソングライター的な自己認識が強かったのか、どちらだったでしょうか?

とぼけがお そのときはバンドをやっていて歌うのが嫌になってしまったことが大きかったので、もうインストゥルメンタルでいこうと思っていましたね。なのでしばらく歌は入れませんでした。


LSDjからM8 Trackerへ

赤帯 2年ほど前から制作のメインの手段がLSDjからM8 Trackerに移行しましたが、現在LSDjでの制作は、とぼけがおさんにとってどんな位置づけなのでしょうか?

とぼけがお M8 Trackerが制作のメインとは言ってもゲームボーイじゃないと出せない音がどうしてもあります。ノイズもその一つです。あとは波形メモリという自分で波形を書いて好きな音を出せるチャンネルはゲームボーイにしかないので、手放すことはできないですね。

hally やっぱりいまのハードウェアで理想的な音をつくると特徴的なノイズが出なくなりますね。かなり似せた音を出すことはできるんですけど荒れ方が足りないんです。

とぼけがお そうなんですよね。そういう音がほしいときには絶対にゲームボーイを使うので。ちなみにM8 Trackerにも将来的には波形メモリ機能が付くらしいですよ。どんどん更新されて機能が増えていくので楽しみです。 

赤帯 M8 Trackerの導入以降、とぼけがおさんの音響的な好みが強く出ている気がします。 ダンスミュージック的なダイナミクスや立体感がより後退していて、90年代の商業的な音楽の音響に近い、かなりフラットな聴こえ方を大事にしている感じがするんですね。それにはFM音源の特質が手伝っている部分もあると思います。とぼけがおさんが提示した、“PURE MIDI”という無加工の音の響きを大事にするコンセプト/プロジェクトもありますが、M8 Trackerのサウンドに接しながら大事にしている音の手触りや聴こえ方はありますか?

とぼけがお 90年代というのはその通りです。自分でピックアップした「Tobokegaoの影響を受けた音楽作品100」もそうなのですが、とにかく好きな音のごった煮をつくりたいと思っているみたいです。 だからギターの音だったら、90年代のギターの音をサンプリングするつもりでFM音源で音をつくったり、GiRLPOPみたいなJ-POPのストリングスをFM音源で再現したりします。それを全部集結させた音で曲をつくっているので自分の好きな音だけを詰め込んでいる感覚がありますね。 


ニコニコ動画と90年代の音

赤帯 個人的にとぼけがおさんといえば90年代のイメージがとても強いですし、「Tobokegaoの影響を受けた音楽作品100」もそのイメージの通りでした。お会いしたときにあまり年齢の差を感じなかったのは、僕が90年代後半の音楽を聴いて育ってきたこともあるのかなと。

とぼけがお なるほど。


赤帯 とぼけがおさんの世代からすると、たとえばCOILやal.ni.coは後追いで知ったと思うのですが、どのように90年代〜2000年前後の音楽を摂取してきたのでしょうか?

とぼけがお 実はニコニコ動画なんですよ。 

赤帯 なるほど。


とぼけがお ニコニコ動画にいたモグモグフヨードさんという方の動画をよく見ていました。その方は、東方のアニメーション作家的な活動をしつつ、東方と全く関係ない90年代のマニアックなバンドやアーティスト、たとえばSUPER BUTTER DOG小林建樹の楽曲をBGMにして、東方のキャラクターがかわいく動くアニメーションをつくっていました。その動画の音楽から受けた影響が大きいです。ちなみに、モグモグフヨードさんは絵がうまいはずなのにヘタウマな絵でアニメーションをつくっていて、ビジュアル面でも結構影響を受けていると思います。

hally 「Tobokegaoの影響を受けた音楽作品100」で挙げられていた音楽は近年のものを除けばある程度わかったのですが、リストをざっと見て、線がなくて全部点だなと思いました。何かの影響を受けてタグを辿るような聴き方はあまりしてないのかなと。これがニコニコ動画世代の聴き方だと改めて確認しましたね。 

とぼけがお そうですね。一本線で聴くことはないですね。ニルヴァーナを聴いていた頃はカート・コバーンが影響を受けた楽曲を聴きあさることもありましたけど、それでヒットするのが少なくて。だったら点で調べたほうがヒットする楽曲が多いなと思っていました。 

赤帯 先程モグモグフヨードさんの名前が挙がったように、Twitterで好みのデザインやイラストを探されるときと同様、自分の気になる音楽を知っている人を手がかりにそこから広げていくということでしょうか?

hally 何かを起点にして広げる聴き方とは全く違う、手がかりの得方がそもそも音楽を起点にしてない気がしましたね。ありとあらゆるアンテナを張り巡らせているような。

とぼけがお そうですね。

hally たとえば谷村有美はどこから繋がったんですか?

とぼけがお 『3丁目のタマ うちのタマ知りませんか?』のアニソンを歌っていたところからです。

hally 谷村有美、そういえばアニメ歌手ですもんね。PandAもいいですよね。

とぼけがお しかも『10th PandA anniversary くろぱんだ・しろぱんだ』はGiRLPOPなんですよ。 

hally Meat Beat Manifestoはどこから?

とぼけがお 『Actual Sounds + Voices』はビッグ・ビートの個人的なリバイバルの時期に聴いていて中毒性があったので覚えました。 

hally 少し話を聞けばそれぞれの楽曲を知ったきっかけは出てくるけれど、一つ一つ掘るベクトルが全然違うというか、わかりやすく線的な文脈で掘っている感じではないですよね。

とぼけがお とっ散らかった中から良いと思う作品を見つけるような聴き方をしているのかもしれないです。 

赤帯 音楽雑誌やラジオをチェックして同時代の音楽を追いかけた経験はありますか? 

とぼけがお あまりないですね。親がラジオをよく聞いていたので、いいなと思った曲が流れていたら調べて聴くようにはしていたんですけどグッとくる曲は少なくて。 だからインターネットがいちばんですね。 

佐藤 アニメやニコニコ動画以外にどんなメディアから音楽の情報をキャッチしていましたか?

とぼけがお Twitterですね。好きな音楽の情報を発信しているアカウントを全部見るようにしています。

佐藤 なるほど。数人だと文脈がまだわかると思うのですが、わからなくなるくらい多くの人をチェックしていたということですよね。 

とぼけがお そうですね。 一人一人が好きな音楽には文脈があるけれど、それらをタイムラインでバラバラに見るから全部ごちゃ混ぜになって訳がわからなくなるんだと思います。こういう聴き方をしている人は少ないんですかね?

hally 世代的な違いだと僕は思っています。 とぼけがおさんほど顕著な例は見たことがないですが、突拍子もないものと突拍子もないものを並べて聴いているニコニコ動画世代の人は割と見ていたので。

とぼけがお なるほど。 

hally その後のYoutube世代になるとYoutube側からのおすすめを追いかけていくようになるのでわかりやすくなるのですが、ニコニコ動画世代は僕の中でモヤモヤした不思議な存在なんです。すごく面白いですね。 

とぼけがお 自分はニコニコ動画世代ど真ん中のど真ん中ですね。ニコニコ動画が始まったばかりの時期にアカウントをつくってやり始めたので。 

佐藤 いつ頃からニコニコ動画を見ていたんですか?

とぼけがお 中学生の頃にニコニコ動画ββで登録したので2010年頃だと思います。

hally でもいわゆるニコニコ動画のアンセム的な楽曲は全然出てこないですね。 

とぼけがお そうですね。そこにはあまりハマらなかったのかもしれないです。 

赤帯 とぼけがおさんは自身を構成するものとして、ニコ動MADといった音素材ネタよりむしろチートバグをTwitterのプロフィールに挙げています。これもニコニコ動画などの動画サイトを通じて知ったのでしょうか?

とぼけがお ニコニコ動画で見ていたからですね。音MADも意外と見ていましたし影響を受けている部分も多いかもしれないです。好きな音MAD作者は自動販売機の中の人という方でした。全然流行ってない音素材でブレイクビーツの真似をしたり、ケチャのような音ネタを無理やり使ったりしていてすごかったので音楽的に聴いていました。現在はさんという名前で活動をされていますね。

赤帯 チートバグは単にミームとして消費していたのか、技術面やビジュアル面からインスパイアを受ける部分があったのか、どちらでしたか? 

とぼけがお 両方だと思います。ミーム的に面白がっていましたし、技術的にもすごく変なことをやっているなと思いながら見ていました。


制限の面白さ

佐藤 お話を聞いていると、とぼけがおさんは雑多なものが好きなように思えます。しかし一方で、デザインや楽曲の制作においてはミニマルなものを好んでいるようですし、そもそもチップチューンは制限が多いジャンルだと思います。その両立が興味深いです。

とぼけがお インプットに関しては雑多に様々な情報を仕入れるほうが好きですが、アウトプットに関しては得た情報を圧縮して最小限な形に再構成するのが好きなんですよね。なので矛盾しているようで意外と両立するのかもしれません。

佐藤 たしかに。そういったアウトプットが好きになったのはいつ頃からなのでしょうか?

とぼけがお ゲームボーイで制約を守って曲をつくり始めてからですね。それまでは音の取捨選択が出来なくてごちゃごちゃするのが嫌だったのですが、だからといって最小限にするのが好きだとも言えなかったです。

赤帯 チップチューンの利便性に、ソフトウェア単体で作業が完結できて、ミキシングも後からできるけれど別にしなくても構わないという点があるじゃないですか。

とぼけがお そうですね。 

赤帯 とぼけがおさんは楽曲制作にあたって、打ち込み時の作業とその後の作業(いわゆるポストプロセシング)のバランスはどのように取っていますか?

とぼけがお 曲をつくる段階で音の雰囲気や大きさはできるだけ調節して、マスタリングなどの作業はさっくり軽く、必要最低限でいいと思っています。iZotopeのAIでやってくれるマスタリングソフトに任せてもいいですよね。

赤帯 とぼけがおさんの楽曲からもその考えが伝わってきます。

とぼけがお やっぱり素材を活かす方法を選んでいきたいですね。マスタリングも依頼してみたいと思うのですが、以前依頼したら音がすごく小さかったことがあって。2016年のファースト・ミニ・アルバム『Picnic』なんですけど。だから自分でマスタリングし直してデラックス盤として再度リリースしました。それ以降、自分でやらないと納得いかないんです。そのほうがうまくいかなくても自分の力不足のせいだと思えるし次に活かせるので。

赤帯 《TBKgao》からリリースしたコンピレーション・アルバム『PURE MIDI Volume 1』(2022年)も既存の音色に重きを置いたものでしたね。

とぼけがお そうですね。きっかけは《TBKgao》にMLTEK氏が送ってくれたデモです。素のMIDIっぽいスカスカな音像でこんなに多彩な表現ができるんだ……!と感動し、もっとこういう曲をみんなにつくってもらいたいと思って、ジャンルをでっちあげてコンピレーション・アルバムをつくりました。

赤帯 音響による差異がつけられないことや、つくり変えられない既存の音色で楽曲を構築するなどの制限によって、かえって作者独自のつくり込みの仕方やアプローチの違いといった固有性が現れる面白さがあったと思います。参加者が多いコンピレーション・アルバムでしたが、アルバムをつくる前後で、“PURE MIDI”のコンセプトに変化はありましたか?

とぼけがお ポップでかわいい曲からお寺のリンみたいな音を流し続ける曲まで、本当に自由自在だなと思いました。“PURE MIDI”は音のペラペラさをどう思うかで好き嫌いがわかれるジャンルだと思うんです。知り合いは、他人がつくった音源モジュールのデモ音源を勝手に覗いて聴いているみたいだと言っていました。でも自分はそれがいいと思うんですよね。

hally 遥か昔、GM音源垂れ流し系と言われていたものですね。 

とぼけがお そうです。まさにそんな感じです。一昔前にGM音源に慣れ親しんだ人がつくってくれたら使いこなしが良い楽曲になるんじゃないかと思っています。

赤帯 過去の音楽が新たに面白く聴こえるようになる経緯や文脈は様々あると思うのですが、“PURE MIDI”のように、ある種普通に聴くと洗練されてないような音楽の聴き方が変わってきた印象はありますか?

とぼけがお GM音源垂れ流し的な聴き方をしていた人たちを通して新鮮に思えている気がします。Macintoshの頃のブラウザゲームでそういう音を聴いていたので、ノスタルジーな音が時間をかけて新鮮な印象になるという意味では聴き方が変わったと言えるかもしれないです。

hally いまこういうのないね!というタイミングで聴くと印象が変わりますよね。それはチップチューンも一度通ってきた道だと思います。

佐藤 “PURE MIDI”の楽曲で鳴っている音はエレクトーンの音に近いと思いました。

とぼけがお たしかに。エレクトーンのデモ音源は可能性がありますよね。

hally エレクトーンの畑からいい楽曲が出てきてほしいですね。昔のJOCのコンサート音源とか。

赤帯 ところで、とぼけがおさんの作品に歌が全面的に使われるようになってから、楽曲がオープンエンドになった印象があります。過去にインストで公開された曲のリアレンジ、シングル曲をアルバムに入れる過程でのリアレンジ、ライブ参加の際のヴァージョン違いなど。こうした活動を見渡すと、完成形としてパッケージされるのではなくて、機会に応じてとぼけがおさんの楽曲がどんどん変化しているように感じます。とぼけがおさんは楽曲の完成についてどんな視点を持っていますか?

とぼけがお たしかに活動を見越してフェードアウトで終わることが増えた実感があります。曲をつくってリアレンジしてもいいかなと思ったまま終わらせることもありますね。作り込まれすぎていると何回も聴けなくなってしまうのでラフさは大事だと思っています。

赤帯 そういうあり方は、商業的な音楽のアルバム制作と比べると制作から公開までの手順が少なく、スケッチみたいにどんどん作品を公開できるチップチューンのリリースの形態と親和性があるのかなと。

とぼけがお たしかにそうですね。スケッチのような感覚でつくっているのかもしれないです。


札幌での音楽活動

赤帯 とぼけがおさんはこれまで関東での活動期間もありつつ、主に札幌を拠点に活動を続けてきました。ゲームボーイでの作曲方法やチップチューンに関する情報を調べる過程で北海道のチップチューン・シーンについても知ることになったと思うのですが、当時はそのシーンをどんな目線で見てましたか?

とぼけがお 雲の上の存在だと思っていました。北海道にはゲームボーイで曲をつくっている人が多かったので、そういう方々が残してくれた情報をただただありがたく思っていましたね。関わりを持とうとはしていなかったです。

赤帯 当時、チップチューンのイベントに足を運んだことはなかったのでしょうか?

とぼけがお そのときは行こうと思わなかったですね。楽曲を家で聴ければ充分だし、作曲を教えてもらうのも申し訳ないなと。 

佐藤 なぜ北海道にはゲームボーイで曲をつくっていた人が多かったのか気になります。

hally 一言で言うと割と蓄積のある土壌なんです。日本で規模がそれなりに大きいチップチューンのシーンがあったのは、まず関西と東京でした。その後に出てきたシーンのうち、いちばん大きかったのが福岡で、それに次ぐのが北海道だったと思います。ただ、大阪、東京、京都、福岡の4つの都市が盛んにライブをやっていたのに対して、北海道はライブ・シーンとしてはそこまで活発ではなかったですね。おそらくイベントの集客が難しかったからだと思います。 

とぼけがお その理由は大いにありますね。 

hally だからおそらく2014年時点でイベントそのものが少なかったと思います。その中で比較的名前の知れた人たちも2014年までには2、3人いるかなと記憶してはいるのですが。 

とぼけがお そうですね。 うちのじゃんぷさんも北海道で活動していた気がします。そういった方々がどんどんチップチューンから離れた音楽性に変わってしまったのもあって、自分が活動を始めた頃にはチップチューンをつくる人たちは減っていた気がします。

佐藤 音楽性がチップチューンから離れて変わっていく方は多いんですか?

とぼけがお チップチューンは洗練されていくとアレンジが同じようになりやすいと思っているのですが、それを打破しようと新しい要素を追加していくうちにチップチューンの要素が減っていくのではないかと。

hally 実は2014年はチップチューン・シーン全体として見ると下り坂の時期だったんですよ。僕が書いた本が2012年を区切りとして終わっているのは、2012年という年にそれまでのレガシー的に続いてきたものが次々終わってしまったからです。そこから2年後だと、それまでにあったものがない状況からのスタートだったと思います。 

とぼけがお なるほど。TORIENAさんなどがその時期に盛り上がってきていたので、第二波的な空気はあったような気がしていたのですが。 

hally TORIENAちゃんとヒゲドライバーくんがすごく伸びていた時期だったので、この2人が今後を引っ張っていくイメージが僕にもありましたね。 

赤帯 〈TOBOX Release Party〉東京編で、とぼけがおさんはVJもDJもライブもされたじゃないですか。一方で札幌編では一歩引く形でDJだけだったのはなぜですか?

とぼけがお 東京のほうが自分を知ってる方が多いからです。インターネットをメインに活動していると母数的に札幌より東京のほうが自分を知っている方が多くなるんですよね。東京だったら自分の曲を流してもいいけど、札幌だと知っている人がいないんじゃないかという気がしちゃって。

赤帯 それはさすがにご謙遜が……。

とぼけがお 自分以外のアクトを目当てに来てくれる方が多そうだなと予想していました。それなら自分の曲よりも自分の好きな曲を聴いてもらうほうがいいからライブはしないことにしたんです。実際その予想は当たっていたと思います。

hally 地元ならいつでもできるから、自分のスタイルを出すのはあえて今回じゃなくてもと思うときはありますよね。 

とぼけがお そうですね。

佐藤 東京と札幌でお客さんの反応の違いはありましたか?

とぼけがお 東京のほうが歓声が上がる雰囲気で、札幌は落ち着いて聴いている人が多かった印象です。でも札幌編に道外から来てくださった方も結構多かったんですよ。

佐藤 そうだったんですね。札幌を拠点に活動していて難しいと感じることはありますか? 

とぼけがお やっぱり人が少ない。札幌って人口密度がワースト3位らしくて。もう少し賑やかになればいいなって思いますね。 あとはCDが少ないです。全くないわけではないのですがレア度が高いものを引き当てることは確率的に低くなるといいますか。

佐藤 なるほど。

とぼけがお でも人が少ない分、気軽に交流しやすい環境になっているのはいいところだと思います。都内だと先客がたくさんいて自分は話す隙がないな……と諦めることが多かったので。

佐藤 今回の札幌編にcvelさんも出演していましたが、それをきっかけにインターネット・カルチャーから派生したような札幌のクラブ・シーンとの関わりが活発になる可能性はありますか?

とぼけがお あると思います!ハナカミリユウさんやDOG NOISEさんの活動をきっかけにcvelさんを知り、そこからSound Lab molePLASTIC THEATERのパーティーにも遊びにいくようになったので積極的に交流を持っていきたいと思いますね。


メディアとしての「とぼけがお」

〈TOBOX Release Party〉札幌編や《TBKgao》のあり方、SNSの使い方など他者との関わりを振り返りながら、とぼけがおが持つ多くの側面と、それらを持ち合わせた存在としての「とぼけがお」について考えた。


〈TOBOX Release Party〉札幌編の振り返り

とぼけがお まず、札幌編の一番手はHaircut VOXの店長でもある、さうすまうぅんさんでした。チップチューンの音を意識したVaporwaveセットのDJで、このパーティーのオープニングにぴったりでしたね。tktc szkさんはアナログシンセを積み上げて“PURE MIDI”の音で演奏しながら歌ってらっしゃいました。“PURE MIDI”を見事に捉えた演奏を聴くことができてうれしかったです。豊平区民さんはVaporwaveで、チップチューンではなかったのですが、札幌の街並みや動物をiphoneで撮った映像作品をバックにそのBGMをつくっていくような演奏でした。

赤帯 今回の豊平区民さんは、エディターとしての側面が強く出ていたように感じました。iPhoneで撮影した映像には環境音も入っていて、フィールド・レコーディング的なアプローチもありましたね。普段のビートメイキングとは離れた作品だったのですが、音楽とは別に素材を自分なりに編集したいという豊平区民さんのモチベーションが表れていたのかなと。 

とぼけがお そうですね。その次のシロシビンズさんはタブラを演奏する方です。タブラを叩きながらソノシートの教則本の音声や効果をスクラッチしてトラックメイキングをしていました。ノイズ作品を混ぜたような作品もやってくれて面白かったです。トラック自体に矩形波的な音が多少混ざっていたことも面白かったですね。cvelさんは、いまはエクスペリメンタルっぽいですけど、以前はフューチャー・ベースをやっていたと聞いたので矩形波のフィーリングがあるんじゃないかと思い声をかけました。アンビエント的な音とチップチューン的な音の織り交ぜ方が上手で面白かったです。

赤帯 梅本佑利さんはどうでしたか? 

とぼけがお 梅本さんもすごかったですよね。『萌え²少女』という、声優さんに録ってもらった萌えアニメ的なセリフ素材をグリッチさせた作品と合わせてチェロを弾いたり、チップチューンのトラックに合わせてチェロを弾いたり。その2つなどをうまく編集して融合させたライブセットのような実験的な取り組みでしたね。

赤帯 次は嶽本サライさんですね。 

とぼけがお VRChatをしている3DのアバターでDJをする方です。でも実は昔からチップチューンをディグっている、自分のディグの師匠のような方です。サライさんの中の人が紹介していたチップチューンや歴史的情報を逃さず聴いたり見たりして吸収させてもらっていました。今回は昔の曲も現在の曲も織り交ぜたチップチューンのDJセットや、『TOBOX』に収録されている曲のリミックスをつくってDJをしてくれました。Ca5さんはチップチューンとブレイクコアを融合したチップブレイクの大御所なのでお呼びしたくて。チップチューンの音とブレイクビーツをギミックでうまく分解したうえでブレイクビーツをつくっていくような演奏でしたね。

赤帯 Ca5さんはエンジニアでもあるのでAbletonなどのDAWとともに、Max/MSPプログラムも用いて、複数のコントローラーを有機的に操作しているセットでしたね。 

とぼけがお そうですね。そして赤帯さんは『TOBOX』がボーカル曲だけで構成されていることを汲んで、声をテーマに合成音声のコモドール64の曲をメインにした壮大なDJでした。

赤帯 ありがとうございます。

とぼけがお うみのひやけさんは6年振りのライブだと言っていました。久々に観れてよかったですよね。ゲームボーイ2台でVGMリミックスをやってくれました。

赤帯 6年振りなんですね。 

とぼけがお そうらしいです。それで、僕はとにかく自分の好きなチップチューンと、チップチューンから派生したデジタルフュージョンという矩形波っぽい音と生楽器が合わさった音楽、ゲーム音楽にインスパイアされた楽曲などをごちゃ混ぜにして好き放題やりました。 ラストのhallyさんはポケットカメラのリミックスを序盤に流していて、自分はポケットカメラが大好きなのでうれしかったです。 

hally 当時聴いてもびっくりしましたからね。 

とぼけがお そこからのFM音源系もよかったです。そもそも今回のリリースパーティーはチップチューンというより、矩形波やパルス波のピコピコした音と、FM音源の金属音的でメガドラチックな音、エフェクトかかってないようなmidiのチープな音、この3つの音をイベントのテーマにしていました。 そういう意味ではチップチューンのイベントではなかったのかもしれないですね。


ディガーでありキュレーターでありリスナーである

赤帯 それがすごく面白いなと思いました。チップチューンという一つのジャンルにフォーカスするのではなくて、とぼけがおさん自身の音楽的な振れ幅がそのままパーティーの人選に繋がっていたのは注目すべきポイントだと思います。 

とぼけがお そうかもしれないですね。

赤帯 一つのコミュニティだけにフォーカスするのではなく、とぼけがおさんがディガーとして持っている幅広い関心が遺憾なく発揮されたのが、今回の〈TOBOX Release Party〉だと思います。チップチューンに関連する人たちを呼んでイベントを開こうとしたときに、とぼけがおさん以外では絶対に集まらないようなメンツだったと思うんです。とぼけがおさんのキュレーターとしての長所が光っていました。

佐藤 とぼけがおさんを中心に、矩形波やFM音源、“PURE MIDI”などの音に着目している、または着目することのできる人たちが集まって重なって、その広がりが可視化されたみたいです。

とぼけがお まさにそうですね。 各出演者さんたちの音楽性のぎりぎり繋がっているところを逃さず繋ぎ止めて合体させたようなイベントだったんじゃないかと思います。

hally とぼけがおさんという人物がいなかったらよくわかんないイベントだったでしょうね。とぼけがおさんの興味の広がりとしてのみ理解が可能だったといいますか。

とぼけがお そうですね。僕が存在していなかったらバラバラになってしまうイベントだったかもしれないです、共通点がなくなってしまうので。 

hally なのでとぼけがおさんのイベントとして押し出していたのがわかりやすくてよかったと思います。

とぼけがお そうですね。リリースパーティーと言いつつ自分が演奏やDJを聴きたいと思う人をただ呼んだだけになっていたのかもしれないです。でも実はそもそもチップチューンの活動をはじめたとき、曲をつくろうとは思いつつもメインは曲を探すことにしようと思ってたんです。とにかくゲームボーイをやっていた頃の体験を取り戻せるような音楽、つまりチップチューンやその周辺の音楽、それを探して、求めているものがなければ自分でつくろうと思っていました。

佐藤 曲をつくったってことは、これだ!と思う曲がなかったということですか? 

とぼけがお そうですね。やっぱり自分でつくった曲がいちばん自分の好みをわかっていますね。


技術をオープンに

赤帯 とぼけがおさんは技術を習得するだけではなくて、たとえば誰でも読み込み/編集が可能なLSDjのワークファイルを公開したり、YouTubeで作業の配信をしたり、あるいはLSDj Tipsをツイートをしたりと、楽曲の制作プロセスをオープンにしている印象があります。こういった一連の活動にはどんな理由や意図があるのでしょうか?

とぼけがお 持っている技術をオープンにしたほうがみんな楽につくれるじゃないですか。苦しんでつくる必要はないので、チップチューンをつくる人たちがいい方向に進んでいってほしいという気持ちで公開してきました。それに、自分の技術を公開することで作曲に挑戦できたり作曲の悩みが解決する人もいると思うので、いい作品が生まれやすい環境ができると思っています。

佐藤 積極的に情報を公開して共有するのは、とぼけがおさん自身がゲームボーイで作曲するにあたって先人たちが残した情報に助けられてきたことも影響しているのでしょうか?

とぼけがお それはありますね。僕には音楽制作面での師匠はいないので尚更そう思うところがあります。

hally チップチューンをつくる人たちが増えてほしい気持ちはありますか?

とぼけがお そうとも言えるかもしれないですけど、どちらかと言うと作品が増えることで自分の好きな曲が増えてほしいという、リスナーとしての思いのほうが大きいと思います。なんでも公開するのは美学がないと言われたこともありますけど。

赤帯 チップチューンとそれに関連するトラッカー文化において、個々人のアーティスト意識の芽生えと時代による流通形態の変化は連動していますよね。生のデータ配布からMP3の配布へ、CD販売、そして現在主流のSoundCloud、Bandcampなど配信に移っていくにつれて、手の内を見せないようにしたり非公開にする人も増えていった印象があります。

hally LSDjは伝統的なトラッカーとは違って公開〜共有という文化に全く馴染まなかったんです。セーブデータをやり取りすれば公開はできるのに、そういう文化が初期から全然育ちませんでした。なのでLSDjユーザーはそういった意味では最初から閉鎖してるイメージがあります。 

佐藤 情報交換がしにくい媒体なんですか?

hally 掲示板での情報交換はすごく盛んなのですがセーブデータを渡し合うことはしないということですね。チップチューン・シーン全体ではどんどん公開するほうが標準的ではあるのですが。

とぼけがお そうですよね。自分はそっちのほうがいいなと思って公開していました。

赤帯 オープンにして自分の好きな曲が増えるほうがいいと。 

とぼけがお そうですね。公開に否定的な態度もわからなくはないんです。同じ音ばかりになってつまらなくなるとか。でもその中からいい曲が出てくればそれで最高なので。技術的に未熟な曲が多い状態でつまらないものの中からいいものを見つけるよりも、技術的に熟練した曲で溢れている中からいいものを見つけるほうが探しやすいじゃないですか。 

赤帯 LSDjからM8 Trackerに作曲手段が変わっても、その考えは変わっていないですよね。 

とぼけがお そうです。むしろM8 Trackerのほうが情報共有をどんどんするので居心地がいいですね。海外のユーザーが多いので技術を公開することに抵抗がない人も多いですし。

hally 本来のトラッカー文化により近いですよね。 

とぼけがお 自分がデータを公開したら開発者の人からプリセットに入れてもいい?という連絡が来て、いまプリセットに自分の音色が入っているんですよ。本当に最高だなと思って。 M8 Trackerを開発した人も初期からのLSDjユーザーで結構有名な人だったので、つくってくれて本当にありがたいなと思っています。そういった理由もあって LSDjから離れぎみになってしまっていますね。 


《TBKgao》ではアーティストのサポートを

赤帯 2019年にレーベル《TBKgao》を立ち上げて現在に至るまで、とぼけがおさんの作品は基本的に《TBKgao》から出ていますね。レーベル創設の経緯や動機についてお聞きしたいです。最近のツイートでも「他人に任せてブラックボックスをつくりたくない」とおっしゃっていた様子を見て、レーベルの立ち上げにはかなり強い意志があったように感じました。

とぼけがお それはやっぱり自分が最初のミニアルバム『Picnic』を出した《Cheapbeats》が停止してしまって曲の管理がよくわからなくなるという経験があったからですね。すごく面倒くさいんです、そういうの。あとは『渋​谷​系​チ​ッ​プ​チ​ュ​ー​ン​カ​バ​ー​コ​ン​ピ​レ​ー​シ​ョ​ン』でも、任されていたのが監修だけだったので人を集めて協力することに徹していたら、曲の著作権など管理のほうが疎かになって、生じた利益は返金することになったり関係性がごちゃごちゃしてしまったりと大変で。とにかく自分で全部管理したいと思ってレーベルを立ち上げました。そうすればなにかあっても自分の責任として納得できるので。

赤帯 現在、exileFakerさん、MLTEKさん、ヤギシロさん、Rei8bitさんなどもレーベルメイトになっているじゃないですか。レーベルに招き入れる際の具体的な基準はあるのでしょうか?

とぼけがお その作品を自分が支援したいと思うかどうかですね。レーベルという形を借りた、自分が支援したい作品を支援する事業と言ったほうがわかりやすいかもしれません。普通のレーベルは手数料をもらって作品を管理しますが自分はそういうことはしないです。

佐藤 支援というと具体的にはどんなことをするのでしょうか?

とぼけがお たとえばアートワークの制作で合いそうなアーティストがいたら紹介したり、アートワーク代も自分が払ったりしています。あとは自分のBandcampアカウントでクロスフェード・デモを出して宣伝したり。儲けはいらないので支援したいアーティストがいたらとにかく誘っています。 

hally ネットレーベルの原初の姿に戻っていますね。 

とぼけがお そうなんですか?

hally 昔はネットレーベルで利益の得ようがなかったので。

とぼけがお なるほど。利益を変に得ようとすると揉めることがあるとわかったので、自分はあくまで支援団体としてレーベルを立ちあげたいと思っていました。それに、自分のレーベルでやっているほうがちゃんとレスポンスが返ってくるので作品をつくっている実感がありますね。『Picnic』は数としてはいちばん売れたアルバムだったんですけど、結局《Cheapbeats》の力で得たものだったと思っています。

hally レーベルの運営に関する中長期的な目標はないんですか?

とぼけがお ないと言えばないのですが、レーベルがあることで自分の好きなアーティストが声をかけてくれるので、そういったアーティストのみなさんが集まってコレクティヴになればいいなとは思っています。


とぼけがお系

佐藤 《TBKgao》でのアーティストの支援だけではなく、普段からTwitterでさまざまな情報をリツイートされていますが、Twitterを拠点に活動や交流を続けていらっしゃるのでしょうか?

とぼけがお そうですね。Twitterがいちばん自分に馴染みますし雑多なのが合っていますね。映像も曲も流せるしスペースで生配信もできるし。

佐藤 レーベルで支援したいアーティストもTwitterで探すことが多いですか?

とぼけがお そうですね。Twitterがほとんどです。 あとはSoundCloudとDiscordですかね。DiscordはTwitter拡張版じゃないですけど、Twitterで知り合ったいろんな人たちのルームに入っています。

佐藤 チップチューンをつくっている方はTwitter拠点で活動している場合が多いんですか? 

hally 拠点というほどの拠点がそもそもあるのか? とは思います。

とぼけがお そうですね。現状だと拠点がないので、自分が情報を集めてメディアみたいにすることで拠点になったらいいなという気持ちはあります。

赤帯 YouTube上にしか曲をアップロードしない人もいますけど、とぼけがおさんはそういう人たちまでフォローしてTwitterで紹介していますよね。

hally とぼけがおさんはハブ的な役割として大きな存在だと思います。チップチューンのニュースや情報の発信拠点は過去にはいっぱいあったんですけど、次々と潰れるか沈黙するか、もしくは方向性が変わって、気がついたらとぼけがおさんと他いくつかしか残ってない状況です。

とぼけがお さざむしさんでしたっけ?《名称未設定》もすごくよかったブログなのになくなってしまいましたね。

hally 僕自身もそうやって《VORC》を止めてしまった人間だから他人事ではないんですけどね。 

とぼけがお 復活はないんですか? 

hally いまやっていることで手一杯なんです。でも《CHIP UNION》は《VORC》の後継みたいになることをある程度は想定した動きだったので、もう少しコミットしたかったですね。でも現状を見るに、とぼけがおさんが動いていてくれてたら安心かなというのは正直あります。 

とぼけがお サイトやブログよりもSNSでメディア化するのが現状には合っているのかもしれないですね。

hally ただ、とぼけがおさんが何らかの事情で動けなくなることも想定しておく必要はあると思います。もう少し情報収集系のAIが使いやすくなってきたら、とぼけがおさんが拾いそうな曲を集めてもらうこともできるようになる気がしますけどね。 

とぼけがお ちょっとやってみたいですね。最終的には不老不死のアカウントになろうかな。 

hally さっき言ったようにチップチューンに関してはニュースサイトにしてもレーベルにしても立ち上がっては消えをあまりにも繰り返し過ぎてしまったと思うので、そういう運営の仕方は考えてみてもいいのかなと実はだいぶ前から思っています。

赤帯 これまで話してきたように、とぼけがおさん自身がSNSを始めとしたメディアの使い手である以上に、とぼけがおという一つのメディアになっていると思うんですよ。ニュースサイトの発信とは違った形で、とぼけがおさんが媒介者となって、音楽情報、音楽作品、映像作品など何か面白いものを求めて常に受信しつつ発信してくれるという大きな信頼をこれまでの活動を経て得てきていると思います。 

とぼけがお そういった中で結構言われるのが「リツイーター」という名称で。リツイートで情報を発信したり集めたりする人を指すらしいです。

佐藤 いろんなものの結節点をつくる立ち位置にいるんですね。

hally ずっと続けていたら、“とぼけがお系”みたいなジャンルができるかもしれない、というより既にできているかもしれないですね。

佐藤 “とぼけがお系”が確立するとしたら、hallyさんや赤帯さんは、どんなジャンルとして説明ができると思いますか? とぼけがおさんは、“とぼけがお系”がどんなジャンルとして確立されたらうれしく思いますか?

hally チップチューンを軸にして同心円を描くようなものだと思います。

赤帯 とぼけがおさんの偉大さの一つは、チップチューンをポピュラー音楽やVGMの歴史と橋渡ししながら、ある種のフォークソングのようにその都度新鮮な、ささやかでもある心情を表現する音楽形式に変異させ、変異を実験とともに増やし続けていることですね。それこそ『Mutations(変異)』という名のアルバムもあるベックに近しいことを、広義/狭義のチップチューン・ツールをもって実践している。ジャンルとしてのとぼけがお系を分析するとしたら、ベックの軌跡と重ね合わせると面白いのではないでしょうか。

とぼけがお 僕は“とぼけがお系”が分からなくなるくらいまで多種多様な自分の趣味が反映された音楽に分岐していってほしいと思います!ジャンルとして確立してしまうと似たような曲ばかりになってしまって発展性が生まれにくいし、つまらなく感じますからね。

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