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飛田新地に体験入店に行った私の話⑦

●飛田新地の専門用語

お客さんが1人上がってひと安心です。
飛田ではボウズの状態から1人上がることを”元がつく”といいます。おばちゃんが「元つけてもろてよかったなぁ」と言ったり女の子が「元つかへん…」と落ち込んだりします。

あとは、”元茶”と言って、験担ぎに飲み物を出前で頼んだりします。おばちゃんによっては、店全体の上がりの悪い日には自腹で女の子たちに近所の喫茶店からジュースの出前をとって空気を変えてくれたりします。元茶という名前ですがお茶とは限らず、最近ではむしろジュースのことが多いです。

嫌な客が来た後には玄関に塩を撒きますし、飛田のこういうところは古くからの習慣を感じられます。(塩に関しては、玄関で値引き交渉されたり、立ち止まって質問した人に上がってもらえなかったり、ちょっと嫌なことがあるだけでおばちゃんがザッザッと撒くので毎日山ほど撒いています。)

これらの古風なおまじないで本当に上がり始めることがあるので馬鹿にできないなと思います。
焦りや疲れが顔に出てしまっているから甘い飲み物で気分転換させたり、イラッとした気持ちを塩を撒くことで切り替えているんでしょうね。玄関で実物の女の子を見せる飛田ならではだと思います。


とにかく元をつけてもらった私はほっとしました。しかしこれはスタートに過ぎません。残り時間で少しでも多く稼いで帰らないと。
コタツのある待機部屋に戻って急いで化粧を直します。そしてまた5分間玄関に座る回遊魚の流れに戻ります。

そこからは、生意気ながらぽんぽん上がりました。おそらく0人だったらどうしようという不安がなくなったことで、リラックスして笑えたんだと思います。

途中、玄関でおばちゃんに「今何本か分かるか?」と聞かれて「何本ってなんですか…?」と聞くと独特の数え方を教わりました。

飛田では売上10,000円を”一本”と数えます。ただしこれには税(端数の1,000円をこう呼ぶ)は含みません。
つまり、11,000円1人+21,000円1 人を上げていたらその子は「3本」です。16,000円だけは1.5本となり小数第一位がつきます。

キリがいいのでまずは10本を目標にする子が多いです。10本あげれば50,000円持って帰れます。次の目標は20本で、20いけば満足な子が多いのではないかと思います。(私はお正月とか繁忙期にしか20いったことないです…。)
お店によっては20本や30本いくとお祝い的に寸志が出ます。大抵10,000円です。わーい。

ちなみに飛田以外では客1人を1本と数えることが多いです。てっきりち◯ぽの数かと思っていましたが、そうではなく昔遊女が線香で時間を計っていたことの名残だと聞きました。線香の本数だったんですね。


端々に歴史を感じつつ、今何本かなとお客さんを順に思い出していきます…が、思い出せない。自分がたった数時間前にセッ◯スした男性のことが思い出せない。

こんなこと人生で初めてです。しかし(眼鏡の人の後に太った人で…あれ?15分だったのは眼鏡?んん?)と考えている間にも次が上がるので記憶は混線の一方です。

ひとりひとりと話しているときは楽しいんですが、時間が短くて数が多いので、お見合いパーティーの一言あいさつみたいな感じで記憶を定着させる時間がなくて、私の脳みそでは個性的な人しか思い出せません。

これでマズいポイントは2つあります。

ひとつは、帰りに渡されるお金が正しいか確認できないことです。おばちゃんはたまに金額を間違えてくることがあります。そんなとき自分で間違いを指摘しないと正しいお給料がもらえません。

ふたつめは、お客さんがリピートしてくれたときに気づけないのでガッカリさせてしまうことです。これでは3度目はありません。
(ちなみにご来店1回目は一見さん、2回目は裏壁さん、3回目は馴染みさんと呼ばれます。落語や歌舞伎でも遊郭に2回目にいくことを”裏を返す”と言ったりしますよね。)

結局、化粧直しの時にメモをすることにしました。とはいえ、早く玄関に座らないともったいないのでゆっくり思い出して書く時間はありません。金額と一言メモだけなので、翌日にはなんかよくわからないメモになることも多いです。タッパーとか。

とかくこの日はここからぽんぽん上がり、私は上機嫌でした。しかし、このぽんぽんには裏があり、大変な日々の序章となるのでした。

⑧につづく

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