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夫の主夫デイズ、妻のひとりごと

ここ半月ほど、夫に主夫業をお任せしている。

昨年12月に転職先が決まり、現在有給消化中の夫は、私より料理が圧倒的に上手く、何より家事を楽しんでいる様子。もともと凝り性で、こだわったらとことんこだわりぬく性格というのもあるけれど、たとえば娘に「ハンバーグがいい」と言われれば、夕方に買い出しに行って、せっせと玉ねぎ刻んで挽肉こねて、愛読する有名定食屋の料理本を戸棚から引っ張り出してきて、熱心に目を通しながら、ものすごい集中力で料理を仕上げていく。私だったら平日に手作りハンバーグなんて絶対作らない。すでに成形済みの冷凍ハンバーグを使っちゃうよね。(多分、時間があってもね…ヒソヒソ)

そして、毎日お昼少し前になると、仕事中の私に「今日はシャケ焼くだけでいい?」とか「蕎麦でいいか?」と声をかけてくる。「私なんて毎日残りものをかき集めて食べてるし、パンかじるでも全然ええよ」、と返す。でも夫がパンかじるとか、絶対ありえないもんな。夫はそういういい加減なタイプじゃない、そうだ、そうだった。

わりと物事をめんどくさがらない人というか、面倒だからテキトーでいいよ、みたいなことがあんまりないというか。私がそのタイプだから、もうテキトーでいいよ、疲れてるし、時間ないし、みたいなことが口癖なんだけど、夫はあまり妥協しないのだ。食べることをテキトーにするのが嫌いで、まあ食べること以外も「こう」と決めたら「こう」を貫く。私は「なんでもええよ」タイプなので、任せたら「喜んで!」と居酒屋の元気な店員さんごとく、夫は一人でぐいぐいと進めていく。

確か出会って2回目のデートで映画館に行ったときのこと。映画が始まる前に「これ、一緒に食べようよ。おいしいよ」とおもむろに八天堂のクリームパンを渡されたことがあった。(持ち込み禁止だぞ!)「へ……! なになに!」と戸惑いながら受け取ると、「何飲む? 俺、飲み物買ってくるわ」と言われ、私が「コーヒー」と答えるやいなや、そそくさと席を立って買い出しに行ってしまった。一人残され、クリームパンをそっとほおばる私(笑)。その出来事は「映画館クリームパン事件」(命名センス……!)として、私の友人に語り継がれることになる。

まあ、何が言いたいかって言うと、夫は自分がいいと思ったこととか、こうと思ったことを他人の顔色などうかがうことなく、ぐいぐいやれちゃったり、他人の期待など一切無視して自分のやりたいことをやりたいようにやったり。めんどくせーと言いながらも、物事をやりきるところとか。そういうところを見て、「この人、すげー」と思ったんだった。(同時に「この人、やべー」とも思った)

とはいえ、家事は毎日のことだから「今日はご飯作りたくない」とかなるし、日々の掃除は私が担当してるし、家事をすべて担うなんてことは難しい様子。それでも、誰かに頼っていい状況って、こんなに心強いもんなんだな。

私はなんだか元気が出てきて、狭いリビングでスマホのYouTubeを観ながら「ウェーイ!」なノリでダンスエクササイズにはげむ。そのすぐ後ろで真顔でスマホをいじる夫。最近どハマりした犬夜叉のアニメに熱中してる娘。バラバラ。でもなんだか家族って感じがする。

いよいよ明日、夫の主夫生活は終わりを告げる。

夫にここ半月の感想をたずねたら、「俺は料理が好きだから主夫が向いてるかもしれない、でも仕事しながらは無理だな」。そりゃそうだよね。

仕事をやめたとき、「プレッシャーで毎朝吐きそうだった」と話していた夫。弱さを一切見せようとしない彼に、私はどこかはがゆさを感じていたんだよな。

優しくて面倒見のいいところが、おせっかいで強引な人間にしか見えなくなり、彼の信念の強さが、柔軟性の欠如、人の話が聞けない頑なさに映って嫌気がさすこともあった。お互いに強くあろうとしすぎて、頼れなかったのだ。でも同時に、相手に頼って欲しかったんだよね。家事・子育てを担ってくれるとか、お金を稼いで家計を支えてくれるとか、そういうのとは別の存在として。

夫婦って難しい。
でも2月からはリニューアルオープンなのだ。
懲りずに喧嘩はするであろうが。

うまくいくことって、そんなにないんだけどね。
でも、こうやって少しいいことがあると、すごくうれしくなるもんだから、
憎んだり、ゆるしたり、ゆるされたり、手を取り合って喜んだり。
夫婦って、忙しいねって思う。













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