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居宅の基本報酬引き合いに “コスパ“で批判展開 財務省・・・という記事の紹介です。

月曜日から財務省がらみのネタはやりたくないなぁ・・・なんて思ってましたが、次の報酬改定でのポイントになりそうな内容だったので紹介します。

財務省はこのほど発表した社会保障改革に関する提言で、要介護度が高くなるに連れて介護報酬が上がる現行の仕組みを問題視し、自立度や要介護度の維持・改善といった「アウトカム評価」を重視した枠組みに転換する必要性を示した。

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要介護度が高くなるにつれて介護報酬があがる仕組みを問題視する意味がわかりません。これが20年前の介護保険制度が始まる前の議論の段階ならまだわかりますけど、もう20年も運用してきた根幹といえる仕組みの部分を今更問題視するのはどうなんだろうか・・・と。

いろいろな意見はあります。
認知症があるケースだと、身体機能がまだしっかりしている要介護1とか2とかの方が介護負担が大きいという意見もありますし、要介護3以上となると各生活動作の中で身体介護が必要になってきますので介護負担が増大します。

実際、認知症の方で行動力がある方の対応は本当に大変ですし、長時間1人の職員がマンツーマンで対応しないとならないケースもあり、特に精神的な負担は大きいように経験上思います。

一方で、全介助で寝たきりの方の介助は身体介護技術が必要だったり中には軽い・重い対象の方もおられますし、環境面が整っていないケースもあったりして職員は身体的肉体的な負担が大きくなるように思います。

中には介護に抵抗される方もおられますので、要介護1だから楽、5だから大変、という単純なものではないような気がします。

ですので、この問題は要介護の区分がどうだからどうだ、という単純なものではないんではなかろうかと思います。

その上で、自立支援や要介護状態の維持・改善という介護保険法の理念・目的を実現したとしても、そこへの評価がこれまでほとんど重要視されてこなかった経過があるので、そういう部分では財務省の言っている事については評価できると思いますし、数年前からアウトカム評価なんていうキーワードは出てきていましたので、いよいよ実際にそういう流れに応じた報酬形態になっていきそうな気がします。

今後は、どれだけ自立支援に取り組めたか、介護状態の維持や改善に効果がある取り組みを行ったか、が評価の対象となる可能性が高く、そうなった場合には、やはり”今までどおり”な現場では生き残れない状況になると思います。

介護保険法は、介護サービス提供の趣旨として、要介護者の「尊厳の保持」と「自立支援」を掲げているが、同省は「現在の介護報酬は要介護度が進むにつれて報酬が高くなる一方、自立支援・重度化防止に係る取り組みへの評価が不十分だ」と指摘した。

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財務省はあえて尊厳の保持をスルーして自立支援・重度化防止への取り組みのみ評価が不十分としたのでしょうか。
自立支援の中に尊厳の保持が含まれていると思いたいですが、個人的には尊厳の保持も大いに評価対象にしてもらいたいですね。
特に、今後虐待を防止していきたいのであれば評価していかない限り減る事はないだろうと思います。

同省が引き合いに出したのが、ケアマネジメントに関する基本報酬だった。

現行では、要支援1・2(介護予防支援費)は月438単位であるのに対し、要介護3~5(居宅介護支援費Iの場合)は月1398単位と、両者の間には3.2倍の開きがある。一方、厚生労働省の調査によると、利用者1人あたりの1カ月の労働時間は、要支援1は89.2分、要介護3は114.8分だった。

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ケアマネの基本報酬にまでケチをつけるとは思ってませんでしたのでかなり驚きました。

ケアマネ事業の収益は、この基本報酬で決まっていて、ただでさえケアマネ事業所の経営は厳しい状況がある中で、処遇改善も進まず、なんなら次の改正で地域包括が担当している予防プランを担当させようなんて計画もある中で、ケアマネ資格の更新研修などの自己負担があまりに大きくてケアマネ自体がやる気をなくして退職していっているような状況もあるように見聞きしている状況ですので、まさか基本報酬をイジってくるとは想定すらしていませんでした。

要支援1・2の報酬が低いのは、単純に書類作成等の手間が要介護のプランよりも簡略化されたものだから、という理解をしていましたけど・・・。

しかし、厚労省の調査による労働時間を見ると、財務省が指摘するように基本報酬と手間を比較すると、労働と報酬の差が比例していないように見えますね。

まぁ、だからだと思いますけど、要支援のプランの委託を受けるより、要介護のプランを増やした方が経営的によいと考えるのでしょうね。
実際、更新研修とか様々な研修や地域ケア会議や運営指導等でケアプランはああしろこうしろと指摘されてやる事が増えに増えている状況で、さらに次の改正では医療的な知識や情報とかまで必要になってくるような感じの流れですので、厚労省の調査した労働時間についてはもっと増える気がしますね。

そして、ちなみに僕なりに厚労省のデータを見て考えてみたんですけど。

要介護3利用者1人あたり月労働時間=114.8分
⇒ これってだいたい1人あたり2時間くらいですよね。

要支援1利用者1人あたり月労働時間=89.2分
⇒ これってだいたい1人あたり1時間半くらいですよね。

月単価14000円だとして、ケアマネ一人の総支給額を35万円とすると、ちょうど25件になる計算です。
ケアマネ事業所を運営する上で、それだけでは当然成り立ちませんから、やはり+10件くらいの35件程度はケアマネ一人当たりが担当すべきでしょう。

ですので、35件×2時間=70時間・・・月のうち70時間は利用者に対する労働時間になっているという事になります。
この利用者に対する労働時間ですけど、プラン作成とか書類関係だけなのか、モニタリング訪問等の移動時間も含めた時間なのかは不明ですし、担当者会議やそのための調整にかかった時間が含まれているかどうかも不明ですが、月22日間労働日数があるとして、8時間労働だと176時間ですから、残された時間って106時間という事になります。

106時間というと、8時間労働で計算すると13.25日分になります。
月の勤務日数の約半分は、利用者に関わる労働で終わっているという事になります。

個人的な想像ですが、厚労省が調査した労働時間は、プラン作成とか書類業務といった事務所でPCを前にしてする作業のみをカウントしているような気がします。

35件担当したとして、毎月モニタリング訪問が必要なはずなので、毎日1件~2件程度は訪問していると思います。少なく見積もっても移動時間で往復1時間程度は平均したらかかってるんじゃないでしょうか。
だとすると、22日ありますので22時間は移動時間で計算してもよさそうです。その時間、入ってないんじゃないかなぁ・・・それと担当者会議の時間とかも。

・・・あ、もしかしてコロナ禍の特例で担当者会議とか必要最低限の照会とかでもいいよってなっている状態での労働時間ならもしかしたらそうかもしれませんが、だったらその特例がコロナが5類になる事でなくなったわけですので、検証するデータとしては正確性を欠くかもしれません。

その他、地域ケア会議とか電話での相談であったり、役場での手続きなどもろもろの業務もありますし、そんな余裕があるようにも思えないんですよね。

それに、コンプライアンス上の点検でケアプランを相互点検して書類に不備がないか等を定期的にチェックしている事業所もありますし、事例検討会などを行いながら質を向上させる努力をしている事業所だってありますので、その準備や開催にかかる時間も馬鹿にはできないでしょう。

そして給付管理も大変です。
数字に間違いがあってはいろいろと大変な事になる作業なので、月初の7日間程度はこの確認とかチェック作業でほとんど時間がとれないはずです。

だとすると、やはり余裕がある業務とは思えませんし、そもそも35件くらいで済んでいるケアマネがどの程度いるか・・・ですよね。

60件(予防も含め)とか担当しているケースは結構耳にします。

ケアマネの処遇改善も課題とされる中で、これだけの業務をこの程度の報酬で行っている事に、なぜもっと驚かないのか。

気になるのは予防と介護の報酬の差だけですか?
あんたら数字に強いはずだからこんな数字見たら僕が検証するよりもっと早く気付いているけどそこは知らんフリですかそうですか!
・・・と何時間でも問い詰めたい気分です。

ちなみに、一般的に経営目線でみると人件費率は40~60%と言われています(サービス業)。

一番高い60%の人件費率で考えてみましょう。

35件の介護だけ担当しているケアマネという前提で考えると、1件あたり14000円として、490000円の収入となります。

この収入に対して60%の人件費がケアマネの給与になるとすると294000円です。そう、30万円と切っちゃうわけですよ。これだと手取りで24~25万円くらいでしょうか。

このあたりの事もよく考えて財務省はケアマネの報酬に関する意見も見直してほしいですね。

財務省の目的が、ケアマネをなくして介護保険制度を根幹から作り直す方針でいるのであれば文句はありませんけど、この時期にケアマネの基本報酬にケチをつけるとなるとケアマネを本気で潰しにきているようにしか見えません。

財務省は、要介護3と要支援1の労働時間の違いが「1.3倍程度に過ぎない」とし、いわば“コスパ”の視点で批判を展開した。

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これは、それだけ要支援の業務量が想定していた以上に多い、という解釈でしかないと思いますよ。おそらくローカルルールなどでやらなくていい仕事が発生しているのと、要介護認定がおかしな事になっているからだと思います。

このケアマネの報酬が定められた頃と、現在の認定でどうかんがえても当時は要介護だった人が今では要支援、という状況はあります。

根本的な原因はそこですので、単に労働時間に差がないという事ではなく、介護認定の判定の方法が渋くなって昔なら要介護だった人が今では要支援になっているから要支援の労働時間が増えている、という事でしかないはずです。

厚労省や業界団体は、こういう事をちゃんとはっきりモノ申してほしいですね。
こんな上っ面しか見てない財務省の言いなりになってはいけません。

さらに同省は、特定事業所加算(I)の算定要件の中に、重度者要件(利用者に占める要介護3~5の割合が4割以上)があることも例に挙げ、「要介護3~5の評価が手厚い」とも指摘した。

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これって厚労省が怒っていいレベルの難癖なんじゃないかと思いました。

これからは重度対応は専門家へ、そうでない軽度の対応は元気なアクティブシニアや地域住民へ・・・という地域包括ケアへの流れの中の評価基準のはずです。

要介護3以上が重度で、要介護2以下が軽度、という区分け自体は僕は賛成していませんが、そういう根拠があって取り組んできた内容について外野からとやかく言われて腹が立たないという事であれば、この施策についてはそこまで本気でなかったという事になるので、これではいはい財務省の言う通りにします、なんて対応をするくらいなら要介護3以上は重度などという考え方自体を取りやめて頂きたいと思います。

最近の記事が不平不満や文句ばっかりになってきているような気がして申し訳ない感じです・・・。

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