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第7回 これだけ!余因子展開で行列式を求めよう(線形代数)

 前回は行列式の基本的な計算方法について解説しました。

 今回は行列式の余因子展開を使った求め方を学びましょう。

1.余因子展開とは

 前回の復習です。3次行列の行列式はどう計算できますか?

$$
\begin{vmatrix}
a_{11}&a_{12}&a_{13}\\
a_{21}&a_{22}&a_{23}\\
a_{31}&a_{32}&a_{33}
\end{vmatrix}
=a_{11}a_{22}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}-a_{13}a_{22}a_{31}-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}
$$

このようにサラスの公式によって与えられるのでしたね。
ここで右辺を1行目の要素で整理してみましょう。

$$
右辺=a_{11}(a_{22}a_{33}-a_{23}a_{32})+a_{12}(a_{23}a_{31}-a_{21}a_{33})+a_{13}(a_{21}a_{32}-a_{22}a_{31})
$$

これは行列式を使って次のように表せます。

$$
右辺=a_{11}
\begin{vmatrix}
a_{22}&a_{23}\\
a_{32}&a_{33}
\end{vmatrix}
-a_{12}
\begin{vmatrix}
a_{21}&a_{23}\\
a_{31}&a_{33}
\end{vmatrix}
+a_{13}
\begin{vmatrix}
a_{21}&a_{22}\\
a_{31}&a_{32}
\end{vmatrix}
$$

このように行列式は任意の行で(もしくは列で)展開することができます。これが余因子展開です。この余因子展開はすべての行列式に対して適用可能です!
 もう一つ覚えておくべきなのは、余因子展開した後の行列式の符号です。行列式の符号は以下の関係があります。

$$
\begin{vmatrix}
+&-&+&\dots\\
-&+&-&\dots\\
+&-&+&\dots\\
\vdots&\vdots&\vdots&\ddots\\
\end{vmatrix}
$$

例えば上の行列式の余因子展開の場合、1行目について展開しているため、展開した行列式の符号は上の符号の行列の1行目に着目して、+,-,+となります。(2行目で展開すると-,+,-…、1列目で展開すると+,-,+…といった具合です。)
 では次の節でどのように展開するのか例を示しながら解説しましょう。


2.4次行列の行列式を求めよう

 次の行列式を求めてみましょう。

$$
\begin{vmatrix}
3&1&1&2\\
2&1&3&1\\
2&1&1&2\\
1&3&2&1
\end{vmatrix}
$$

4次行列を1行目について展開すると次のようになります。

$$
\begin{vmatrix}
a_{11}&a_{12}&a_{13}&a_{14}\\
a_{21}&a_{22}&a_{23}&a_{24}\\
a_{31}&a_{32}&a_{33}&a_{34}\\
a_{41}&a_{42}&a_{43}&a_{44}
\end{vmatrix}
=a_{11}
\begin{vmatrix}
a_{22}&a_{23}&a_{24}\\
a_{32}&a_{33}&a_{34}\\
a_{42}&a_{43}&a_{44}
\end{vmatrix}
-a_{12}
\begin{vmatrix}
a_{21}&a_{23}&a_{24}\\
a_{31}&a_{33}&a_{34}\\
a_{41}&a_{43}&a_{44}
\end{vmatrix}
+a_{13}
\begin{vmatrix}
a_{21}&a_{22}&a_{24}\\
a_{31}&a_{32}&a_{34}\\
a_{41}&a_{42}&a_{44}
\end{vmatrix}
-a_{14}
\begin{vmatrix}
a_{21}&a_{22}&a_{23}\\
a_{31}&a_{32}&a_{33}\\
a_{41}&a_{42}&a_{43}
\end{vmatrix}
$$

この式を見ると1行目について展開すると決めた場合$${a_{11}やa_{12}}$$などがピックアップされるわけですが、ピックアップされた行と列の要素はもう使えません。$${a_{12}}$$であれば1行目と2列目の要素は使えないので、それ以外の9つの要素をそのままの順番で再度行列式にする、という流れでその他$${a_{13}やa_{14}}$$についても展開していきます。また、1行目を展開しているので、符号は+,-,+,-となります。
 この方法に従って例題を計算すると、

$$
\begin{vmatrix}
3&1&1&2\\
2&1&3&1\\
2&1&1&2\\
1&3&2&1
\end{vmatrix}
=3
\begin{vmatrix}
1&3&1\\
1&1&2\\
3&2&1
\end{vmatrix}
-1
\begin{vmatrix}
2&3&1\\
2&1&2\\
1&2&1
\end{vmatrix}
+1
\begin{vmatrix}
2&1&1\\
2&1&2\\
1&3&1
\end{vmatrix}
-2
\begin{vmatrix}
2&1&3\\
2&1&1\\
1&3&2
\end{vmatrix}
$$

これをさらに計算して、

$$
右辺
=3・11
-1・(-3)
+1・(-5)
-2・10
=11
$$

と求まります。
 また余因子展開を使うと行列式の計算が劇的に簡単になる場合があります。以下の行列式を解いてみましょう。

$$
\begin{vmatrix}
2&2&1&3\\
0&0&3&0\\
1&4&2&5\\
0&2&4&4
\end{vmatrix}
$$

今回は2行目で展開してみましょう。展開後の行列式の符号は-,+,-,+です。

$$
\begin{vmatrix}
2&2&1&3\\
0&0&3&0\\
1&4&2&5\\
0&2&4&4
\end{vmatrix}
=-0
\begin{vmatrix}
2&1&3\\
4&2&5\\
2&4&4
\end{vmatrix}
+0
\begin{vmatrix}
2&1&3\\
1&2&5\\
0&4&4
\end{vmatrix}
-3
\begin{vmatrix}
2&2&3\\
1&4&5\\
0&2&4
\end{vmatrix}
-0
\begin{vmatrix}
2&2&1\\
1&4&2\\
0&2&4
\end{vmatrix}
$$

右辺は第3項以外0ですね。第3項以外計算する必要がなくなるということです。第3項について1列目で余因子展開すると

$$
-3
\begin{vmatrix}
2&2&3\\
1&4&5\\
0&2&4
\end{vmatrix}
=-3(
2
\begin{vmatrix}
4&5\\
2&4
\end{vmatrix}
-1
\begin{vmatrix}
2&3\\
2&4
\end{vmatrix}
)=-6・6+3・2=-30
$$

と求まります。つまり0が含まれる行や列に着目して展開をすれば、0の数だけ計算が楽になるということですね。


まとめ

 今回は行列式の余因子展開を使った求め方について解説しました。次の回で学ぶ列基本変形と併せて行列式を求める便利な方法です。うまく使い分けましょう。

このブログは理工系として必要最低限の会話ができる知識をお伝えしていますが、書籍と合わせて勉強することでより効率的にそしてさらに深く勉強が進むかと思います。まずこちらの書籍を手に取ってみて、並行して学んでみるのもいいかもしれません。

次回は列基本変形を用いた行列式計算方法についてです。

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