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第5回 これだけ!転置行列    (線形代数)

 前回は掃き出し法を用いた逆行列の計算と逆行列の活用方法について解説しました。

前回は特大ボリュームだったので、今回は少し箸休めして、転置行列の性質についてゆるく学んでいきましょう。

1.転置行列って?

転置行列$${A^T}$$は、元の行列 $${A}$$の行と列を入れ替えた行列です。つまり、行列$${A}$$のi行j列の要素$${a_{ij}}$$が、転置行列 $${A^T}$$のj行i列の要素となります。具体的には行列$${A}$$が次で表される時、

$$
A=
\begin{bmatrix}
a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\
a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
a_{m1}&a_{m2}&\cdots&a_{mn}
\end{bmatrix}
$$

転置行列$${A^T}$$は次式となります。

$$
A^T=
\begin{bmatrix}
a_{11}&a_{21}&\cdots&a_{m1}\\
a_{12}&a_{22}&\cdots&a_{m2}\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
a_{1n}&a_{2n}&\cdots&a_{mn}
\end{bmatrix}
$$

例を出すと、以下の行列$${A}$$があった時、

$$
A=
\begin{bmatrix}
1&2&3\\
4&5&6
\end{bmatrix}
$$

転置行列$${A^T}$$は、

$$
A^T=
\begin{bmatrix}
1&4\\
2&5\\
3&6
\end{bmatrix}
$$

となります。

2.転置行列の性質

行列の転置を計算する際に便利になる性質が4つあるので、マスターしましょう。

①転置行列を2度とったものは元の行列と等しくなります。

$$
(A^T)^T=A
$$

まあ当たり前と言えば当たり前ですね。

②定数cを掛けた行列の転置は、行列Aの転置にその定数cを掛けたものと等しくなります。

$$
(c A)^T=c A^T
$$

全体の要素のそれぞれに$${c}$$を掛けるのは、転置していようがいまいが変わらないですからね。

③2つの行列の和の転置は、それぞれの行列の転置の和と等しくなります。

$$
(A+B)^T=A^T+B^T
$$

これも想像しやすいでしょう。

④2つの行列の積の転置は、それぞれの行列の転置を逆順にした積と等しくなります。

$$
(AB)^T=B^T・A^T
$$

これはちょっと想像しにくいかもしれません。例題を出します。
行列$${A}$$、$${B}$$が次のように与えられるとします。この時、$${(AB)^T=B^T・A^T}$$の左辺と右辺をそれぞれ計算し、答えが一致することを確かめてください。

$$
A=
\begin{bmatrix}
1&2\\
3&4\\
\end{bmatrix}
      
B=
\begin{bmatrix}
5&6\\
7&8\\
\end{bmatrix}
$$

左辺は次のように計算できます。

$$
AB=
\begin{bmatrix}
1&2\\
3&4\\
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
5&6\\
7&8\\
\end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}
19&22\\
43&50\\
\end{bmatrix}
$$

$$
(AB)^T=
\begin{bmatrix}
19&43\\
22&50\\
\end{bmatrix}
$$

右辺は、

$$
B^T A^T=
\begin{bmatrix}
5&7\\
6&8\\
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1&3\\
2&4\\
\end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}
19&43\\
22&50\\
\end{bmatrix}
$$

となるので、左辺=右辺が確認できました。

3.転置行列って何に使うの?

 ごめんなさい。工学分野で転置行列がどう活用されているか私自身よくわかっていません。ただ、計算の都合上(内積の計算)やpythonでグラフ化する際のデータの整形には使っています。まあ、計算を便利にするツールとしてとらえるのも悪くないのかもしれません(数学分野の皆様ごめんなさい。ちゃんと数学的に目的があって転置が定義されていることは理解しているつもりです…)。

まとめ

 今回は転置行列について解説しました。

もはや購入された方もいるかもしれませんが…このブログは理工系として必要最低限の会話ができる知識をお伝えしていますが、書籍と合わせて勉強することでより効率的にそしてさらに深く勉強が進むかと思います。まずこちらの書籍を手に取ってみて、並行して学んでみるのもいいかもしれません。

次回は行列式についてです。

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