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これが、いつもの朝

朝早く家を出る息子のために、
彼よりも早く起きて、朝食を作る。

今日は大事なテストの日だから、
力を出せるように、しっかりとした和朝食を。

朝食の支度ができたところで、息子を起こす。
昨夜も遅くまで、お友だちとゲームをしていたと思われる、眠そうな顔。

結局、全然勉強しなかった今日のテストのために、
私は、要点をまとめたノートを、夜遅くまで作成していた。

「今回はちゃんと勉強するから大丈夫」
毎回聞いているお決まりの言葉が、今回も何度も聞こえてきていた。
「流石に、今回はね、勉強するよね」
どこかで毎回、期待してしまう私はバカな親だと思う。

もちろん、放置するという選択肢もある。

「困る経験をしないから、自分でしないのでは?」
「お母さんが助けすぎ。自分で困ったら、自分でしますよ」
子育て相談窓口、教育相談で、いつも言われる言葉。
藁をもすがる思いで助けを求めても、
必ず返ってくるアドバイスは、これしかなかった。

言われなくても、もう何回も、放置した。
10年くらいの間で、何度も何度も試した。
でも、変わらなかった。

気づくどころか、
「お前のせいだ」
「放置ですか、子育て放棄ですね」
「俺が悪い点をとって、恥をかかせる気だな」
などと暴言が飛び、すごい勢いで攻めてくるのが息子。
騒いでわめいて、そしてテストに行かないと言って部屋にこもる。

朝からその騒動に耐えられる心臓では、もうない。
10年ほどの歳月の中で、もう耐える力も無くなった。
心のクッションは擦り切れ、苦しくて、痛くて。
この毎回の騒ぎを回避することに専念したくなるのだ。

だから今回も、誰が試験を受けるのかわからないほど、
丁寧に試験対策の要点をまとめておいた。

でも、朝の狂気のスイッチは、今日は予想外のところにあった。

食後に「薬飲んだ?」と尋ねたら、
「うん」と。

でも、歯磨きすら自分からはせず、
毎朝、歯磨きした?と声をかけないとしない息子が、
薬を自分で飲むはずがない。

だから私の手は「薬飲んだ?」と聞くと同時に、薬箱にあった。
それが気に食わなかったらしい。
「俺が、飲んでないと思ってるのか?」
「あーあ、飲んだと言っても、信じない、ひどい母親だおまえは」
「もうこれで、俺のテストは終わりだ。お前のせいだ」

始まった。
今日も始まった。

確かに、信じていない私が悪い。
でも、やはり、薬は飲んでいなかった。
きちんと、今日の分が残っていた。

息子は言語のIQだけが150近くある。
見かけも堂々としていて、理路整然と話ができる。
その淡々とした雰囲気のまま、
自分を正当化するために顔色変えずに相手を攻撃し、平気で嘘をつく。
そしてその嘘に多くに人が騙される。
私は、息子が犯罪者になるのではないかと感じる時がある。怖い。

先日、児童精神科を受診してみたが、医師も完全に騙された。
「お子さんはこう言ってますが、お母さん、お母さんがただ我慢したら問題ないんじゃないですか。子育ての問題ですね」と結局私が責められた。
私の拙い言葉では、伝わりきれない息子の言動。

ここに記録を残すことで、
いつか息子が自分を振り返り、
いつか自分が相手を攻めて苦しめていたことに気づいてほしい。

私は、その時はもういないかもしれない。
だから残していこうと思う。

ああ、書いたおかげで、少し気持ちが落ち着いた。
冷め切った朝食をこれで食べれる気がする。
残す以前に、私の心の吐口としての存在が大きくなりそうだ。

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