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【映画】フェイブルマンズ

一文感想:母親は息子にとっての永遠のヒロインってことかな

(以下、核心的なネタバレは避けています。ストーリー展開については雰囲気程度)

腕時計を忘れたので途中で時間を確認できずに鑑賞したのですが、2時間半超の映画が体感1時間半くらいで、展開としても「え、ここで終わり!?」というタイミングでサクッとエンドロールが始まったので素でびっくりしました。
前後編じゃないよね。みたいな。
(それはそれで、ここからの後編の需要も結構あると思うけど)

ただ、物足りなかったわけではなく充分堪能できたと思います。
娯楽的なワクワクドキドキというよりはメッセージ性高めかな。

「映画監督としてのサクセスストーリーや有名作品の製作裏話が物語のメインではない」というのは事前情報から察していましたが、それらがほんとに欠片も出てこないとは思わなかった。
人によっては少年時代の彼自身の体験や製作した映像に、後の作品とのリンクを見出す感じ。

タイトルの「フェイブルマンズ」はつまり「フェイブルマン家」、主人公の一家のことで。
映画製作を志す長男が主人公という形を取りつつ、ある意味では母親を中心とした「ある一家の葛藤と再出発の物語」みたいにも取れる。
映画が終わるタイミングも、そう思えば納得がいくし。
ただ、それだけでは終わらないもう一つのテーマとして、本作で描かれるのは、まさに青年スピルバーグ(劇中ではサミュエル・フェイブルマン)の視点から語られる、映画・映像の持つ正負両面の力。
この「正負両面」という所でいろいろ考えさせられる。

むしろこの映画の主役って、サミュエル自身というより彼の「母親」と「映画」そのものなのかもしれない。
どちらも本作の中で正負両面を表し、そしてサミュエル(スピルバーグ)を今の彼たらしめた存在。そういうことなのかな。

雑感も疑問に思った点も、書きたいことは沢山出てきたのだけど、ひとまず今回はこの物語の中核ともいえる、サミーの両親について。

●母親のミッツィ、ある意味での芸術家気質(主人公が受け継ぐ)を体現した存在であり、いろんな意味で「こんな風にしか生きられない」人物の有様を演じたミシェル・ウィリアムズは確かに素晴らしかったと思います。
その人物像をありありと受け取ったうえで、個人的にはちょっと共感しづらいキャラクターではありましたが。
事実として本人起因で大事な人達を苦しめた割に、徹頭徹尾ヒロイックな感じがしてなんだかなと思ってしまったのですが、考えてみたらこの彼女は二重の意味で「息子視点の母親の姿」なんですよね。
劇中のキャンプ映像同様に。
冒頭の一言感想にも繋がる訳ですが、優しく愛情深く、不安定さもあり最終的に遠く離れてしまった母親が、息子(サミュエル&スピルバーグ)にとっては結局すべてを許してしまう存在で、大切なヒロインだったということか。

●父親のバートについては、他の方々のレビューを読むと「家族を理解しない存在」「主人公の夢を阻む障害」的な伝わり方もあるようですが、個人的にはそこまでネガティブな印象はなかったです。
アメリカ全土、どこへでも引っ越しながら転職でステップアップというのも、本人の才能と努力あってこそだし、実際に結果が出て生活は上向いてたし。
家庭内のいろんなギャップも彼なりに折り合いを付けようとしてたし。
最後まで「誰のお陰でメシが食えてるんだ」みたいな態度には出ないし。笑
彼は彼で、自分と根本的に違うタイプの人を尊重し愛しながら、「同じにはなれない」ために辛い思いをすることになりましたね。
でも最後までミッツィを否定せず彼女との絆を信じていた時点で、作中でも言われてたけど相当人間ができてると言わざるを得ない。
そしてこちらも、俳優さんの演技は素晴らしかったと思います。最後の方で感情を露わににするシーンも、いきなり豹変するのではなくそれまで抑えていたものを感じで説得力があった。

その他いろいろ思ったことや気になったことも、できれば別の機会に。

映画『フェイブルマンズ』公式サイト (fabelmans-film.jp)

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