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ヤクブーツはやめろ、からの陰謀論

 氷山の一角が当てはまるとしたら、かなり蔓延しているのだろう。
 大学生が相次いで逮捕されている大麻の話だ。

 蔓延の理由は何よりも、入手がしやすくなったことにあるだろう。殺人が絡むような闇バイトですらSNSを通じて募集され、それなりの応募がある時代だ。捜査官に取っては頭の痛い話だろうが、今や麻薬を手に入れるのは容易いはずだ。だからと言って、SNSが悪いなんてことにはならない。

 成分や身体への作用を考えれば、大麻とその他の麻薬を一緒くたにするは個人的に違和感を覚える。しかし流通ルートという点においてはどちらも似たようなものだろうから、併せて取り締まるのは頷ける。
 それでも、利用者をいくら捕まえたところで販売業者側を根絶やしにしない限りは、ドクダミ草のようにいつまでも蔓延るのは当たり前。地下に潜った販売ルートは全く│綻《ほころ》んでおらず、何十年も掛けている捜査は成果を示せてはいない。
 使用したことによる逮捕者ばかり増えても、見ようによっては、スピード違反のネズミ捕りよろしく捜査関係者が手近なところで成績を挙げたいだけなのではないかとの疑念に繋がる。

 合法化されている国があることから考えも大麻自体が悪いのではなく、それを切っ掛けに薬物の世界に嵌まり込んで抜けられなくなることの方が問題だ。
 大麻とその他の薬物を同列に扱うことにも問題がある。
 タバコを吸っている人はそのうち覚醒剤に手を出すなんて思う人はいないだろう。それはタバコと覚醒剤は全く別物と認識されているからだ。実際に法的に全く別物なのだから当たり前だが、「違法薬物」という定義を作ることによって闇の市場が出来、そこで稼ごうとする者や世界的な流通ルートの構築に繋がる。カルテルのような状態だから価格は販売者側が握っていて不当に高額になりがちだ。

 使用する側も、違法だからこそ手を出してみたい、手に入れにくいからこそ手に入れてみたい、その結果使ってみたら実際の効能以上の効果を感じてしまうという心理が働くだろう。
 そして禁断症状に襲われる段階になると、もはや自分の意志ではどうにも出来なくなる。善悪の判断よりも継続的な摂取の渇望が遥かに強くなり抜けられなくなる。すると益々売れるようになる。

 難しいのは、じゃあ全面解禁すれば良いのかというとそうではない事だ。健康や生命の被害を生む麻薬を公認にする国など無い。

 そこで登場するのが、大麻解禁論だ。
 安価で入手しやすい大麻を切っ掛けにして薬物に手を染める人が大半であるのに対して、化学的な成分や人体への影響は他の薬物とは全く違い合法化している国もある。言ってみれば大麻はタバコに似たものであって、むしろタバコよりも健康被害が少ないくらいだ。だから大麻を解禁しようと言う。

 大麻の良し悪しをここで論ずるつもりはない。大麻は紛れもなく違法薬物に分類されるものであって、大麻くらい吸っても良いじゃないかと言うつもりもない(吸うのは違法ではないと言われるが)。
 問題はこうした対論が出た時に、国がそれを封じ込めようとすることだ。あるいは、議論をしようと言って結論ありきの形式的な場を設けてお座なりに済ます。
 議論をするためには正確で幅広い情報が必要だ。政府にとって有利なことも不利なことも全て洗いざらいにして、賛否両輪のエビデンスを持ち寄って両論の議論をする為の環境整備が必要だ。

 議論は国と国民の間で行うものではない。ましてや国会で行われる茶番のことでもない。議論は私たち自身が、私たちの間で行われる必要がある。デマに近い報道や都市伝説や陰謀論をもとにした井戸端会議ではなく、正しい情報をもとにした庶民の議論が展開されなければならない。

 こんな空想を抱いたりするものの、空想は空想に過ぎない。庶民の議論なんて、現実とはかけ離れている。
 だから薬物は無くならないし、ある意味それこそが政府の思う壺なのだという陰謀論を思いつく。

おわり


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