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尾てい骨が痛い

 最近、尾てい骨が痛い。
 医療用語では尾骨と言うらしい。
 骨盤の真ん中から下に向かって出ている尻尾の名残のようなあれだ。

 尾骨が痛いという言い方は多分正確ではない。転んで臀部を強く打ち付けたということでもないから、痛いのは骨そのものではないはずだ。
 感覚的には、座った時に尾骨の先端と椅子に挟まれた肉の部分が痛いという状態。だから立っているときは痛くない。また、座る時も椅子によっては痛くない。

 尾骨が痛いのは山手線などの新しい電車の椅子が一番そうで、次に家のふにゃふにゃな座面のソファ。座面が硬い椅子でもベンチなどは問題無い。座面が柔らかくても机の椅子は問題無い。

 この尾骨付近の痛みは時々やって来てしばらくすると無くなる。

 理由を聞けば、姿勢が悪いせいらしい。
 骨盤が後傾していると良くないと。普通は姿勢が良ければ尾骨が座面に当たることは無いのだという。
 骨盤が後傾している理由の一つは、お腹が硬いことだと整体院で言われた。お腹が凹むような姿勢が楽だと思ってしまう姿勢習慣が悪い。確かにお腹を引くと骨盤が後ろに傾く。
 お腹を柔らかくするには、お腹を伸ばすストレッチやお腹の筋肉を手指で押し込む様に圧迫して伸ばすのが良いらしい。もちろん骨盤の後傾はお腹の筋肉だけでは無く骨盤周りに多数ある筋肉のバランスによって起きているから、お腹の筋肉を柔らかくすれば治るというものでもない。骨盤の傾きを意識して普段から姿勢を正すことが重要なのは言うまでもない。

 背骨、肩、首と繋がったラインは、骨盤の位置に影響されるから、骨盤を正しい位置に保つことは肩凝りや首の凝りの解消にもなる。私の場合は肩凝り(の自覚)が無いからあまり関係無いと思ってしまうが、実際は大いに関係がある。
 逆に肩凝りや猫背が切っ掛けで骨盤後傾が助長される面もある。猫背とまでは行かなくても首が前に出たような姿勢であれば、お腹を引っ込めることでバランスを取ろうとしてしまう。車でリクライニングを深く倒して座ったり、電車で脚を投げ出すようにして椅子に浅く腰掛け背もたれに寝転ぶ様に座るのは、どちらもお腹が引っ込み骨盤が後傾する姿勢だ。

 不思議なのは、悪い姿勢が習慣化するとそれが楽な姿勢だと錯覚することだ。そんな姿勢だと肩凝りになるよと言われたところで、本人は苦しい姿勢だと思ってそうしているのではなく、楽な姿勢のつもりなのだ。
 これは人間の持つ「環境に慣れる」という利点が悪く働いたケースだろう。悪い姿勢が快適になるなんて、神様は余計な機能を付けてくれたものだ。

 しかし良く考えてみるまでもなく、悪い姿勢が快適な訳がない。きっと快適でないものを快適だと錯覚しているだけだ。不快な状況が続くことほど不快なことは無いから、現実逃避するために快適だと思いこむような心の働きが起こる。そういうことではないか。いや、違うな。

 人は直立を始めて久しく経つが、完全に直立歩行に適合するほどは適応していないのだろう。今となっては何故ヒトが直立するようになったのか、あるいは直立歩行出来るヒトが生存競争に勝ち残ったのか分からない。
 現代人は席が空いていれば走ってでも座ろうとする人がいるくらいだから、直立歩行出来る人は淘汰される運命か。

 ちょっと待て、尾骨が痛いのは立っている時ではなく座る時だった。私が適応出来ていないのは立ち姿勢ではなくて椅子に座ることじゃないか。
 ということは結局、悪いのは椅子ということだ。自然と姿勢良く座れて尾骨が傷まない椅子を開発し普及させて欲しいものだ(と人のせいにしておく)。

おわり
 

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