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若い頃はたくさん恋をしよう

 日々を有意義に過ごせているかと問われると甚だ自信が持てない。何かを成し遂げることもなく、成し遂げようという努力をすることもなく、どちらかと言えば怠惰に、そして無駄に時間をやり過ごしている。

 しかしそれは結果論であって、その時々は無為ではなく、ましてや投げ槍や捨て鉢等では断じて無い。それでも後から振り返ると失った時の長さに呆然とするくらい何も残しているものが無いのだ。

 別に人生の足跡を残したいとかいう大袈裟な話をしようと言うのではない。自分の時間の使い方が勿体無いと悔やんでいるというのでもない。ただ、考えるほどには何事も上手くは出来ないものだなという感想めいたものを抱いているに過ぎない。

 日常とはそういうものだと言えばそれまでだ。何事もなく過ぎていくのは幸せな証拠だ。戦争状態であればこんな無駄な考えを巡らせる様な余裕は無いだろう。一挙手一投足が生死に直接関わる状態でアドレナリンと無縁でいるなんてことは有り得ない。

 分子量が183程度の比較的単純な物質が僅かに放出され全身で作用する。緊急事態に人が行動するのをサポートする。ストレス状態に陥ると良くお目に掛かるこの物質は、何故か幸せホルモンとしても働き、恋を促す。その物質がアドレナリンだ。

 アドレナリンの出るようなストレスのある状態は普段の状態とは当然違って平穏無事ではない。それなのにスポーツ選手や恋多き若者は好んでアドレナリンを求める。きっとそれが若さというやつなのだろう。若い身体だから耐えられるし、生きる活力にもなる。

 年を取ると心臓がバクバクするようなことは身体が受け付けなくなる。これはアドレナリン耐性が衰えることに等しい。すなわちストレス耐性が下がることでもある。
 若い頃にアドレナリンが放出されるような経験をどれだけしたか。それがその後の人生のストレス耐性に関わる気がしてくる。

 だから、若い頃はたくさん恋をしよう。

おわり
 

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