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来なかった台風を恨んではいけない

 台風7号の直撃の恐れがあるとして大騒ぎになった首都圏だが、蓋を開けてみれば多くの場所で、木枯らしや春一番ほどの風も吹かず、昨今のゲリラ豪雨ほどの雨も降らず仕舞いだった。
 電車は計画運休するは飛行機や船は欠航するはと交通機関は乱れに乱れ、盆休み時期とあって予定が狂った人も多かっただろう。
 それなのにこの肩透かし。1日無駄をしたという声も聞かれた。私自身も今日という日は何だったかなぁと思わないでもなかった。

 しかし、こういう時こそ何もなかったことを喜ぶべきだろう。間違っても天気予報や気象庁を恨んではいけない。
 ただし、報道が大袈裟なのはいつも通りとしても、対応が安全サイド過ぎる嫌いはあった様に感じた。混乱を避けようと予め社会活動を止めに掛かるのはコロナ禍で身に付いた習慣ではないだろうか。
 もちろん、安全対策をすることは悪いことではない。備えや警戒は必要だ。規定の降水量や風速を超えたら運行を停止するのは当然だ。しかしそうなる前から全てを止めないとパニックになってしまうことを恐れているのだとしたら、個人の判断力が軽視されているとも言える。
 各自が状況判断をして予測をして行動することを表向きは禁じないまでも、何か大きな枠組みがそれを阻むことを良しとして違和感を抱かないとすれば、かなりまずい。

 クリーンで時間に正確で、安全・安心で快適な社会が普通に営まれていることに驚かない海外からの旅行者はいない。素晴らしいと絶賛し、日本ファンになって何度も訪れる人も少なからずいるだろう。それほど感嘆してでも定住に至る人が少ないのは、そうした完全社会が実現されている陰に両手を上げて賛成は出来ない何かがあるのかも知れない。それは日本社会の闇とも言えるものだろう。

 あなたは、日本を気に入って住みたくなった外国人だとしよう。時間にルーズだし、人のものを拝借して返さないことや、街を綺麗にする感覚が無く育ってきたが、それと対極にある日本に感心したのだ。
 定住するには仕事がないといけない。幸いなことに自国ではかなり優秀な看護師として活躍していたあなたは、日本でも看護師として比較的安定した収入が得られると思っていた。直ぐに職は見つかるだろうから、まずは観光ビザで入国し、それこそ観光でもしながら住むところに目星をつけて、職探しをすればいいと思っている。
 さて、この試みは他の国ではあまり問題なく実現出来たとしても、果たして日本ではどうだろうか。

 クリーンな完全社会は、その裏では異質なものを排除し、同質なものに同化することを強いる社会でもある。日本に憧れて来たけれど夢破れて犯罪を犯すに至る外国人が目につくとしたら、それは外国人はやっぱり悪い奴なのではなく、日本社会が彼らを拒絶する免疫機能が働いたのだ。
 免疫機能は、自分以外のものを見極めて敵と見なせば殲滅するまで徹底的に攻撃する機能だ。日本社会の免疫は、新規参入しようとする外国人のみならず自国の人をも攻撃する。

 それが直ちに悪いことだと言いたいのではない。良い面があれば悪い面もあるという当たり前のことを忘れないようにしたいだけだ。社会がクリーンでいるためには、排除される人々が必ずいることに気付く必要がある。

 なにはともあれ、来るぞ来るぞと言われた強力な勢力の台風は、大きな災害をもたらすまでもなく日本列島を避けてくれた。やっぱり●●じゃないかというのが続くと関心が薄れていく。対策して損したなどと恨まずに、きちんと自分で判断して行動出来るよう、もっと人間力を磨きたいと思うくらいの方が良い。

おわり

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