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人間界にとっての宇宙人の脅威

 人は物語を通してしか世界を理解出来ない。逆に言えば、世界は人が作った物語に他ならない。だから、世界は人の数だけある。

 少々厄介なのは、何でもストーリー仕立てにして理解しようとするところだ。そして分かり易いストーリーには分かり易い因果関係があると思っている。しかし元来宇宙には、はっきりした因果関係など無い。

 ・マスクをしない人が多くなった
 ・感染者が増えている

 この二つを聞くと、マスクをしない人が増えたから感染者が増えた、というストーリーが何となく浮かびがちだ。しかしそんな事実があるかはこれだけでは分からない。この二つは別の話だ。それでも因果関係があるように感じるのは、その方が理解しやすいからだ。

 因果関係を理解するには順番が大切だ。次の場合はどうだろうか。

 ・感染者が増えている
 ・マスクをしない人が多くなった

 並べる順番を変えただけで一見分かりにくいだろう。しかしここでも言葉は因果関係に持っていこうとする。

 ・感染者が増えている
  なぜなら
 ・マスクをしない人が多くなった

 因果関係を逆に辿ることを理由という。
 ここでの「なぜなら」は、その次に来る文を理由として提示することで、言葉の並びを逆転させてストーリーを浮かび上がらせる。

 物語は、何かが起きてそれによって次の何かが起きる前提で言葉が紡がれる。連綿と繋がる因果の糸が物語になる。言葉の羅列はいつしか意味を携えて独り歩きを始める。それが真実かどうかは関係無い。架空の物語も伝えられるうちにいつしか真実味を帯びてくるものだ。

 物語を共有することこそが人類の強さの秘密になっている。皆が各自の世界の中でバラバラに生きていたら今のような世界にはなっていなかった。それどころか人類は生き延びられなかっただろう。
 今私たちは、資本主義や民主主義という物語を信じてその中で生きている。我らの正義が相容れない物語を生きている人々もいる。

 世界が平和という物語で一つになることは残念ながら難しいことだと思う。それぞれの平和はそれぞれの背景に紐付いていて、その因果の起点は違い過ぎる。
 それこそ宇宙から悪党でもやってくる様な物語が成立するのであれば地球人が団結することが出来るのだろう。その意味で宇宙人の脅威という物語は世界平和のための大切な物語なのかも知れない。

おわり

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