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喋りが苦手な人がやってみた方が良いこと

 多くの人の前で発表しなければいけないようなときはもちろん、数人が相手でも普段とは違ったシチュエーションだと緊張を強いられる。
 そんな時のためにどのような対処法をお持ちだろうか。

 中には友人以外の人と喋るとなるとかなりの苦痛を感じる人もいるようで、特に新入社員が実際の業務に就くと電話や対面の会話に苦労するという人もいる。
 慣れれば大したことが無いし、人はいつの間にか慣れるものだから深く考える必要はないというのもひとつの答えだろう。
 それでも慣れない場面では私でも緊張甚だしいから、慣れにもいろいろあるということだ。

 私が実践しているのは次のようなことだ。


原稿を憶えようとしない

 例えば営業トークなどを想定した場合、緊張しがちな人にありがちなのが、かなりの緻密な原稿を予め作ってそれを記憶しようとすることだ。かく言う私もそのタイプだった。そして未だに慣れないシチュエーションの場合は原稿を作っている。
 では、仮に原稿を完璧に覚えることが出来て、リハーサルも上手く出来て、本番でそれを完璧に再現できたとする。この場合、あなたの話は相手に伝わるだろうか。伝えるために準備しているのだから伝わって当然だと思うかも知れないが、多くの場合上手く行かないだろう。
 なぜか。
 ここであなたのしたことは、相手に伝えることではなく、覚えたことを再生することだからだ。手段が目的化してしまうという良い例にはなるが、残念ながら聞いた人の満足度や理解度は高くなかっただろう。
 ましてや完璧にこなせるくらいなら過度な緊張ではなく適度な緊張レベルだろうから思い悩むはずもない。だから緊張に悩むくらいの人はきっとリハーサルで出来たことの一割も上手くいくことは無いだろう。

 だから、原稿を作ったとしても憶えておくのは原稿の一字一句ではなく、本当に伝えたいことだ。伝えたいことを列挙してそれを適切な順番に並べる。そして原稿として肉付けをする。しかし、原稿を読むときは一字一句にこだわって暗記するのではなく、伝えたいことのあらすじを追い掛けるようにする。
 こうしておけば、少なくともきちんと暗記出来ているかという不安からは開放される。

話すことを決めておかない

 もっとも、それでも残る不安はある。
 列挙したあらすじを忘れてしまわないか、話す順番を間違えはしないか、つなぎの言葉が上手く出てくるかといったことはどうしても無くならない。
 そこで私がやるのは、一度読んだ原稿も列挙した伝えたいことも忘れてしまうことだ。その上で、本当に伝えたいことの要旨、つまり勘所みたいなことだけを頭に入れておき、あとはアドリブで何とかするという方法だ。
 お気付きの通りこれは少々高等だし、実際やるのには勇気がいる。それでもあなたが元々知っている内容を知らない人に如何に伝えるかということだけを考えてみれば、幕の内弁当的な原稿よりも遥かに伝わるものになる。話していて相手に伝わっていることが分かると楽しくなってきて、もっと伝わる話が出来るようになる。

独り言を喋るように話す

 そして、最も高度そうに見えて最も簡単な手法が実はある。それが独り言を喋るように話すということだ。ここで言う独り言とは、ボソボソと人に聞こえないように話すということではない。自分で自分に説明するように話すという意味だ。
 人に分かりやすく説明しようとするから難しく考えてしまうし、上手くいくか不安になるから緊張してしまう。自分に対してだったらどうだろうか。自分でくすぐって笑い転げる人がいないように、自分に話していて緊張する人はいない。
 そうは言ったって、目の前に他人がいたら独り言では失礼だし、その人が理解出来なければ話が伝わらないじゃないかと思うだろう。まさにその通りだ。だからそんな時は、これじゃ伝わらないよね、と独り言を言えば良いのだ。そして「つまりどういうことかと言うと・・・」と続ければ良いのだ。
 それでも相手の反応が気になるって?
 大丈夫。聞いている人は聞いている人で、話している人に対して何か反応しなきゃと思ってしまうものだからだ。
 喋りのプロと思われているテレビのアナウンサーも、ニュースを読むときは独りカメラに向かって喋っているだけだし、それを見ているあなたは聞こえもしないのにテレビに向かって反応して話し掛けたりしたことがあるだろう。

気真面目な人ほど

 偏見覚悟で言うとすれば、いろいろ考えて自分の思いを伝えなきゃと気真面目に考える人ほど喋るのが下手くそだ。なぜかといえば、格好つけるのも、痩せ我慢するのも、見た目以上実力以上に見られたいと思うのもそういう人だからだ。
 適当に独り言を言っておけば良いものを、あれこれとシナリオを考えておくから、その通りにことが運ばないと勝手に詰んでしまう。
 だからといって不真面目が良いというのではない。そうやって両極端に考えない方が良い。話すのは格好いいと思われるためではなくて、思いや考えを伝えるため。
 自分相手に話すと思えば格好つけることとは無縁なはずでしよ。
 自分すら納得出来ない内容が相手に伝わるはずもない。まずは自分を騙すことから始めてはどうか。きっと生真面目な人ほど身につくのも早いはずだ。

おわり

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