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不安を攻撃性に転嫁したもの

 世界規模での燃料高騰、インフレ、株安、そして一部地域での戦争。
 日本の場合はそれに加えて円安も加わる。
 災害のように急激に襲来して生活を一変させはしないが、じわじわと締め付けてくる。
 今はまだ顕在化していないかも知れないが、こうした変化はいつしか不安を蓄積して行くものだ。私達はこの不安に耐えられるのだろうか。


 政府は物価高騰対策を打つと表明している。スタンスとしては、今の物価高騰は特殊事情による一時的なものという。決してインフレとは言わない。
 この対策によって世界で起きている物価高騰が抑制されるはずもないが、国内の生活費高騰を防止できることに期待したい。

 物価高騰問題と同時に日本独自の問題として電力供給力の不足を焦点にしている。選挙を前に自然エネルギー100%利用を掲げる政党もあるが、様々な意味でその実現可能性は低い。政府としてはベース電源としての原発という位置付けは変えていないから、電力不足解消には原発が必須というようなことを早晩持ち出すつもりなのだろう。

 色々な不安要因が増えていくと国民に不満が溜まってくる。普段は政治に無関心だった国民が、国が無策だ失策だと責める声が広がる。
 責められれば人のせいにしたくなるのが人間。それは国も同じで、集まる目線を国内から国外に向けさせる。今こんな苦しい状況になったのはあの国のせいですと指し示す。諸外国でもよくやっている方策だ。
 そうなれば民衆は、みんなが向いている方向が正しい方向なのだと騙されやすいので、国内の問題が見えにくくなる。

 情報が溢れているいまの日本ではそんなことが起きるわけがないと思いたいが、群集心理は恐ろしい。誰にも制御出来なくなる。悪いのはあいつだと指さす方向に人々が群がるようになったら要注意だ。
 万が一そこに、不安を養分として育った攻撃性が加味されると、民衆は暴走しかねない。民衆の意を受けた過激な政治が支持されかねない。

 歴史は繰り返すと言う。
 しかし、繰り返さないために歴史に学ぶ必要もある。
 まだその時は来ていないが、水面下にじわじわと広がりつつある皆の不安が爆発しそうになったとき、安易に人のせいにしない政権と、容易に騙されない国民である必要がある。
 誰も望んでいなかったはずの不幸を招かないためにも、様々な危機が迫るこの時期に、より多くの人がもう一度社会や世界の在り方を考える機会を持ちたいものだ。

おわり
 

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