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ポジティブ思考とネガティブ思考

 そんな深刻に考えるなよ、気楽に行こう。
 そう言うのは簡単だ。
 けれどそれができないから困るんじゃないか。と思う人も多いかもしれない。気が付くと悪い方に悪い方に考えてしまっている。出来ない、無理、有り得ないと考えてしまう。あいつばかり上手く行ってズルいとも思ってしまう。そういうことは誰にでもある。違うのは、そうした思いに捕らわれている時間の長さだ。

 なぜ否定的な思いに捕らわれるか。それは不安があるからだ。不安な気持ちは人類が生き延びるのに必要な危機回避能力だった。生物が危険を回避するための一番の方法は逃げることだ。不安になったら逃げる。これが正攻法だ。
 しかし人間の場合は逃げるなと言われる。立ち向かえ、挑戦しろ、戦えと言われる。だから不安になったときに、無意識が逃げろと言うのを意識が無理やり抑え込まなければならなくなる。このジレンマは辛い。不安継続中のまま対応を迫られるということになる。
 不登校や出社拒否という選択肢もあるが、バネを押すほどに反発力が増す様に、フツーと違う行動をするほど周囲からのストレスは高まる。家出や夜逃げをする方法もあるが、どこかで生活しなければならないのは変わらない。つまり社会という枠組みからは逃げられない。


 例えば、ダーツのプロ選手になりたいと思ったとする。大抵の人はその瞬間から、なれない理由を探し始める。

 ダーツのプロなんて食えない。そんなにメジャーじゃないから親や周囲には遊んでいるとしか思われない。そもそもプロになるような技術がない。そんな練習をする時間が無い。プロになっても意味が無い。趣味で十分楽しい。遊びでオーケイ。

 そういう言い訳は、「プロ選手になりたい」と思った気持ちとは関係なく、しかし自動的に湧き出てくる。最初の気持ちを大切にするならば、どうやったら実現出来るかを考えた方がいい。でも、上手く行かなかった時の事を想像してしまう。だから逃げ道を作っておく。

 ポジティブに考えるというのは、そういった否定的な考えを打ち消す事ではない。上手くいくと自分に思い込ませる事でもない。
 使う言葉を変えるだけだ。

 ダーツのプロはどうやって食っているのか調べよう。親や周囲を納得させる何か良い説明があるだろうか。プロになるための技術をどうやって身につけようか。練習時間をどうやって捻出しようか。プロになればなりたいという希望が実現する。趣味や遊びでは味わえない世界を体験してみたい。

 この様なポジティブな言葉は思考とは違う。単なる言い換えだ。だから、なにもポジティブに考える必要などない。ネガティブに考えないようにする必要もない。
 必要なのは語彙を覚えることだ。普段使っている語彙を棚卸ししてみて、それを入れ替えることだ。
 肯定的な言葉を並べた結果生まれてくるのがポジティブ思考だ。
 ということは、今のあなたのネガティブ思考を生み出しているのは、あなたの考え方ではなく、あなたが知らず知らずに使っている語彙が原因だということ。
 あるいは、本当は出来ないのではなくて、単にやりたくないだけかもしれない。やりたくないことを押し付けられることが多いと感じるのであれば、あなたは居場所を間違えているだけだ。その時は移動した方がいい。

 無意識に口に出したり、頭の中で呟いている言葉がないか点検しよう。出来ないという言葉が浮かんだら、出来るようになるためには? と言い換えてみよう。
 意識して言葉を生み出すようにするだけで変わるはずだ。

  さて、やったことのない仕事を上司から振られたとする。あなたはどんな言葉を紡ぐだろうか。

おわり

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