「急行の待ち合わせに」
#Twitter300字ss お題「旅」
旅行記を書くよう勧めてくれたのは君だったが、列車に乗り込んでからというもの君への手紙ばかりしたためている。
鈍行は退屈だ。
例えば停車駅から海の水平線を見渡せれば飽きなかったかもしれないが、眼前に広がるのは分け入っても青い山ばかり。もし君のように植物の種類に明るかったら、鬱蒼とした緑の景色も楽しめるのかもしれないが。
僕の楽しみと言えば、気紛れにペンを走らせながら人けのない車内で缶ビールを呷ること位だ。このおじさん臭い楽しみこそ、君には理解し難いことだろう。
生きていれば君も大人になっている年齢だから、もしかすると分かってくれるかもしれない。
今年の盆はビールを供えに君の故郷まで来たのだ。一緒に飲もう。
(300字)
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