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人はどう答えるかではなく何を問うかで評価される、という希望の物語『すべてがFになる-THE PERFECT INSIDER-』

多くの”それなりに”勉強のできる子供たちが小さいころに「自分は天才なんじゃないか」と思うように、ぼくもそんな小学生でした。今思うと本当にイヤな小学生だと思うのですがけっこう共感する人多いと思うんですよね、、、いないかな、、、。

そんな幻想は中学・高校・大学といくにつれて夢だったんだなーと現実を理解していくのですが、それでも「天才になりたい」と天才へと憧れ続けさせたのが森博嗣氏の『すべてがFになる』でした。

定期的に話題になる、森博嗣作品。国立大学の准教授である犀川創平と、その教え子である西之園萌絵が事件を解決していくミステリーですが、醍醐味としては、森博嗣氏が大学の先生だからこそ書ける「理系ミステリー」。理系の知り合いも森博嗣先生ファンがとても多いです。『すべてがFになる』のあらすじは、

愛知県にある妃真加島(ひまかじま)に向かった犀川創平と研究室の面々。犀川の恩師の娘である西之園萌絵も研究室の正式なメンバーではないが参加していた。妃真加島にはその所有者である真賀田家が設立した真賀田研究所があり、実は萌絵は研究所と多少の関わりがあったのだ。
真賀田研究所には優秀な研究者が集い、(世間の常識からは少し外れているが)彼らなりの論理・生活形態とそれを許容する環境の下で精力的に研究を進めている。その頂点に君臨するのが、真賀田四季博士。彼女は現存する最高の天才で、名実ともに研究所の活動の中心人物であった。
そしてまた彼女は過去犯した殺人によっても有名人物であり、研究所の一画に隔離されている存在でもあった。萌絵の提案で研究所を訪れた犀川と萌絵の前に、不可思議な死体が姿を現す。更に続いて起こる殺人事件。2人は研究所で起きた事件の謎にとらわれていく。(wikipediaより)

2014年にはフジテレビでドラマ化。そして、2015年1月から浅野いにお氏のキャラクター原案でアニメ化しています。アニメもいい。そして原作もいい。でも気軽に森博嗣を楽しむ方法としてマンガもあるよ!ということで『すべてがFになる』のマンガのご紹介。アニメ開始と合わせて、アニメ放送に先駆けてコミカライズもされていて『ARIA』(講談社)7月号より連載しています。また、2007年に浅田寅ヲ氏の作画による漫画も発売されています。

森博嗣先生のエピソード

森博嗣作品の楽しみ方ですが、その前にエピソードを。

森博嗣氏は国立大学工学部で教鞭をとる大学教授でもありました(今はもう退官されています)。森先生は大学の講義でちょっと特殊な成績の付け方を採用していて、ぼくの大学時代の友人も森先生の講義でそのような授業を受けていました。

その成績につけ方は、試験をせず、レポートも課題も出さない代わりに、毎回講義の後に質問を提出させてそれによって出席と成績をつけるというものです。よい質問をしようとするのであれば、積極的に講義の理解を深め、考えなくてはなりません。

森博嗣先生は「いい質問をする人=できる人」とは明言していませんが、そのかわり、このように述べています。

人は、どう答えるかではなく、
何を問うかで評価される。

つまり試験で正解を導き出すことや、レポートで意見をまとめられるよりも、“どんな質問をできるか”によって、評価することができる、という考え方です。

問題解決ではなく、課題発見が求められる時代 

犀川と西之園萌絵が師弟関係(恋愛関係でもあるけど)にあることも理由だと思いますが、『すべてがFになる』の中でも、質問の描写が多く登場します。

私が働いていてもよく言われることですが、表面的な問題ではなく、「どこに課題があるか」考えることが最も重要である、と言われます。与えられた問題を解くことだけでは、「既存の仕事を片付ける」というところまでしかいきません。大きな成果をあげるためには、課題を発見する能力が求められます。学生の方も、社会人の方も、森博嗣作品を読むことをきっかけに、「よい質問する」ということを意識づけてはいかがでしょうか。

なんだかライフハック的なレビューになってしまいましたが、内容としても非常に面白いのでミステリー好きにはおすすめです。

漫画が面白かった方には、小説版もぜひ読んでいただきたいです。犀川と西之園萌絵が出るシリーズはS&Mシリーズと呼ばれています。   

森先生の作品はたくさんありますが、エッセイなどでも考え方を知ることができるのでおすすめです。

WRITTEN by 筧 将英
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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