見出し画像

昔別れた元カノ(社内恋愛)か、その妹のかわいい女子高生か。30歳独身会社員が迫られた究極の選択『繋がる個体』 体だけ繋がったってしょうがないから・・・

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/タクヤコロク

あなたは、社内の同期で付き合い、5年前に別れた元カノが忘れられない。そんな折、数合わせのために参加した合コンでめちゃくちゃかわいい女子高生と知り合う。「女子高生には興味がない」と言いつつも、なぜかその子に気に入られ、猛烈アタックを受けまんざらではない気分に。しかし、後日その女子高生と元カノが姉妹であることが発覚してしまう……。

お世話になっております、ベンチャー企業で働いてるけどマーク・ザッカーバーグやピーター・ティールよりも藤田和日郎先生や南勝久先生を敬愛しているころくです。最近は、BIG BANGに熱視線を注いでいます。突然ですが、みなさんが冒頭のような状況に陥った場合、どう行動するだろうか。

これは、今回紹介する『繋がる個体』という漫画の設定である。THE 三十路社会人の僕にとってすごく羨ましい状況のため、目下ドハマリしている。

まずね、女子高生のここみ(ココちゃん)がけしからん。

画像1


※ラブホで盗み撮りした写真で社会人を強請る高校生……おそろしい『繋がる個体』(山本中学/講談社)1巻より引用。

女子高生のココちゃんは、超モテる。周りの男性からチヤホヤされるのが当たり前の環境で育ってきたため、非常に真面目で凡庸で、ココちゃんの誘惑に屈しない純朴な主人公・まーくんが気になって仕方ないのだ。その猛烈アタックっぷりがもうたまらないのだ。

ここで、ここちゃんのかわいさを紹介しておこう。

画像5

※「信じらんない。私を好きにならないなんて」と自分から言っちゃうところがかわいい『繋がる個体』(山本中学/講談社)1巻より引用。

画像3

※井口氏の言い分が痛いほどに分かる。そしてそんなのお構いなしにキスするココちゃんがまったくもってけしからん『繋がる個体』(山本中学/講談社)1巻より引用。

おじさんは完全にココちゃんの虜です。しかし、姉のくるみも負けていない。

むしろ、年を取ってこじらせている感じとか、苦労を背負った大人の色気を含んだ味わい深さでは圧倒的にくるみに軍配が上がる。そして、追い打ちを掛けるように「元カノ」である。

男にとっての「元カノ」は、THE JAYWALKでいうところの『何も言えなくて…夏』みたいなもので、独り身の間はなかなか忘れられないし、心の拠り所として結構な期間依存してしまう。

そろそろ話を本題に戻そう。ココちゃんがかわいいのは間違いないが、この漫画の魅力は、もっと別のところにある。この漫画は、奇妙な三角関係を通して浮き彫りになる繊細な人間ドラマとしてのおもしろさを持つ。

暗い過去を持つ個体(登場人物たち)が、徐々に”繋がり”始める

ページを読み進めていくと、『繋がる個体』というテーマが作品全体に散りばめられていることに気付く。

主人公の井口が想い想われている二人の女性、くるみとここみは義理の姉妹で、実家を出て一人暮らしをしているくるみは、ここみのことを考えて実家には近づかないようにしていた。ここみはその気持ちを感じ取り、ズケズケと姉の家に泊まりに行くことで、姉と実家との繋がりを作ろうと試みる。

これまでの自分に降り掛かった体験のトラウマから、繋がったら必ず壊れると考えてしまうくるみは、元カレの井口からのプロポーズに対しても素直になれないでいる。一方で、繋がった先の幸せを信じて疑わないここみや井口。果たしてこの3つの個体は、繋がることができるのだろうか……。

画像4

※井口の名言「カラダだけ繋がったってしょうがないでしょう?」。この状況でこれを言えるのは、男の中の男だ『繋がる個体』(山本中学/講談社)2巻より引用。

画像5

※お約束のばったり鉢合わせ。さてこの先どうなるのやら……。『繋がる個体』(山本中学/講談社)2巻より引用。

すごく柔らかいタッチのイラストだからと油断していると、漫画を読んだ後に「人間とは孤独なのか」と哲学じみたことを考えてしまったりするのだから、なかなか侮れない。

いろいろとこじらせている登場人物一人ひとりの心情に身を任せて思考してみると、普通の恋愛漫画とは違った側面の楽しみ方ができる作品だ。モーニングで連載しているのも納得できる。

作者の山本中学さんは、性別不詳としている。こんなに三十路の普通のサラリーマン歓喜な漫画を描いているものだから、はじめは同世代の男が描いているに違いないと思ったが、恋愛漫画としてのストーリーの王道性やイラストのタッチを鑑みるに案外女性なのかなぁと妄想している。

現在連載しているストーリーでは、ココちゃんを中心とした新たな登場人物たちとの人間ドラマが描かれている。次の木曜日がとても楽しみだ。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件