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動物が死なないハッピー獣医漫画を読んだらやりたくなる4つのこと『動物のお医者さん』


【レビュアー/本村もも】

こんにちは。突然ですが私は動物が好きです。

特に犬が大好きなのですが、大好きゆえに犬が死んでしまう描写のある作品に触れると、当面のコンディションに影響を及ぼすほど落ち込みます。

そのため犬が出てくる作品については、たとえラストのネタバレに関わるとしても、最終的な犬の安否の事前確認を必要とします。”動物が好きだから動物の出てくる作品を楽しみたい、でも絶対落ち込みたくない”そんなジレンマを抱える私は、当然のごとく獣医漫画は読めません。

しかし、今日ご紹介する『動物のお医者さん』は、獣医さんの卵が主人公の漫画でありながら、なんと、動物が亡くなる描写が一切ありません。

私と同じジレンマを抱える方は、安心して触れることができる獣医漫画なので、ぜひぜひ読んでいただきたい。

そして、そんな『動物のお医者さん』を読むと、思わずやりたくなることがあるので、今日はそれをご紹介したいと思います!

ちなみに、本作は「花とゆめ」で連載されていた作品で、繊細なタッチの人物描写なのですが、獣医学生の日常を描いた、恋愛要素ゼロの日常系コメディ漫画です。少女漫画を期待される方はご留意ください。

やりたくなることその1:自分の子どもの名前を「公輝」にしたくなる

いきなり動物と関係のない話で恐縮なのですが、読み始めていちばん最初にやりたくなることだと思うので、その1とします。

『動物のお医者さん』の主人公は「西根公輝(にしねまさき)」という名前なのですが、主人公の親友・二階堂は彼のことを「ハムテル」と呼びます。

「公」の字をハムと読むなんて、かわいすぎませんか。私も呼びたい。二階堂になりたい。

しかし私の周りには残念ながら「公輝」くんはいないので、もし男の子を授かるような機会があったら、ぜひ「公輝」と名付けてハムテルと呼びたいと思っています。

ハムテルは沈着冷静で頭も良く、人の面倒ごともなんだかんだ引き受けちゃう良いヤツで、見た目も良いので、ハムテルみたいな子に育ったらいいなとも本気で思いますしね!

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高校生のハムテルと二階堂 ー『動物のお医者さん』(佐々木倫子/白泉社)1巻より引用

やりたくなることその2:シベリアン・ハスキーを飼いたくなる

ハムテルが高校3年生のとき、駅への近道だったH大獣医学部の敷地を通っていた際、偶然出会った獣医学部の教授から、「一軒家に住んでいる」という理由でシベリアン・ハスキーの子犬を押し付けられます。

これが「チョビ」とハムテルの出会いです。チョビは、顔は般若のような迫力ですが、非常に温厚で賢くてとっても性格の良い子なのです。

ハムテルがH大の獣医学部に進学した後は、ハムテルと一緒にキャンパスに通学するようになります。弱った動物がハムテルのところへ運ばれると、チョビがやさしく対応し、コミュニケーションをとります。

ハムテルが犬ぞりのマッシャー(そりの操縦者)となり、大会に出ることになった際も、チョビは他の荒々しいハスキー犬に混ざってそりを引き、指示を聞かない他のハスキー犬に振り回されるハムテルを一生懸命サポートします。チョビはいつでもハムテルの味方なのです。

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犬の散歩のアルバイトをするハムテルを助けるチョビ ー『動物のお医者さん』(佐々木倫子/白泉社)4巻より引用

このハムテル愛溢れるチョビの愛らしさ、健気さ、賢さに心を撃ち抜かれる人は多く、実際にチョビは日本にシベリアン・ハスキーブームを巻き起こしています。

(※『動物のお医者さん』の舞台は北海道です。シベリアン・ハスキーは寒い国の犬であること、大型犬であり相当な運動量が必要なこと、遠吠え癖があること、など色々な難しさがあります。すべての動物で言えることですが、実際に飼う際には丁寧なリサーチ、覚悟が必要です)

やりたくなることその3:動物にアテレコをしたくなる、猫には関西弁でアテレコしたくなる

『動物のお医者さん』では、動物にもセリフがあります

吹き出しの中ではなく、手書きのレタリング(明朝体)でコマ内に書かれており、人間には聞こえていないようですが、動物同士では意思の疎通がとれています。この動物たちのセリフが、前述のチョビを筆頭に、動物のかわいさ、ユーモラスさに何倍も拍車をかけています。

たしかに動物と長く一緒にいると、嬉しい気持ち、悲しい気持ち、不満な気持ち、お互いの気持ちがわかるようになるものですが、『動物のお医者さん』を読むと、当たり前のようにそんな動物の気持ちをアテレコする習性がつきます。

そして本作では、なぜかハムテルと同居するお祖母さんの飼い猫のミケや、他の猫は関西弁を話します。北海道在住なのに。そのため私は、近所の野良猫や友だちの猫と触れ合うと、関西弁を話させたくなります。

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まだ幼い頃の遊びたい盛りのチョビの面倒をみるミケ ー『動物のお医者さん』(佐々木倫子/白泉社)11巻より引用

やりたくなることその4:北海道に行きたくなる

『動物のお医者さん』のモデルは北海道大学獣医学部です。そのため北海道ならではのエピソードも、たくさん詰め込まれています。

たとえば、カラスと戦いながら公園でジンギスカンを食べる話、雪道に埋もれて遭難するハムテルの先輩の話、キタキツネに喧嘩を売られる話、獣医学部のクラーク象は胸像である話、牧場研修で大きな羊の背中に乗って毛を刈る話・・。東京にいるとみられない景色、描写も数多く、北海道、そして北海道大学に行ってみたくなります。(『動物のお医者さん』の影響で、北海道大学獣医学部の受験者数も跳ね上がったそうです。)

作者の佐々木倫子先生自身が北海道ご出身で、他の作品でも北海道が舞台になっていることが多く、『チャンネルはそのまま!』はあの「水曜どうでしょう」でお馴染みの北海道テレビ放送が舞台のモデルとなっていて、名物甘党ディレクターもちゃっかり出ています。

1987年〜1997年の連載という少し前の作品ですが、いまもなお色褪せない面白さを誇る『動物のお医者さん』。とても有名な作品ですが、もしまだ読んだことない方がいらっしゃったら、ぜひぜひ手に取ってみてください。翌日から動物の声が聞こえるようになりますよ。