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捻れた執着が絡み合い、見ごたえのある不幸が満載の堕落系ラブロマンス『少年のアビス』

【レビュアー/新里裕人

本作は『週刊ヤングジャンプ』に2020年から連載中の漫画です。

陰鬱な展開が延々と続くこの作品ですが、去年(2021年)の年末に発売された最新刊(7巻)も、すぐに買ってしまいました!

まずは本作のコミックス表紙を使って、簡単にキャラクター紹介してみます。

青江 ナギ(あおえ ナギ)
アイドルグループ「アクリル」のメンバーだが、活動休止してなぜかこの田舎町に現れる。主人公と知り合い、肉体関係を持つ。主人公と心中しようとする。

黒瀬 令児(くろせ れいじ)
本作の主人公。表面上は普通に振る舞っているが、本当は家族にも自身の暮らす町にも絶望しており、町を出る事を強く願っている。

秋山 朔子(あきやま さくこ)
主人公の幼なじみ。主人公と同様、家族にも町にも絶望しており、東京の大学に進学することを望んでいる。主人公と共に町から逃げようとして、色々関係を持つ。

柴沢 由里(しばさわ ゆり)
主人公のクラス担任。心中しようとしていた主人公に関わったことがきっかけで人生踏み外す。主人公と肉体関係を持つ。

黒瀬 夕子(くろせ ゆうこ)
主人公の母親。引きこもりの長男と認知症の母親の世話で疲弊。
主人公に愛情がないように見えたが、のちにゆがんだ執着を見せはじめる。
実は、大きな秘密を持っていることが明らかになる。

似非森 耕作(えせもり こうさく)
うん…誰なんでしょうね…?

巻が進むにつれ、色々秘密が明かされてくるので段々説明しにくくなりますね(笑)。それにしてもこの漫画、何がこんなに面白いんだろう??

「普通の人」の仮面の裏側

登場人物たちは、物語が進むにつれて様々な秘密が明かされていきます。心の中に秘められていたエゴや欲望がむき出しになり、生の人間性がむき出しになります。物語に隠されていた謎が明かされていく過程がスリリングで惹きつけられます。

他人の不幸は蜜の味?

本作は、登場人物の不幸を「娯楽」として楽しませることを前提に作られている気がします。不幸は不幸なんだけど、目をそむけたくなるほどの不幸ではない。何と言うか「見ごたえがある不幸」が展開します。

特におすすめ(?)なのは、生徒から「柴ちゃん先生」と呼ばれて親しまれている担任の女教師。

「教師として生徒を守る」という使命感がどこからかねじれ、どんどん転落していくわけですがその表情が本当に素晴らしい(ヤバイ)です。必見!!

ぶっちゃけモテ過ぎ!(怒)

上のキャラクター紹介を読んでもらえばわかりますが、登場キャラはみんな主人公に対して異様な執着をみせてちやほやします。その愛し方は、たいがい破滅的ですが……。

見方を変えると、この漫画ってハーレムラブコメとおんなじ人間関係なんじゃないかと気づきました。

とにかく愛されすぎて一人を選べない(笑)

寸止め状態で、順々にアタックを受け続ける(笑)

そして最新の7巻の表紙は……

峰岸 玄(みねぎし げん)
主人公と朔子の幼なじみだったが、いつしかグレてしまい、不良仲間とつるむようになる。主人公に異常な執着を見せる。

この巻で、彼の大きな秘密(絶望)が明かされますが、上記を踏まえると「納得」の展開です。

円環する人間関係の中で、下向きにねじれた螺旋を描きながら、深く深く深淵(アビス)に堕ちていく本作。

興味が出た方は、ぜひ読んでみて下さい!


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