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【堀江貴文の月イチ漫画レビュー】星を見るものたちが受け継いだ苦難とロマン『チ。―地球の運動について―』

【堀江貴文の月イチ漫画レビュー】は、漫画を愛する堀江貴文氏が超多忙を極める合間に読んでおもしろかった作品を毎月レビューするコーナーです。長文レビューもあれば超短文レビューもありますが、そこはご愛嬌。本当におもしろいと思ったものしかレビューしませんので、どうぞお付き合いください。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

私は完全なるファンタジーものなどのフィクションよりもノンフィクションものの小説や漫画を好む。

もちろん脚色はされているのだけど、結末もわかっているのだけど歴史的に起こったことをなぞっていく、あるいは知らなかったそのプロセスを知ることが知的好奇心を満たしてくれる。

この作品は文字通り「地動説」を常識にしたプロセスに関わった人たちの苦難の物語。

長い間キリスト教世界を支配してきた「天動説」を否定するものたちがあらゆる迫害に耐え、自分たちの信念を何世代もの人たちに引き継いでとうとう主流派になっていく物語。ありそうでなかった漫画作品だ。

実は紀元前、つまりコペルニクスガリレオ・ガリレイが登場する1800年前にも地動説はかなりの科学的論拠をもとに展開されていたが、慣性の法則や恒星がまさに天文学的な遠さにあることなど直感ではなかなか理解できないものだったため、天動説が真理として多くの人たちに支持され、それに異議を唱えるものたちは異端審問にかけられ、それでも自説を曲げなかったものたちは処刑されるに至った。

末期には天文学を学ぶことさえ忌避されるようになる。

現代とは違い電気の力で街が夜中でも明るく星がほとんど見えなくなることなく満点の星空と天の川と月の明かりに支配されていた時代、星を見ることは多くの人の娯楽の一つであった。

注意深い人たちは北極星や南十字星を中心に円運動をする規則的な恒星の動きを見て天動説が主流を占めるが、さらに注意深い人たちはその動きと全く違う動きをする一際明るい星に気づいたことだろう。

火星や金星である。

地球から程近いこの星たちはその不規則な動きから惑う星「惑星」と呼ばれる。

この惑星の動きに注目した人たちは宇宙の法則が地球中心の天動説だと複雑すぎて美しくないと感じたのである。そして数式を駆使し、その謎に人知れず挑み異端審問にかけられその知識を秘密裏に受け継いでいく。

そんなロマンの物語。