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人間味のある権力者藤原道長

私はそれなりに本を読む方だが、ここ一年くらいで一番刺さったのが『御堂関白記 藤原道長の日記』(繁田信一編)。

道長といえば、「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」の歌を詠んだ、娘たちを次々入内させた、権力者の権化みたいなイメージじゃなかろうか。

しかし御堂関白記を読むと、権力を持ったばかりの若き日の道長は、他の貴族たちから大事な会議をボイコットされたり、対立している有力者を懐柔しようと馬を贈ったりしている。

また道長は学が無く、漢文の文法はめちゃくちゃ、誤字脱字も多いらしい。大貴族の御曹司は、勉強しなくても高い役職に就くことができてしまうので、あんまり勉強しないのが普通だったらしい。しかし当時の天皇は漢詩の会を開くなどインテリだったので、話についていくために勉強したり、健気なところもあるなと思う。

自分に学がないことに対しては思うところがあったのか、息子には英才教育を施している。藤原行成に息子用の習字のお手本を書いてもらったり。

道長は日記はあまり書きたくなかったらしく、サボっている日や内容が薄い日も多い。当時の男性は日記を書くのが半ば義務だったから書いていただけのようである。だけど孫の皇子が産まれたときには、道長にしては珍しく長めに日記を書いている。
権力的にも重要だったとは思うけど、単純にめちゃめちゃ嬉しかったんじゃないかな。そういうところに人間味を感じて、藤原道長を立体的に感じた。

現代語訳と解説・豆知識が書いてあって読みやすい。そもそも原文も道長が長く書いてないから一つ一つは短いし。おすすめですよ。

少なくとも私は、学が無くて馬好きのいいとこのボンボンに過ぎない道長が絶対的権力者に登り詰めるまでを描いたドラマがあれば見てみたいと思った。頼りない兄弟の道綱とか、オレ様皇子(エピソードからそういうイメージに)の敦明親王とかいい味出しそうである。

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