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「語れるテーマなんてない」と思っていた僕が、本を出版するまで。 #勝てるデザイン 座談会

こんにちは。デザイナーの前田高志です。株式会社NASUというデザイン会社やったり、300人以上の人が参加しているクリエイターコミュニティ「前田デザイン室」を主宰しています。元々は、任天堂(株)の企画部で宣伝広告のデザインを担当していました。

現在、43歳。デザイナーとして独立して5年目。ついに、自分の本を出版することになりました。その名も「勝てるデザイン」。

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自分が著者として本を出せる日が来るとは……。
本当に光栄なことです。ずっと本を出したい、という思いはありました。けど、一人じゃできない。現に、たくさんの方の協力をいただいて、こうした発売を迎えることができます。

記念すべき出版を前に、編集と装丁でめちゃくちゃ協力いただいた3名の皆さんと一緒に、この本を出すことになった経緯、タイトル・装丁に込めた思いを振り返っていきます。本をこれから手にする人はもちろん、もし発売後にこの記事をご覧になった方にも、「勝てるデザイン」をより深く楽しむきっかけになれば嬉しいです。

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【全4回に分けてお届けします】
1.「語れるテーマなんてない」と思っていた僕が、本を出版するまで。
2.タイトルは、本の印籠。見つけた答えは著者の中に。
3.カバーで多くを語るのは野暮。すべての人に送るデザインの本だから。
4.誰がデザインを語ってもいい。デザインはみんなのもの 。




「デザインの力を伝えたい!」

前田:みなさんで、自己紹介していきましょうか。じゃあ、僕から。勝てるデザイン著者の前田高志です。

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前田高志
株式会社NASU、『勝てるデザイン』著者


片野:幻冬舎の片野です。今回の企画・編集を担当しました。

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片野貴司
株式会社 幻冬舎、『勝てるデザイン』編集

戸倉:トサカデザインの戸倉です。装丁・デザインを担当しました。前田さんとの出会いは1年くらい前ですかね。NewsPicks Bookが1周年のときに、箕輪編集室との合同で販促物の制作をご一緒したのがきっかけでご縁ができ、前田さんから装丁の依頼を受けました。

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戸倉巌
トサカデザイン、『勝てるデザイン』装丁

前田:戸倉さんとの初めての出会いはTwitter上でしたね。戸倉さんが装丁を手がけた『ブランド人になれ』(田端信太郎著、幻冬舎)の田端さんの画像で、おふざけに付き合っていただきました(笑)。

その結果……、こうなりました。



戸倉:前田さんは、レスが速すぎです(笑)。明らかなネタ振りして、ほんの数分の出来事だったから。

前田:(笑)。
最後は僕の会社、NASUに勤めている綾さん。

浜田:編集協力、アシスタント的に携わりました、浜田綾です。これまでは主にWebでライティングをしてきたので、商業出版でガッツリ本の執筆させていただくのは今回が初めてでした。

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浜田綾
株式会社NASU、『勝てるデザイン』編集協力


前田:
「勝てるデザイン」の経緯をたどっていくと、その大元は綾さんにあるんだよね。

浜田:
もう3年くらい前ですね。ちょうど「前田デザイン室」を立ち上げて間もないころ。前田さんを著者とした、本の企画書を作りました。


前田:綾さんとは、元々はブログのオンラインサロンで出会って、そのあと箕輪編集室でも一緒になって、今ではNASUで、ともに仕事をしていて。僕を通して、デザインに出会ったことで「デザインってすごい!」と思ってくれたんだよね。

浜田:そうなんです。デザイナーさんの仕事って、専門的なモノづくりをしていて、一般的にはちょっと縁遠いイメージがあると思うんです。でも私は前田さんの仕事を近くで見てきて、デザインは制作物をつくるだけじゃなくて、課題を解決したり、実現したいことを叶える力にもなると実感してきました。この力をたくさんの人に伝えたくて作ったのが、あの企画書です。私自身もずっと本をつくってみたいというのも、確かですけどね(笑)。

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前田:あっ、そっちが本音?(笑)。そのときは「本当に出せたらいいね」と思ったものの、どうしていいか分からなくて。たまたま編集者の竹村俊助さんにお会いする機会があったときに、企画書を見てもらったんだよね。

浜田:
はい。「構成・見出しはともかく、もっと具体的に詰めた方がいい。できれば実際にnoteとかに書いてみるといいですよ」とのことでした。仰るとおりで、本を出すなら、どんなアウトプットになるかイメージできた方がいいなと気付きました。

前田:そうそう。元々noteはやっていたんだけど、アドバイスをもらってからもずっと続けてきてる。忠実だよね(笑)。

浜田:
前田デザイン室ではインディーズながら『マエボン』『NASU本』という本も出版して、少しずつ私たちも経験を積んできました。すると一昨年、別の出版社さんから初めて商業出版のオファーが来たんですよね。


「あれっ? 語りたいテーマがない」

前田:そう。ただ、まぁ結果から言うと自然消滅しちゃったんだけどね。具体的なオファーをもらって「おぉ、いよいよ!」と本を出したい思いが強くなった一方で、ふと大きな気付きがあって。自分が語りたいテーマが無いっていう……。

片野:えっ! そうだったんですか? でも、編集者から企画の提案はあったんじゃないですか?

前田:あったんですけど、ピンと来なかったんです。元超有名企業の出身者が語る系の本があるじゃないですか。そのイメージで「任天堂から学んだこと」っていうテーマで。業務規定上語れることも少ないですし、何より任天堂代表みたいな見え方で語るなんておこがましいですから。その編集者さんも僕の伝えたいことを打ち合わせで掘り下げてくれたんですが、じゃあ何を書こうってフラットに考えたら、全く思いつかなくて。本を出したいという気持ちが先走ったままで、悶々としていました。

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浜田:それでも伝えたいことがなかったわけじゃないんですよね。ずっとnoteでの発信を続けていましたし。実際、転機になったのもnoteでした。ある会社の新サービスがローンチに際して、各界を代表する文化人がコメントを寄せる広告企画を見たときに、前田さんが「ここに出られるようになりたいぁ……」ってボソッと言って。確かに出られるといいなぁと思いつつ、「じゃあ前田さんって、何代表なんですかね?」という話をしたんですよね。

前田:
そうそう。「グラフィックデザイナーなら原研哉さんでしょ!」とかね。例えるなら、「僕は何で日本代表のユニフォームを着るのか? 」ってね。それを掘り下げて、noteの記事を書くことになった。この「興味を奪うデザイナー。」の話は、再構成しているけど、『勝てるデザイン』にも入っているし、僕自身の核となる話に繋がったと思う。




浜田:
これが結構バズったんです。続けて出した前田さんのnote「それは、デザイン案ではない。」は、さらに多くの反響がありましたね。


前田:ホントびっくりした。いつも気になっていたことを記事をアップしただけだったから。でも、あの記事に反響があったことで気付いたんだよね。僕が、どういう考え方でデザインをしているかについて事細かく書くことに意味があるんじゃないかって。


デザイナーの頭の中をのぞける本

前田:元々、人の頭の中に興味があるんですよ。そのルーツになっているのが、ダウンタウンの松ちゃん(松本人志)の「遺書」。あんなにテレビで面白い人が、普段は超ストイックに、全力でお笑いのことを考えていることを知って衝撃を受けたんです。


前田:それからビジネス書にも手を伸ばしました。そのなかでノウハウや知識ではなくて、誰が何を考えて、こうなったというエピソードに関心がある自分に気付きました。ただ、意外にもデザイナーがそういうテーマで書いた本はないんです。だったら、経験を積んだ今こそ、僕が普段何を考えてデザインしているかについて書こうと。このテーマで本を出すことには絶対意味があると思って、片野さんに相談させてもらいました。

片野:2019年の年末ごろですかね。テーマを聞いてイケると直感して、どうやって見城さん(幻冬舎 代表取締役社長)に提案しようかと考えました。企画が通ったのは2020年2月でした。

浜田:2月に幻冬舎さんに伺ったときに、「これで本が出せますよ」って、見城さんのハンコがついた企画書をチラッとだけ見せていただいたんです。あのときの喜びは忘れられません。

片野:あくまで社内用の企画書なので普通はお見せしないんですけど、見たら喜んでいただけるんじゃないかなと思って、その場限りでお見せしました。

前田:めちゃくちゃ嬉しかった。聞いた瞬間にツイートしちゃいましたよ(笑)。

懐かしいなぁ。あの感動をスタート地点に、約1年間という長いようで短い執筆生活が始まりました。


(続く)


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執筆:木村涼
編集:浜田綾(NASU)

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