見出し画像

【サマリー】アジャイル化するプロジェクトマネジメント:HBR2022年2月号

ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の2月号『アジャイル化するプロジェクトマネジメント』を読んでのサマリーnoteです。

* * * * * * * * *

冒頭に、ソフトウェア開発を起源とするアジャイル手法が組織・チームのマネジメントに活かされつつあるということで、その背景に経済の原動力が「オペレーション」(組織の「運営」に関係する)から「プロジェクト」(組織の「変革」に関係する)への移行があることが述べられています。

このnoteは『組織全体でマネジメントスキルを高めるプロジェクトエコノミーの到来』(アントニオ・ニエト=ロドリゲス:元プロジェクトマネジメント協会会長)の記事をベースにしたサマリーとなります。


* * * * * * * * *

プロジェクト経済への移行が進む

効率や生産性の改善での価値を生む「オペレーション」は短期的な業績をつくること、一方で組織変革やスピーディーな新製品開発、新技術の導入をする「プロジェクト」は長期的な価値創出をつくることが目的にある。

平均的なオフィスワーカーは「自分は何らかの決められた仕事があって、そこにプロジェクトが割り込んでくる」という考え方ですが、今後プロジェクト経済への移行や転換が進んでいくと、「管理職の階層と肩書きを廃止する」「所属部署ではなく担当プロジェクトで仕事を定義する」「従業員をプロジェクトマネジャーと呼ぶ」といったことが起こる。


プロジェクトの価値を理解すること

しかし、依然として多くのリーダーがプロジェクトの価値を理解していなく、ペーパーワークや複雑な管理、事務的なものを対処している。そのため、プロジェクト管理を無視する企業は製品の開発が遅れ、戦略的イニシアティブが取れず、企業改革に失敗すると述べられている。

プロジェクトは仕事に意味を与えることができるとして、縦割り組織を横断する形でプロジェクト主導型の構造を採用し、協力的で自信を持たせるような文化を生み出すことや、組織全体で確実にプロジェクト管理能力を育てることが必須条件である。


プロジェクトの成功率

スタンディシュ・グループの調査によると、世界で実行されるプロジェクトのうち、成功するものは35%前後で、言い換えるとプロジェクトに費やす時間と資金の65%は無駄にしており、組織、社会全体で何兆ドルの新たな価値を失っている。


オペレーションとプロジェクト

組織の「運営」(オペレーション)と「変革」(プロジェクト)の整理として、

■オペレーション:組織の運営(既存機能の活用)

・事業の中核を成す旧来の活動で構成(ex.営業、顧客サービス、財務、製造、ITなど)
・構成する要素として、「効率性」「生産性」「スピード」「短期的」「業績重視」「階層的な構造」「指揮統制型」

■プロジェクト:組織の改革(新規能力の開発)

・企業の将来のカギを握る
・組織の戦略的なイニシアティブやプログラムのすべてが関わってくる
・構成する要素として、「イノベーション」「改革」「アジリティ(敏捷性)」「長期的な価値創出」「戦略的」「フラット」「成果の定量化は難しい」「起業家精神」「コラボレーション」


プロジェクトの定義

成果物(製品・サービス・イベントなど)の創出を目的とする一連の計画的な活動のこと
・時間的な制約がある
・資本や人材という形で投資を必要とする
・所定の価値、インパクト、便益を生み出すために設計される
・過去に行われたことのない何かが含まれる

※別のコラムではこのように定義されています。

■プロジェクト

決められた期間の中で独自の成果を達成しようとする企て

■プロジェクトマネジメント

プロジェクトに向かう積極的な心構えを持ち、知識、スキル、手段、テクニックなどを用いてプロジェクトを成功に導くこと

■プロジェクトを成功に導くための3つのポイント

①ゴールを正しく設定できているか:達成すべきゴールに対してステークホルダーの共感を得ること
②合意形成の能力を持っているか:プロジェクトに関係するキーパーソン間で合意を形成する能力があること
③プロジェクトマインド・スキルはあるか:まだ実現していないゴールを目指す意志と能力があること


オペレーションの限界

オペレーションの生産物は主に「製品」だったため、成長は有機的な方法である。生産能力の拡大、プロセスの標準化と自動化、新規市場への進出、運営効率の実現が主な活動で、さらに年に一度、リーダーが戦略、プロジェクト、予算、経営計画を決定し、後はそれに従ってオペレーションを行う。年間計画の途中においては多少の修正しか認められない。

プロセスをコモディティ化したことで、企業はスピードと引き換えに中長期的な価値を失う。そして、生産量を増やし、発売する製品を増やし、ブランドを拡大するという戦略が限界を迎えるタイミングに来ている。

以前はプロジェクトは一時的、オペレーションは永続的でしたが、いまでは逆になっていて、オペレーションは一時的に生き延びるための手段で、永続するのは変化。そのため、変化の予測、管理、遂行が至上命題となる。


アジャイル手法の本格化

プロジェクトリーダーが注目すべき点として、①イノベーションの実践 ②優れたパフォーマンスを発揮するチームの結成 ③便益の実現の3つがある。過去に誰もやったことのないことに取り組む時は実験、スタート時のミス、失敗が付き物であり、結果としてステージを行ったり来たりすることが起きやすい。2000年代以降、アジャイル手法として、

■ より小さな単位で作業を完遂すること
■ より早く顧客に価値を提供すること
■ 必要条件・計画・結果をたえず検証すること

が本格化し、これらを実現するためにはまずは組織の全員がプロジェクトの主な構成を知り、理解し、生産的に働くことを可能にするフレームワークが必要になる。

※別のコラムでのアジャイル手法について

企業は部門横断的な小規模なチームを編成し、そこに権限を委譲する。戦略や課題を小さな要素(モジュール)に分解し、迅速なプロトタイピングの実行と顧客との緊密なフィードバックループを通して、素早く変化に適応し、ソリューションを開発する。

この手法はビジネスの中でも、機動力の高さが求められる領域に有効で、例えば、新たな市場を開拓、変化する顧客との関係を管理、ニーズに応じて新製品を迅速に開発などが当てはまる。反対に効果的ではない領域としては、成熟した大量生産プロセスで、例えば、請求書の処理や給与計算、予算編成などは官僚主義的なシステムで行うのが適している(固定のルールや権限の階層性など)。


「プロジェクトキャンバス」

ビジネスモデルキャンバスに着想を得て出来上がった戦略的なフレームワーク「プロジェクトキャンバス」は、①土台 ②人材 ③創造物 という3つのドメインで構成されている。

画像1

※参考:Diamond Harvard Business Review February 2022  P35より


プロジェクトを実践するにあたっての6つのスキル

①プロジェクト管理スキル
②プロジェクト開発と当該テーマに関する専門知識
③戦略とビジネス感覚
④リーダーシップと変革管理
⑤アジリティ(敏捷性)とアダプタビリティ(順応性)
⑥倫理と価値観


* * * * * * * * *


その他に2月号では

『アジリティハック:伝統組織に敏捷性をもたらす手法』
『メガプロジェクトで実験と学習のサイクルを高速化する方法』
『利害の対立を超え、プロジェクトを成功に導く方法』

が取り上げられています。

「プロジェクトエコノミー」や「アジャイル化」というキーワードから、プロジェクトのあり方や進め方が時代の変化に伴って改めて問われているのだと思いました。私自身もプロジェクトをベースとした仕事の仕方をしている人間として、プロジェクトの意義や価値、実践するにあたって必要な考え方やスキルなどを見直した上で、今後のプロジェクトに活かしていきたいと思います。


※サムネイル画像:Pch.vector - jp.freepik.com によって作成された abstract ベクトル より