見出し画像

#301 『花が咲いている 精いっぱい咲いている』

本日は、円覚寺派管長の横田南嶺さんの「花が咲いている 精いっぱい咲いている」についてのお話です。


"私が禅の道に入るに至った一番のご縁は、101歳で亡くなった松原泰道先生との出会いでありました。私が中学生の時、泰道先生はラジオで毎月『法句経』の講義をされており、分かりやすい明朗な口調に引き込まれて毎回熱心に聞いておりました。そのラジオ講義が終了した頃、たまたま上京する機会があり、私はぜひお目にかかりたいと先生にお手紙を書いたのです。当時泰道先生は、ご講演や執筆で多忙を極めておられましたが、一面識もない中学生からの手紙にお返事をくださり、面会の約束までしてくださったのです。"
"初めてお目にかかった時に書いてくださったのが、「花が咲いている 精いっぱい咲いている 私たちも精いっぱい生きよう」という言葉でした。これは今日に至る私の人生を貫いてきた言葉でもあり、将来もしあなたの一生とは
どういうものだったのかと問われたならば、「中学生の時に泰道先生にお目にかかり、花のように精いっぱい生きよと言われ、その言葉どおり精いっぱい生きて死んだ」。そう答えられるとしたら、私にとって本望だと思っているほどです。"
"それから二十年ほどが経って泰道先生が90歳を迎えられ、私の修行道場での修行もほぼ終わりかけていた頃、「自分はこれからどのように生きていけばよいのだろうか。一生涯の指針となる言葉をいただきたい」と、泰道先生に書をお願いしました。その時に先生が書いてくださったのが、「衆生無辺誓願度」という言葉でございました"
"「衆生」というのは、生きとし生けるもの、「無辺」とは限りがないという意味です、生きとし生けるものの悩みや苦しみ、悲しみは尽きることがないのです。「誓願度」の度とは渡すという意味です。迷いの世界から、悩みのない安らかで幸福な世界に生きとし生けるものを渡して差し上げる。そのことを誓う仏教の言葉が「衆生無辺誓願度」です。平たく申しますと、「生きとし生けるものの苦しみが無くなり皆幸せでありますように」という願いとも言えますでしょうか。"


============
書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/10/28 『花が咲いている 精いっぱい咲いている』
横田南嶺 円覚寺派管長
============

※Photo by Sergey Shmidt on Unsplash