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#272 『いまが「どん底」だと分かればそれ以上は落ちない』

本日は、山下弘子さんの『いまが「どん底」だと分かればそれ以上は落ちない』についてのお話です。山下さんは、19歳の学生時代にがんを発症し、闘病生活を続けていた山下弘子さんは、25歳の若さで亡くなりました。このお話は山下さんが亡くなる2ヶ月前のインタビューです。前向きに明るく生きる山下さんの生き方は学ぶべきものが多いと思います。

"翌年4月、私は大学に復学しました。最初の手術の後、2か月に1度、定期検診に通っていたのですが、4月の検診で「今回、ちょっと肺に転移が見つかりました」と告げられました。私はこの言葉を俄かには受け入れられませんでしたし、実際「余命半年」と言われた時よりもずっとショックでしたね。またもや大学を休学して肺の4分の1と再発のあった肝臓を少し切除しました。カテーテルの手術、ラジオ波による治療を含めて、これまでにした手術は数十回に及んでいます。もちろん、がんを完治したい気持ちはやまやまなのですが、いたちごっこを繰り返しながら、何とかがんをなだめて共生しているというのが実感ですね。"
"たぶん、その時その時、辛つらいことはいっぱいあったと思うんです。
でも、あまり覚えていないことも多いんですよ。人間ってうまくできているんだなって本当に思います。例えば、肺がんの治療中に薬疹が出たことがありました。薬の副作用で体中が真っ赤になり、最終的には頭にまで広がって地獄のような痒みを味わいました。このままだと喉にまで広がって窒息死するかもしれないという状況になって、その時は確かに辛かったんですけど、
いまになってみると、どういう辛さだったかは忘れちゃった、みたいな・・。"
"もちろん、私も落ち込んだり、その先にある「どん底」までいったりすることがあります。私の場合、辛いとか、悲しいという時は「どん底」ではないんです。「どうしよう」と泣いている時はまだ大丈夫な証拠です。「どん底」になると思考が停止し、頭が真っ白になって何も考えられないし、誰の声も届かなくなります。真っ白な世界にただ一人取り残されたような感じですね。主治医の先生に「いまのところ、もう打つ手はない」と言われた時なんかは、まさにそんな状態でした。"
"でも、全く誰にも会わずに一人でいる時間ってそんなに長くはありません。傍にいる人がちょっと声を掛けてくれるだけで、ハッと我に返る瞬間があります。その時に初めて人の優しさや励ましの言葉を受け入れて立ち直ることができるんです。いまが「どん底」だと分かれば、それ以上に落ちることはない。あとは上がるしかないわけですから。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/09/29 『いまが「どん底」だと分かればそれ以上は落ちない』
山下弘子
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※Photo by Ricardo Gomez Angel on Unsplash