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#340 『因と縁の力を大事にする』

本日は、東方学院院長の中村元さんの「因と縁の力を大事にする」についてのお話です。東方学院は、財団法人東方研究会(現在の公益財団法人中村元東方研究所)が開設した私塾で、インド哲学者・仏教学者であり東京大学名誉教授だった中村さんが設立しました。

"お釈迦様がどこまで説かれたか分かりませんが、因縁ということをいうわけなんです。因は主な原因で、縁のほうはそれを助ける条件ですね。それが無数にあるわけなんです。極端にいえば、いかなる小さなものといえども、全宇宙がそこに影響を及ぼしている。小さなものといえども、全宇宙を反映する鏡であるというようなことを仏教の哲学ではいうわけです。"
"私は毎日、少しずつご飯をいただきますが、大豆にしても米にしても、外から力が働いて、太陽の熱がそこに及んでいるわけです。そうすると、わずかの食糧といえども、全宇宙とのつながりがある。その関係をずうっとたどっていきますと、因果の連鎖の網は、とても人知では突き止めることはできませんが、宇宙全体と連絡があるわけですね。どんな小さなものでも宇宙を反映しているということになります。"
"個人個人の存在というものも、決して他から切り離されたものじゃなくて、他の、いろいろな力がそこに及んでいる。その因果の連鎖の網は、いちいち突き止めることもできないし、近づくこともできないが、そこに力が働いていることは間違いないわけです。"
"自分一人の力ってものは考えてみればないわけでして、他から、ずうっと力が及んでいるわけです。無数の因と縁が集まって、我われの存在もある。だから、その因と縁の力を大事にするということに尽きると思います。これは日本人が多かれ少なかれ感じていることじゃないでしょうか。これを、感謝の気持ちを持ってみると、恩の思想になりますね。いろいろな人から恩を受けている、と。単に一人ひとりの個々人ばかりじゃなくて、生きとし生けるものから恩を受けている、と。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/12/06 『因と縁の力を大事にする』
中村元 東方学院院長
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※Photo by Greg Rakozy on Unsplash