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#262 『祈らない祈り 仕事は祈り』

本日は、河井寛次郎記念館学芸員の鷺珠江さんの「祈らない祈り 仕事は祈り」についてのお話です。鷺さんは、祖父である河井寬次郎記念館の学芸員として、河井寬次郎さんに関わる展覧会の企画、出版、講演、資料保存などに従事しています。

"身内でありながら祖父の河井寛次郎からは感銘を受けることが多くありました。その一つが執着のない生き方です。芸術家は、自分が心血を注いで確立した技術を大切に守るものですが、寛次郎はそれを手放せる人でした。陶芸で二度にわたって作風が変わり、陶芸以外にも様々な芸術作品を手掛けたのは、寛次郎の興味が新しい自分を求めて次へ次へと前進し続けていたからに他なりません。"
"「祈らない祈り 仕事は祈り」
という言葉には、寛次郎にとっての祈りは日々の仕事であり、仕事を通じて生かされていることへの感謝を表現していたことが窺えます。寛次郎の芸術は、まさしく生命の歓喜から 生まれていたのです。
「饗応不尽」という最後の詩句には、寛次郎の到達した人生観が如実に表現されています。"
"「無数のつっかい棒で支えられている生命
時間の上を歩いている生命
自分に会い度い吾等
顧り見ればあらゆるものから歓待を受けている吾等
この世へお客様に招かれて来ている吾等
見つくせない程のもの
食べきれないご馳走
このままが往生でなかったら
寂光浄土なんか何処にあるだろう」"
"私は20年ほど前にがんを患いました。幸いいまは元気に暮らしていますが、あの病のおかげで、以前であれば迷った末に諦めていたことも、躊躇せず思い切って実行する自分に変わることができました。人生には困難がつきものですが、大局的に見ればすべてのことに意味があり、喜びをもたらしてくれることを寛次郎は教えてくれています。私はこれからも寛次郎の作品と共にそうした素晴らしい人生観をご紹介し、皆様に生きることの喜びをお伝えすることが出来ればと願っています。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/09/19『祈らない祈り 仕事は祈り』
鷺珠江 河井寛次郎記念館学芸員
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※Photo by Patrick Fore on Unsplash